関わりあう職場のマネジメント

関わり合う職場のマネジメント

鈴木竜太

序章 支援・勤勉・創意工夫をもたらすマネジメント

・本書の基本メッセージ、「仕事上相互に関わり合うことが多い職場は、仲間を助けること(支援)、組織のルールややるべきことをきっちり守りこなすこと(勤勉)、自律的に仕事の上で創意工夫すること(創意工夫)を職場のメンバーに促す」。

・タマノイ酢のジョブ・ローテーションの3つの特徴、「新入社員や若手に積極的に大きな仕事を任せる」「専門外への配属」「ローテーションのペースが早い」により、皆が常に、”能力よりも大きな仕事に就いている””就いたばかり””精通していない人がいる”という状態に。助けたり教えたりしなければ、仕事が動かない。

○公務員は常にそうだと聞いた事があります。

・頻繁な人事異動により職場内での強い関わり合いが組織全体に広がっている。関わり合いの強さが、組織あるいは職場において助けあいやとことんやるということに繋がっている。

第2章 協働と秩序と自律

・秩序と自律における「逆転共生」の関係(Etzioni, 1996)とは、ある程度まではお互いを高めあう関係にあるが、どちらかがある一定程度を超えて強くなると他方が弱体化し、相反する関係になること。

・コミュニタリアリズムは、公共性が十分にありながらも、個々人の自由が尊重される(協働・秩序・自律がバランスよく実現されている)社会を善き社会として考える。本書の問題意識と重なる点。

・「公-公共-私」と「組織-職場-個人」の三分法。

・滅私奉公的な考え方と滅公奉私的な考え方の振り子のような関係。過剰に個人主義的な従業員と集団主義的な従業員との間で起こる問題。両者とも公共性を欠くという点で同じ指向を持っている。

・「滅私奉公」(あるいは滅公奉私)から「活私開公」へと個人と社会の新しい関係の提示。「私という個人一人一人を活かしながら、人々の公共世界を開花させ、政府や国家の公を開いていく」ような「人間-社会」観(山脇, 2004, 37頁)。「私」を活かすことが「公」や「公共」の領域を広げることに(桂木, 2005)。

・「限られた思いやり」とは、人間は元々限られた近い範囲では思いやりを自然に持っているという考え方。(中略)公-公共-私という三分法において、公共の場で他者とのコミュニケーションを通した他者への関心を広げることにより、思いやりの範囲が広がり、公共心が広い範囲で涵養されると考えられる。

○サッチャー首相は、近くの人にはとても思いやりがあったそうです・・・特別な人は、また別物なのでしょう。【他者の靴を履く】【サイコパスの真実】

・職場をコミュニティ的に、相互に関わることを通して他者や職場への関心が生まれ、それが組織全体への関心へと繋がる。

第3章 上からのマネジメントと下からのマネジメント

・繋がりを作るという仕組みは、職場レベルであれば関わり合いを持たせる工夫ができるが、組織レベルであると、理念や価値観を共有させるという方法に行き着く。社会関係資本を基盤としたマネジメントは上からのマネジメントになってしまい、コミットメント経営が抱える問題をなぞるように。

・元々小さな組織や職場を管理する理論であった経営管理論は、組織を管理する理論になり、職場を管理する理論が置き去りに。職場への注目は、経営管理論における職場のマネジメントへの回帰を促すもの。

第4章 支援・勤勉・創意工夫をもたらすメカニズム

・組織において支援や勤勉と言った行動を起こすかどうかは、個人だけでなく職場や組織によっても違う。そこに所属する人間が積極的に支援や勤勉行動を取る職場や組織があると考えられるように。

・自分の役割や仕事を拡張したり、さまざまな工夫をしたりする行動は、組織行動論では「進取的行動(proactive behavior)と呼ぶ(Grant & Ashford, 2008; Crant, 2000)。「従業員が、彼ら自身あるいはその環境に影響をもたらす先見的行動」と定義(Grant & Ashford, 2008)。

第6章 関わり合う職場と支援・勤勉行動

・関わり合う職場が、頑張らざるを得ないといったややネガティブなメカニズムを引き起こす可能性も。

○それが良い方向に進めば。個人の意識改革にもつながるかも。

・関わり合いのある職場は、他者への依存を高め、アイデンティティを喪失させるのではなく、むしろ自分がやらなければならないこと、自分の責任ということをより強く意識させる方向で作用すると考えられる。(中略)関わり合いの強い職場であるために、役割が明確にされることが必然に。

・職務自律性は職場における関わり合いの強さに関わらず、支援行動にプラスの影響。

・強い関わり合いを持つ職場では、仲間意識から支援行動がもたらされるだけでなく、せざるを得ないといった意識からも支援行動をもたらす。

・集団内での悩みの相談ができるような仲の良さは、個人の勤勉行動には影響を与えない。(中略)集団凝集性を介さずに仕事が相互依存的、目標が相互依存的である職場ほど、勤勉行動が促されている。

第7章 関わり合う職場と創意工夫行動

・集団凝集性。目標を達成するために創意工夫行動へとつながるのではなく、役割外行動が他者を助ける行動へと費やされることが多くなるのでは。

・職務自律性。集団の目標が認識され、共同で責任を負っている職場だからこそ、集団の目標を達成するために自分の仕事における自立度を利用して効率の良い方法を模索したり、新しい方法によって仕事を遂行したりすることへと向けられる。

・目標を共有していることや職場内のまとまりがよいことが、新しい方法や取り組みを考えるための同僚との相談や議論をより行いやすくしていると考えられる。

○個人レベルの創意工夫行動と、協働的創意工夫行動の異なり。個人は仕事の相互依存性が、職場レベルでは目標の相互依存性が影響を与えていた、と。

終章 関わり合う職場とそれを育む組織

・マネジメントをコントロールすることとは捉えず、促すものであると考えれば自発的行動や役割外行動もマネジメントが可能に。

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