他者の靴を履く
他者の靴を履く
ブレイディ・みかこ
第1章 外して、広げる
・エンパシーとシンパシー。エンパシーには制限や条件がない。シンパシーは他者に対する心の動きや理解やそれに基づく行動。
・コグニティブ・エンパシーとエモーショナル・エンパシー。
第2章 溶かして、変える
・誰かの靴を履くためには自分の靴を脱がなければならないように、人が変わる時には古い自分が溶ける必要がある。言葉にはそれを溶かす力がある。
・自分の気持ちが自然に相手に寄り添わなければ発揮できないシンパシー。意図的に他者の立場に立って想像してみる能力であるエンパシー。能力である以上、訓練で向上させることができる。
・ロールプレイとは「ごっこ」。他人を演じることが「I」の獲得につながる。(中略)演技が「I」の獲得だけでなく、エンパシー能力を向上させる機能もある。
・人間は誰でも社会のさまざまな場で演じている役柄をよりそれらしく見せるために「表舞台」での自分のイメージをコントロールしているという(アーヴィング・ゴフマンの)「印象操作」という概念。SNSでのコミュニケーションの基盤。
第3章 経済にエンパシーを
・エンパシーという能力は常に善を為すわけではなく、残虐な行為や他者からの搾取を行う人間も。
第4章 彼女にはエンパシーがなかった
・「プチ・ブルジョアジー」たちは発明と創造のパイオニア。(中略)お上の声を完全無視して、(中略)誰も見たこともないような新しいものが出てくるのは往々にしてこういうところから。
・サッチャーにはエンパシーがなかったと証言した元私設秘書のランケスター。身内の繊維工場が生産準備に入ることを伝えると、彼女は衝撃を受け、(中略)「何かできることはありますか」と聞いた。身内へのシンパシー。
○当時、150万人の雇用があった繊維業界、サッチャー就任およそ2年で半分に・・・。
第5章 囚われず、手離さない
・ボトムアップで発生するエンパシーとは、他者の行為や状態を脳内でミラーリングすることによるリアクションとして発生。エモーショナル・エンパシー。トップダウンのエンパシーは、他者の心情は自分の想像または理解として存在し、脳神経のコントロールや抑制のメカニズムに基づく。
第6章 それは深いのか、浅いのか
・サイコパス(先天的)、ソシオパス(後天的)の対極に位置する、エンパシーのかたまりとして定義される「エンパス」。共感力が非常に高い人。(中略)エモーショナル・エンパシーが過剰な人。
・政治的指導者が、自分と同じような日常の些細な出来事を経験している現場を見ることで、自分の姿を指導者の姿に重ねて脳内でミラーリングする。(中略)こういう瞬間が多いほど、他者が「身近な存在」の思えてくる。
第7章 煩わせ、繋がる
第8章 速いシンパシー、遅いエンパシー
・人生相談の仕事をしている人を「Agony Aunt」「Agony Uncle」。悩みを相談できる「おじさん」「おばさん」の存在。ちょっとした距離が保て、相談事を持ちかける相手として必要とされてきた。
・「親とか社会が教えてくれる正しいことじゃないことをいつも遊びながら教えてくれる人。それがおじさんなんです(高橋源一郎氏)」。(中略)岸惠子演ずる「パリのおばさま」。(中略)の本の「おば文化」が昔は存在。
〇メンターみたいな存在ですね。
・シンパシーはインスタント。情緒や感情だから瞬時に湧き出る。(中略)エンパシーは思考というクッションが入るので時間がかかる。
第9章 人間を人間化せよ
・他者の靴を履くことが「できない」のは、「現代人はエンパシーを働かせることの精神的負荷を嫌がるから」という調査結果。
・ブルシット(まやかし)からエンパシー(ケア)へ。人間を人間化することであり、経済も社会もその周辺に構築されなければならないとデヴィッド・グレーバーは主張。
第10章 エンパシーを「闇落ち」させないために
・アナーキー(あらゆる支配への拒否)という軸をしっかりとぶち込まなければ、エンパシーは知らぬ間に毒性のあるものに。両者はセットでなければ、エンパシーはそれだけでは闇落ちする可能性が。
・エンパシーの闇落ちの例は、靴を履いた対象に自己を支配されてしまっている例。他者の靴を履いて、自分の靴を見失っては元も子もない。
・利己的であることと利他的であることは相反するコンセプトではなく、必然的に一体。(中略)自己を物事の中心に置く人々は「『わがまま』を認めて許し合う」。(中略)エゴイズムは相互扶助(トップダウンの支配関係とは違う水平の助け合い)の方向に進まなければならない。
第11章 足元に緑色のブランケットを置く
・民主主義とアナキズムとエンパシーは密接な関係で繋がれている。
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