カール・ロジャーズ カウンセリングの原点

諸富祥彦

 

第1章 ロジャーズを理解するための5つのキーワード

・言葉にならない暗黙知に触れながら、何とか言葉にしようと絞り出していく。この暗黙知は「内臓感覚知」として、一人一人の内側に与えられる。自分自身の言葉を取り戻すとき、自分の内臓感覚から言葉を発するようになる。

・内臓感覚で考えると、というのは、知性や理性、言葉を捨てて「野生に帰れ」「自然に帰れ」といったルソー的な命題とは異なる。

〇國分先生によると、ルソーはそうは言っていないらしいです。あくまでも相対的な概念だと。「暇と退屈の倫理学」

・(ロジャーズは)カウンセリングルームで発見された「人間の変化についての真実」は、外のどの領域でも通じるはずだと考えた。(中略)「人間は、真に耳を傾けられたときに、真の自分自身になっていく」という「真実の法則」。

 

第2章 「カウンセリングにおける変化の過程」の発見

・ロジャーズは「クライアントと私の関係の中で浮かび上がってきた。人生の目的を表現する最も適切な言葉」は、ゼーレン・キルケゴールの言う「自己が真に自己であるということ(to be that self which one truly is)」という言葉であろう、と言う。

・心理療法とは、「五感と内臓感覚的な体験に立ち返ること」。

・フロイトやユングやその弟子たちは、心理療法を「密室での出来事」として公開を拒んできた。(中略)ロジャーズはそれに満足できなかった。

・自分の内側の内臓感覚的な体験の流れに深く触れた時に人は変化しはじめる、という個人の内的な変化と、それを促進する共感的な人間関係とはワンセット。

・内的な刺激があろうとなかろうと、環境が好ましかろうと好ましくなかろうと、生命体の行動は自らを維持し強化し再生産する方向に向かっている。これが、私たちがいのちと呼んでいるプロセスの本質である。(Rogers, 1980)

 

第3章 ロジャーズの生涯

・一人の人間が自己の真実を生きるならば、人間というものの「普遍性」をある側面から映し出したものになる。「一般知」ではなく「普遍知」に至ろうとするなら、一人の徹底的に真実を生きた人間の個別のケースを深く探求することが近道。キルケゴール以降の一つの理路。

〇サクセスケースメソッドにも影響を与えているのでしょうか。

・相手が自分で意思決定できるようにすることは、人間の力の範囲内のことだ、と考えたロジャーズは「患者」という言葉を、もともとは法律用語で「自発的な依頼者」を意味する「クライアント」という言葉に。

・「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」という概念を創作。

・カウンセラーが「無条件の積極的関心」「共感的理解」「一致」の3つの特質を満たした態度でクライアントに関わっていくならば治療的人格変化は起きる。

・「自分にとって真実であるならば、他の人にとってそうでなくてもかまわない」というスタンスをロジャーズは「キルケゴール・スタイル」と呼ぶ。

 

第4章 傾聴は何のために

・カウンセラーとは、クライアントの内的な自己探求の旅の「同行者」。

・カウンセラーに自分の気持ちを聴いてもらっているうちに、クライアントは「自分自身への傾聴」を学習。それがクライアントの変化を引き起こしていく。傾聴の意味はここに。

 

第5章 ロジャーズのカウンセリング/心理療法

・解釈を加えることをせず、丁寧に意識を向けて、そこから何かがおのずと生まれ開かれてくるのを「待つ」。そこで生じる全てのことに開かれた態度を保つ(起きていること全てのことにただ意識を向け、自覚の目を向けていく姿勢を「現象学的あぷろーち」という)。

・「受容」。クライアント中心療法では「同感」せず「賛同」せず「ほめ」ず「叱ら」ず。(中略)これらは「評価」であり、「条件付きの受容」に。

・ロジャーズの言うempathyは、自分をいったん捨て、相手の内側の世界に完全に入り込み、そこに立脚点をシフトさせて相手自身にいったん完全になりきり、そこから世界や人生を眺め直してみるようなダイナミックな行為。「共感」のニュアンスとはかなり遠い。(中略)empathic understandingを「自己投入的理解」とか「自己没入的理解」の方がまだ良い。

〇”エンパシーとシンパシー。エンパシーには制限や条件がない。シンパシーは他者に対する心の動きや理解やそれに基づく行動。”⇦他者の靴を履く

・「一致」とは、「意識」と「内臓感覚的体験」との一致。内側で進行している「内臓感覚的体験」に意識が向けられ、それに気づいており、それを伝えることもコミュニケートすることもできる。

 

第6章 1955年のロジャーズとジェンドリン

・優れた若手研究者との交流の中で刺激を受けて中高年の研究者が変化し始め、その変化の途中で本人の中でも「ぶれ」が生じることは、むしろその研究者の柔軟性と可塑性を示すもの。

若者の話は買ってでも聞け(笑)。

・人が自分の深いところにあるなまの体験の流れ(expriencing)に直接意識を向ける(ダイレクト・リファー:direct refer)時に展開していく体験のプロセスのことを、ジェンドリンは「フォーカシング(forcusing)と命名。(中略)内臓感覚的に思考。(中略)フォーカシングはクリエイティブな仕事や活動をするすべての人に有益な体験。

・言葉にされることで、言葉にされたがっていた暗黙の何かは変わる。人間が変化する時に起きていること。その繰り返しの中で人は通常の意味や言葉を超えて先に進み、新たな文化が生まれる。

 

第7章 「静かなる革命」

・ロジャーズの「静かなる革命」は「人間関係の変革から始まる革命」。「関係の変革」を通しての「人間の変革」。「他者を支配し制御しようとする関係」から「他者をその内側から理解し受けとめていく関係」への変革。

・対立する集団の中に合ってファシリテーターが量集団を平等に扱い、どのメンバーも一人一人の人間として尊重し、理解しようとする、と、双方の集団もお互いに耳を傾け始める。

 

第8章 ロジャーズの結婚・恋愛論

 

第9章 ロジャーズの教育論

・教育の核心は、学生との「対話」に。教師と学生、学生同士が深い対話において一人一人が「自分自身との対話」を深めていく。すなわち深く「思考」する。「内臓感覚的思考」-重要なことをわかっているけれどまだなお言葉にならない「内臓感覚知」「暗黙知」を言葉にしようと。

・ロジャーズは「教師」という言葉を捨て、「促進者(ファシリテーター)」という言葉を好んで用いる。何かを教える人というより、「学習の促進者」だという立場をとる。

〇研修講師は正にこれ。

 

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