「バカ」の研究

「バカ」の研究

ジャン゠フランソワ・マルミオン/編集

はじめに

・ニーチェは「ヒトを狂わせるのは疑いではなく、確信だ」と言ったが、むしろ「疑いは人を狂わせ、確信は人を馬鹿にする」。

バカについての科学研究 セルジュ・シコッティ

・究極のバカとは、研究結果の平均からもっとも遠いところにいる人間。バカはモノの見方が単純。

・ある研究では、「知性が高い人ほど神の存在を信じない」という結果。

・人間は年を取るにつれ、嫌な思い出が記憶から消えていき、良い思い出が残る。(中略)年寄りバカは「昔は良かった」とよく言う。

○これをわきまえることが若者との付き合い方のコツかもしれません。

・アジアの国々では「ダニング・クルーガー効果」と真逆の現象。アジア人は自らの能力を過小評価する傾向が強い。

・「バカ」とは、心理学研究によって証明された様々な「傾向」や「バイアス」が極端に誇張されている人物。

・世の中にバカが沢山いる二つの理由。一つ目は、「バカを探し当てるレーダー」が備わっていること(ネガティビティ・バイアス)で、他人に対して偏見を抱いたり先入観を抱いたり、固定観念を持ったり、差別をしたりする。二つ目は、「根本的な帰属の誤り(他人の行動を判断するのにその人の気質や性格を重視しすぎる)」に陥りやすい。

○慮れる能力の大事さ。

知性が高いバカ イヴ=アレクサンドル・タルマン

・「知性」は行動よりも人物を形容し、「バカ」は人物よりも行動を形容する。

・「バカ」とクリエイティビティは一枚のコインの裏表のようなもの。共通するのは「逸脱」、叱れたレールから外れること。

・「バカ」とは「知性の欠如」ではなく、IQが高くても「バカ」な行動をする衝動を避けることはできない。

<コラム>

・判事が昼食や休憩を取った直後から、時間の経過に従って「仮釈放」許可の割合が低下する。

○人間、いかにして自分が幸せでいられるかがカギ。思いやりの心は自分が満たされているからこそ。

迷信や陰謀を信じるバカ ブリジット・アクセルラッド

・ヘザー・バトラー曰く、「批判的思考と知性は全くの別物。(中略)批判的思考とは、あらゆる認知バイアスに打ち勝つことができる能力」。

・単なる偶然の裏側に、運命・宿命・陰謀・策略・意図・善意・悪意などを見出そうとする。誰でも持っているバイアス。

バカの理論 アーロン・ジェームズ

・自分の行動を自覚していてそれを誇りに思っているバカが沢山。(中略)だから、自覚したくらいではバカは治らない。バカの要塞の内側に閉じこもっているのでそれを問題にするなど考えもしない。

○開き直り。若い頃を思い出すと冷や汗が出ます(苦笑)。

・社会は、そこに暮らす人達の協力と節度によって維持されているが、どちらの能力もバカにはかけている。

人間は決して合理的な生き物ではない ジャン=フランソワ・マルミオン

・社会心理学者のソロモン・アッシュは「人間は周りに合わせるために自分の考えを覆す事がある」ことを証明。(中略)神経学者のグレゴリー・バーンズは、MRIでアッシュの実験を再現。(中略)認知の対立を処理する部分ではなく、空間認識を処理する部分が活性化。(中略)他者の判断は私たちの知覚さえ変えてしまう。

<コラム> バイアスとヒューリスティクス

・代表制ヒューリスティック:リンダ問題

・アンカリング/アジャストメント(係留/調整):確信がない時は、すでに与えられた情報を基準にしようとする

・利用可能性ヒューリスティック:インパクトが強いことが正しいと思いこむ

・損失回避性:得る期待より失う怖さ

・フレーミング効果:「半分しかない」と「半分もある」はどちらが多いか

・確証バイアス:なおざりにするか、目をつぶるか

・後知恵バイアス:そうなると思ってた!

・権威への服従原理:<ミルグラム効果>

正直シグナル【社会的回路がどれほどすばやく、強力に、集団全体に態度を広めるかを理解するには、スタンリー・ミルグラムの実験(Tetlock2005)やフィル・ジンバルドーのスタンフォード監獄実験を思い出すだけでよい。】

・自己奉仕バイアス:私が転んだのはヴォルテールのせい

・錯誤相関:コウノトリと赤ちゃん

・ハロー効果:あばたもえくぼ

認知バイアスとバカ エヴァ・ドロツダ=サンコウスカ

・認知バイアスとは、脳の情報処理と思考における様々な「傾向」。

二とおりのスピードで思考する ダニエル・カーネマン

・『ファスト&スロー』。脳は二つのシステムで思考と情報処理を行っている。スピードが速い「システム1」と遅い「システム2」。

・システム1だけで生きるとしたら、今よりずっと衝動的な人間に。(中略)酒に酔った状態が近い。酔うとシステム2の働きは鈍くなる。

・「リバタリアン・パターナリズム」とは、個人の自由を尊重しながらより良い結果に誘導する思想。「ナッジ」はその思想に基づいて、個人がより良い選択をするよう促す仕組み。

・ノーベル経済学賞受賞者のリチャード・セイラーは「ナッジ(軽く肘をつつく)の英語)」を「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャ―のあらゆる要素を意味する」と定義。

「行動経済学の使い方」

【ノーベル経済学賞受賞者のリチャード・セイラーは「ナッジ(軽く肘をつつく)の英語)」を「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャ―のあらゆる要素を意味する」と定義。】

なぜ人間は偶然の一致に意味を見いだそうとするのか 二コラ・ゴ―ヴリ

バカのことば パトリック・モロー

・公共の場にバカが進出してる現象。ネットやSNSによる。

・私たちは皆誰かにとってのバカ。イデオロギーを戦わせるなど実に不毛なこと。

感情的な人間はバカなのか? アントニオ・ダマシオ

・ポジティブな感情は協調性をもたらしたり、知的な行いをさせたりと良い働きをするが、いかなる感情にも悪い面が。(中略)全ての感情を十把一絡げにはできない。同じ行動が知的とみなされるか、馬鹿げていると思われるかは、その時の状況次第。

バカとナルシシズム ジャン・コト―

・本物のバカは主に二つ。「うぬぼれバカ」と「卑劣なバカ」。「卑劣なバカ」は他人を苦しめ、自らに服従させることを好み、部下に屈辱を与えることを楽しむ。邪悪な自己愛性パーソナリティ障害。最悪の場合、<ダークトライアド(三大邪悪パーソナリティ障害)>を全て併せ持つ。

「サイコパスの真実」

フェイクニュースを作っているのはメディア自身だ ライアン・ホリデイ

・ウェブライターが朝起きて一番に考えるのは、「質が高くてためになる文章を書きたい」ということではなく、「どうしたらクリックの数を増やせるか」ということ。

SNSにおけるバカ フランソワ・ジョスト

・SNSの三つの特徴、「生活のスペクタクル化」「何でも裁きたがる傾向」「有名になりたいという欲求」は<悪意の先験的条件>であり<バカの先験的条件>。

インターネットのせいで人間はバカになる? ハワード・ガードナー

・集団は「集団的知能」になりうると同時に「集団的バカ」にもなりうる。群衆は建設的にも破壊的にもなりうる。

・ひとつの文化圏あるいは異文化圏において何が正しくて何が間違っていて、何が曖昧か、何が倫理的・道徳的で何がそうではないか、ある程度のコンセンサスが無ければ社会を永続させることはできない。

バカとポスト真実 セバスチャン・ディエゲス

・哲学者のハリ―・フランクファートによると、「ウンコな議論」の特徴は「基本的に真実に対して無関心であること」。「嘘」と「ウンコな議論」は真逆。

・「誠実そうな」話し手と「寛容すぎる」聞き手。両者が互いの役割を演じ続けることで相互作用が起こりやすくなり、「ウンコな議論」にとって都合の良い雰囲気が作られる。(中略)「ポスト真実」とは、『客観的な事実より、個人的な感情や信条に訴える方が、世論の形成に大きな影響を与えやすい状況』のこと。

○感情の生き物に、ネット社会が拍車をかけている。バカは一部でも、集団心理に載せられてしまうのでしょうか。

・知的で豊かな知識を持ち、他人の誤りや間違いを無慈悲なまでに厳しく糾弾する者が、実はものすごい「バカ」だということも。

・バカはバカであるがゆえに、自分のバカさ加減に気付ける知的能力を備えていない。(中略)バカはバカであることの利点を知っており、論理的な人間の攻撃から身を守る術を知っているという点で、バカから遠いところにいる。

○これが一番怖いです。

・真の信念を抱き、正しい情報を持っている者にとって、のべるべきことはただ一つの真実しかないが、バカはバカな発言を大量にストックしている。(中略)「ウンコな議論の非対称性の法則」。

バカげた決定を回避するには? クローディ・ベール

なぜバカみたいに食べ過ぎてしまうのか? ダン・アリエリー

動物に対してバカなことをする人間 ローラン・ベーグ

子どもとバカ アリソン・ゴブニック

・知性の異なる二つの種類、「変化する状況に即応できること」と「確かな経験や知識に頼って思考すること」。神経科学者は「探索と活用のトレードオフ」と呼ぶ。

・より高い知性を得るため、より多くの事を学ぶために長い期間こどもでいつづけている。他のことは何もしなくてよい。(中略)上手く生きていく方法を「探索」することこそが子どもの存在理由。

○これ、子育ての気が楽になると同時に勇気づけられます。

夢とバカの関係 デルフィーヌ・ウディエット

・どんな人でも夢の中では、皮肉や非難を込めた口調で下品で攻撃的なことを言う「社会性に欠けるバカ」になりうる。

・目覚めている間に経験したこと(記憶)は、ノンレム睡眠中に脳内で再現され、定着される。それに続くレム睡眠中の夢の中で記憶の断片をランダムに組み合わせて再構築しながら、目覚めた後で活用できる新しいアイデアを創り出している、と考えられている。

バカは自分を賢いと思い込む ジャン=クロード・カリエール

「あの人はバカだけど、他の人達はバカではない」ではなく、「みんなバカだけど、あの人は他の人達に比べてバカが目立つ」というだけ。

バカなことをした自分を許す ステイシー・キャラハン

・自分がしでかした「バカなこと」を笑い話にするには自分自身に同情することを「セルフ・コンパッション」という。実践の三つのポイント、「マインドフルネス」「自分の人間性を認める」「自分自身に優しくする」。

○これができる人は本当のバカではない気がします。やはり、バカは、気づけない・・・。

・無条件の自己受容は、努力もせず「自分には欠点などない」と主張することではなく、自らの欠点を受け入れ、それにより多くを学び、成長しようと決意すること。

知識人とバカ トビ・ナタン

・バカの真逆は創造。

○あぐらをかいてしまう、と。

・専門知識と専門用語がないと、バカが丸出しになる。

・異文化圏では自分とは違く考え方をするという事を認めなければならない。

・知性を凝縮したものが感情。知的になればなるほど複雑な感情を抱ける。知性と感情を対立させるのはやめた方が良い。

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