人と組織の行動科学

人と組織の行動科学

伊達洋駆

1.採用にまつわる処方箋

・オンライン採用に対する求職者の抵抗感は薄れてきているが、一次面接を「100%webのみ」で行う会社は、対面の専攻を導入する会社より内定辞退率が高い。

・「印象管理」とは、他者に対して良い印象を与えようとする行動。(中略)印象管理を見抜くのは困難。(中略)印象管理はある意味で、職場を円滑にするための潤滑油のような役割。

○非言語コミュニケーションの観点でいえば、良い印象管理はバレても良いと思います。そこには誠実さが必要ですが。

・リファラル採用。紹介者が離職すると被紹介者も離職する可能性が高まる。

2.マネジャーにまつわる処方箋

・2年目の従業員は支援を一層求めているが、上司からの支援は十分ではないという調査結果。

2年目の憂鬱

・経験を共有していることが関係構築の基礎になるという考え方が「共有されたリアリティ」。上司サポートの促進要因。他に、「上司サポートが評価される仕組み」と「支援(サポート)のためのインフラ」。

○育成が評価要件に入っているか否かは大きそうです。

・「相対的LMX」への対処の切り口は「サーバントリーダーシップ」。部下が直面している状況を理解し、求めるものを提供することで、「職場のLMXにばらつきがある」と認識されにくいというデータ。

・自分の能力を高めていきたいという「学習目標志向性」を持つ人は、難易度が高い状況でもリーダーシップの向上が望める。

3.評価と上司部下コミュニケーションにまつわる処方箋

・多面評価は、周囲による評価を合わせて本人いフィードバックすることで、自意識過剰傾向にメスを入れ、自己評価を妥当なものに変化させる。自己評価が他者による評価より高い人ほど、多面評価の後に効果が見られやすい。

・多面評価の精度は十分ではないので、処遇と絡めて用いるのは慎重に。

○あくまでも参考に。それだけでも成長につながる効果は多々あると思います。

・心理的安全性は、「快適にサボる(Slacking off in comfort)」状態も生み出す。

4.育成と自律性にまつわる処方箋

・日本企業を対象にした研究の結果、組織社会化は「①周囲との関係を構築する」「②会社のルールに形式上従えるようになる」「③会社の価値観を自分のものにする」という3段階で進む。

・新人自身の価値観を否定し、会社の価値観を刷り込もうとする「剥奪的社会化」よりも、(中略)新人本来の姿を大事にするような組織社会化のアプローチは半年後の定着率が高い。(中略)個性を尊重して適応を促した方が良い効果が生まれる。

○付与的社会化。

・学習目標志向性が高い人も、ネガティブなフィードバック受けた直後は、「このフィードバックは役に立たない」と感じるが、1ヵ月も経つと「役に立った」と捉えるようになる。

・「職務満足」は会社から与えられた役割を遂行することにつながりはないが、「役割外行動」としての「組織市民行動」につながる。

・組織市民行動のプラスの影響、「離職意思の低下」「欠勤率の抑制」。組織市民行動を取る従業員の増加により、会社のパフォーマンスが高くなるという調査結果も。

・挑戦の多い仕事への取り組みは、キャリアプラトー(頭打ち)のネガティブな影響を軽減。「仕事の報酬は仕事」。挑戦的な仕事は、従業員の貢献に対する会社からのお礼の一つとして機能。

5.組織・文化・人事制度にまつわる処方箋

・組織文化は、従業員の行動を方向付けたり、特定の行動に対して報酬や罰を付与。マネジメントツールの一つとして関心が集まっている。

・内部指向よりも外部指向の組織文化の方が、同業他社より利益率や成長度が高いことが検証済み。

○越境学習の概念に通ずるもの。

・制度と現場がかみ合っていない状態の「脱連結」。(中略)成果主義が脱連結の事例に該当する可能性。(中略)ジョブ型雇用も脱連結の可能性のある制度。

・3つの「制度的同型化」。①強制的・②規範的・③模範的。(中略)課題や制度も各社さまざまな中、制度的同型化によって、現場のニーズとは異なる方向から類似する制度が導入。制度的同型化は、会社の正統性を高めるが、課題解決に繋がりにくい制度はうまく運用されず「脱連結」に。

6.仕事と組織にまつわる処方箋

「ワークエンゲージメント」は「バーンアウト」の対極の概念。

7.労働環境や働き方にまつわる処方箋

・「テクノロジーの利用方法は、設計者の予測から基本的に逸脱する」という研究者も。

○現場ニーズ、ということでしょうか。

・「印象管理動機」に基づいてジョブ・クラフティングが行われていると、活力を持って働くこととは無関係になる。

○最初の動機はそれもありなような気がしますが、確かにずっとは続かないですね。上手く自分ごとに置き換えることができれば。

おわりに

・「副作用に関する研究知見は、組織行動論に比較的慣れ親しんでいる私にとっても、驚きの連続でした」。

○これは本当に価値がある知見だと思います。悪い面も見えてこその対処法。正に処方箋。研究知見をわかりやすく教えてくれる、伊達先生はじめ研究者の方々には感謝しかありません。「巨人の肩に乗る」人の肩に乗る(笑)。

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人と組織の行動科学” に対して1件のコメントがあります。

  1. はやし より:

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