M&A後の組織・職場づくり入門

M&A後の組織・職場づくり入門

齊藤光弘/中原淳/東南裕美/柴井怜太/佐藤聖

はじめに

・失敗原因の多くは、M&Aを通じて協働する2社間での組織文化の衝突やコミュニケーション不全など、「M&A後の統合(PMI:Post Merger Integration)プロセス」における「人と組織の問題」。

1.「M&Aが日常化する時代」に知っておきたいこと

・M&A(Mergers and Acquisition)。「合併」「買収」「資本参加」など。

・人材の獲得を意図したM&Aは「アクハイアリング(Acquihiring)[買収(Acquisition)と[雇用(Hiring)を組み合わせた造語]」。

・経営学でいう「Make or Buy」。Makeは「自社の資源だけで成長を目指すこと(Organic Growth)。Buyは「資源を持っている会社を買収すること。中間としてAlliance(提携)。

・買う側・売る側双方の組織文化が合うかどうかの文化面雄性差が行われるケース(「組織文化デューデリジェンス[Cultural Deu Diligence])。

2.M&A後の統合がうまくいかない理由

・買収までのプロセスでは、買収後に行われるPMI(Post Merger Integration)プロセスについての検討が少なくなりがち。(中略)人と組織に関わるやっかいな諸問題は「構造的」に生み出されている。

・M&Aによって発生する移行期の「変化」に対応するための痛みや不安を伴う「学び」「学び直し」が求められる。

・PMIとは、職場環境に関する物理的な変化だけでなく、愛着などの心理的変化も伴う「トランジション」。

・トランジションの3つの段階、「終わり」「ニュートラルゾーン」「新たな始まり」。

3.人と組織の視点で進める「M&A後の組織・職場づくり」

・組織作りの3段階モデル「解凍:準備」「変化:変革実施」「再凍結:定義」。組織やメンバーの現状を把握した上で、あるべき姿や目指すべき方向性を明確にし、メンバー間で共有して日々の行動に落とし込み、ルーティーンとして定着させること。

・組織開発とは、「組織をWORKさせるための意図的な働きかけ」。組織の状況を見える化した上で、今後の方針やアクションについて、関係者で対話を重ねながら決定し、未来に向けて実行に移していくイメージ。

・PMIを進める際の阻害要因の一つの「地理的な距離」。空間的な距離の近さは、社員同士の関係性を築くために重要。(メールやリモートでは)M&Aによって新しく統合されたコミュニティの基礎となる「対人関係の構築」にはあまり役に立たない(ヘンリー・レインら(2004))。

○最初が肝心。

4.<解凍>M&A前夜に取り組むアクション

‣ジェローム・ブルーナーは、人が現実を認識していく際には2つのモード「論理立証モード(Paradigmatic mode)」と「物語モード(Narrative mode)」があるとしている。

・物語モードでM&A後の組織を語るとは、2つの組織が経験してきた過去・現在・合併後の出来事の連鎖を「意味付けていく(Sense Making)」モード。

5.<変化>M&A直後に取り組むアクション

・出身組織を肯定しつつ、PMIの先にあるビジョンを語る。

・M&A後の組織作りでは、いきなり組織体制や業務オペレーションなどのシビアな協議に入っていくよりも、まずはお互いの立場、現実を理解し合う「対話」を行い、共に未来を創っていくための関係を構築して前向きな「議論」につなげる。

・経営層やマネジャーからのメッセージは1度では伝わらない。(中略)組織コミュニケーション領域の「ルート(√)の法則」。1万人の大企業なら、√10000=100,100回同じことを言わなくてはならない。

・「買った側は『上から目線に聞こえてしまう言葉』をどれだけ無意識に使っているかということに、もっと自覚的になる必要がある」(楽天ピープル&カルチャー研究所代表・日高達生氏)。

6.<再凍結>M&A後3か月以降に大事にしたいアクション

・組織社会化は、M&A後の組織づくりにおいても参考にできる。

・上長のマネジメントスタイルを大きく、「人間関係を重視するマネジメント」と「課題解決など人間関係以外を重視するマネジメント」で分類。(中略)人間関係を重視し、丁寧なコミュニケーションを行えるマネジャーの方が、買われた側社員のM&Aに対する受容感を短期間で高めやすい。

・「M&A直後、直属の上司がM&Aの目的や今後のプロセスについて説明しくれたけど、たぶん、この上司はやめるだろうなと思いました。演じている感じがあったので」。しばらくして、この上司は退職されたそう。

○切ない話です・・・。

・買った側がスピード感を持って業務の割り当てを再検討していく方がシナジーは創出しやすい。(中略)「買った側が業務の割り当てに主導的に動いていく」とは、単純に買った側の業務の進め方に合わせるということではなく、あくまでもPMIのプロセスをリードするということ。

・PMIのプロセスは、業務の進め方や組織文化のプロセスをすり合わせていく時間。当事者だけで議論していると、感情論にもなりやすい。外部支援者が入ることで、議論をより俯瞰的に進められるメリット。

7.楽天グループが実践するM&A後の「人と組織」の統合

・最初に紹介される際は、「楽天主義のワークショップを担当する部署です」といった形で。(中略)先方が大事にしてきた価値観を尊重・理解することにより、「傍らで伴走してくれるメンター」という立ち位置で関わる。

○外部だからこそ取れる立場。

・「理念浸透」というより、カルチャーブリッジング、すなわち「橋を架ける」という発想。

8.M&Aスペシャリストが語る統合プロセスの乗り越え方

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