進化の意外な順序ー感情、意識、創造性と文化の起源

アントニオ・ダマシオ

 

はじめに

・感情は本書の中心的なテーマをなすが、その力は「ホメオスタシス(恒常性)」に由来する。

 

第1章 人間の本性

・感情は脳が単独で作り出したものではなく、体内を駆け巡る化学物質と神経回路を介して相互作用する身体と脳の協調の副産物。

・人間の無意識の起源は、フロイトやユングが想像していたよりはるかに古く、文字通り原初の生物にまでさかのぼる。

・感情は、生体内の生命活動の状態を、その個体の心に告知する手段。ホメオスタシスの不備は主にネガティブな感情で表現されるのに対し、ポジティブな感情は、ホメオスタシスが適切なレベルに保たれていることを示し、その個体を好機へと導く。

・人間の創造性は、生命が「何があろうと耐え、未来に向けて自己を発展させるべし」とする厳正な任務を担いつつ誕生したという起源。

 

第2章 比類なき領域

・何があっても生存し未来に向かおうとする、思考や意思を欠いた欲求を実現するために連携しながら作用するもろもろのプロセスの集合をホメオスタシスと呼ぶ。

・生命と呼ばれる比類なき領域は二つの特徴によって定義。「内的な構造と作用をできるだけ長く維持することで生命活動を調節する能力」と「自己を複製し、恒久的な存続に挑戦する可能性」。

・ホメオスタシスに導かれた代謝は、生命の誕生と発展を決定づけ、進化の原動力に。環境から栄養とエネルギーを最大の効率で抽出するよう導く自然選択が、代謝の集中化された調節、複製などを果たした。

第3章 ホメオスタシス

・植物は動物と同様、水分や栄養素を必要とする多細胞生物であり、複雑な代謝機能を備えている。ニューロンや筋肉を持たず、例外を除いてはっきりとした動作を示さないが概日リズムを持っており、ホメオスタシス調節には、私達の神経系同様、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの化学物質が用いられる。

 

第4章 単細胞生物から神経系と心へ

・細菌が最初の生命体であり(中略)多くの種は人間の一部を構成。(中略)単細胞生物は、神経系や心を持たないにもかかわらず、知覚、記憶、コミュニケーション、社会的ガバナンスなどの能力を備える。「脳や心のない知性」を支える機能は、化学的・電気的ネットワークに依存。(中略)ニューロンや神経回路は、化学反応や細胞骨格、幕組織に依拠する古い発明を巧みに利用。

・多細胞生物は神経系の登場によって、生体全体にわたるホメオスタシスの維持に上手く対応、身体組織や機能の拡張へ。神経系は「身体の召使」として誕生。

○従から主へ、ではなく、従から対等へ。シェアード・リーダーシップのように。

・「身体がなければ、心は決して始まらない」。人間は身体、神経系、そしてそれら両方に由来する心を抱えている。

 

第5章 心の起源

・高度な神経系は、外界のイメージと生体内部のイメージを豊かに作り出す。生体内部の世界のイメージには、その起源と内容にて区別される二つの種類、「古い内界」と「それほど古くない内界」がある。

・味覚レセプターは消化管にも存在。消化管とその神経系しかなかった頃の名残。

身体心理学。

 

第6章 拡張する心

・イメージ形成のもとになるシグナル3つの源泉。「生体の周囲の世界(外界)」「「化学作用と内臓に支配された古い内界」「「筋骨格並びに感覚ポータルから構成されるそれほど古くない内界」。

・古い内界は電気化学的シグナルに加え、さらに古い純粋に化学的なシグナルを介して神経系と直接連絡を取り合っている。

・中進神経系は、内界、とりわけ古い内界から送られてきたシグナルに直接反応して、シグナルの源泉に働きかけることができる。

・好みや先入観を抑制する努力をしない限り、ナラティブに公正さや中立性を確保することはできない。

・過去と未来の記憶の絶えざる想起は、現在の状況の意味を直観し、生きていく上で直近の未来やかなり先の未来において、何が起こるかを予測することを可能にする。(中略)常に現在の瞬間を超えて自己を未来に託し、次を探索しているホメオスタシスの本質の現れ。

 

第7章 アフェクト

・感情が生じる直接的な要因。「ホメオスタシスに関わる感情」「五感を処理することで生じる感情表出反応」「衝動(飢えや渇き)、動機(欲望や遊び)、情動(喜び・悲しみ・恐れ・怒りなど)に起因する感情表出反応」。

・意識ある心を支配する感情のコンテンツのほとんどは、内臓の活動と対応。

・「ヴェイレンス」とは、経験の固有の質を意味し、快・不快・その中間として捉えられる。

・感情の種類。「ホメオスタシスに関わる感情」は自発的な感情(ホメオスタティック)。「五感を処理することで生じる感情表出反応」「衝動、動機、情動に起因する感情表出反応」は喚起された感情。

・「五感を処理することで生じる感情表出反応」は身体状態の静かな揺らぎを生む。「衝動、動機、情動に起因する感情表出反応」は生体機能の大規模な乱れをもたらし、大きな心の動揺をもたらしかねない。

 

第8章 感情の構築

・感情とは、単なる神経的な事象ではなく、身体が不可避的に関与。(中略)身体と神経系の両者が相互作用しつつ同時に顕現する現象。

・感情プロセスに関連する末梢の情報伝達は(中略)ニューロンの連鎖に沿った神経の発火による通常のシグナルの伝達とは違う。それは体液性のものであり(中略)ホメオスタシスの状態に関する情報を脳領域に直接伝える。

・(血中を循環している化学物質の影響から脳を守る)「血液脳関門」が欠けている中枢神経系領域は、化学物質(シグナル)を直接受け取ることができる。(中略)ニューロンは末梢で生じたシグナルを中枢神経系に伝達する際、単独ではなく支援を受けている。

・血液脳関門をなくすことは、身体と脳の融合を可能にするメカニズムの一つ。(中略)感情の研究はこれらの事実を考慮に入れる必要が。

・軸索を絶縁し、電流の漏洩を防ぐことによって高速でシグナルを伝えられるようにする「ミエリン」。(中略)ホメオスタシスやそれに依存する感情が、漏れやすく遅いミエリン化されていない太古の繊維に委ねられている奇妙さ。

・ミエリンの欠如による好機2つ。「周囲の化学的な環境への開放性」と「『エファプス』と呼ばれるプロセスを通じた電気インパルスの伝達」。並行して走るミエリン化されていない神経線維と直交して側方に伝達。

・腸管神経系は周縁的ではなく中枢的な神経系。

・腸管神経系が最初に出現した脳である可能性。

・消化管と腸管神経系が、感情や気分の形成に重要な役割。

・D・カーネマンとE・トヴェルスキーが述べるピークエンド効果。過去に起こったより有益な経験的側面に対しては強い記憶を形成し、残りの経験的側面を曖昧にする傾向。

○嫌な事を忘れるのも才能です。

 

第9章 意識

 

第10章 文化について

・原初の生物では、ホメオスタシスは心的プロセスを欠きながら、感情と主観的視点の先駈けとなるものを生んだ。

・現在、真の文化と見なしているものは、ホメオスタシスの規則に導かれた効率的な社会的行動という形態で、ごく単純な単細胞生物によって粛々と始められた。

・感情に促されて発明されたものには、音楽、ダンス、視覚芸術、儀式、魔術の実践、神々など。

 

第11章 医学、不死、そしてアルゴリズム

 

第12章 人間の本性の今

・情報の洪水を前にして疲労困憊した人々は、決まりきった信念や見解、自分が属する集団が持つ見方に閉じこもるように。(中略)変化に対する抵抗は、感情表出と理性の行使に関与する脳システムの対立的な関係に関連。(中略)対立する情報から身を守るために避難所を作ろうとする。

・社会学者のマニュエル・カステルは、メディア、教育、民度、ガバナンスに関して、現在より問題が少なかった時代があったという考え自体を一種の神話と見なしている。

・大規模かつ均質的でない人間の集団に自発的なホメオスタシスの調和を期待するのは怒りそうもない事を期待するに等しい。(中略)自然なホメオスタシスは、個々の文化的組織を対象に作用する傾向。(中略)事態をなすがままに任せておけば、文化的な組織はバラバラのまま。

・教育という手段を通じて、政治的ガバナンスの根本的な要件を巡って協調し合える社会を築こうとする、文明的な一大努力を重ねることが解決策。

・痛みとの格闘や欲望の認識のおかげで、快・不快だろうと感情は知性に焦点を置き、目的を与え、生命活動を調節する新たな手段の創造を導くことができるように。

 

第13章 進化の意外な順序

・協調的な戦略は生命の誕生と同時期に存在していたかもしれず、「大きな既存の細菌」と「取って代わろうとする押しの強い新興の細菌」の間で取り交わされた便宜的な盟約がそれを示している。

・神経系は、物事の構造に関する「類似した」表象を立てるためのイメージングとマッピングに至る道を開いた。(中略)ホメオスタシスの規則に従って維持するための召使であったにせよ、神経系の誕生は革新的なできごと。

・神経線維は、生体という広大な敷地の「調査官」。(中略)免疫系のリンパ球も同様。

 

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