反共感論

反共感論

ポール・ブルーム

 

はじめに

コレステロール同様、共感には善玉と悪玉がある。

 

第1章 他者の立場に身を置く

・我々は、共感には依存せずにさまざまな道徳的判断を下す能力を備えている。

・本書で用いる共感の定義、「共感とは、他者が経験していると自分が考えるありかたで、自らが世界を経験するようになること」。

・1894年の冬、ドイツで氷を踏み抜いて川に落ちた4歳児を神父が助けた。後のアドルフ・ヒトラー。

・帰結主義。正しくあろうとするとき、自分の行動によって引き起こされる結果に配慮すること。

○もし、後のヒトラーの行動を予知できていたとしても、見殺しにはできないでしょうね・・・。

・共感はスポットライトのようなもの。(中略)共感は大勢よりたった一人を重視するよう仕向ける。

 

第2章 共感を解剖する

 

第3章 善きことをなす

・自分が愛情を注いでいる人々に対してと同じように、赤の他人に対しても共感するよう心理的に構成されているわけではない。(中略)他者の生を重くするのではなく、自分をより軽くし、自らを縮小することであらゆる人々を同レベルに置くべき。

・哲学者のバートランド・ラッセルは、新聞を読むとき、事態を公正に評価するために、自国を含めて国の名前を読みかえるべきだと主張((筆者は)X、Y、Zなどの任意の記号を用いればなおよいと言う)。

 

幕間Ⅰ 共感に基づく公共政策

・政治的議論は一般に、誰かに共感すべきか否かではなく、誰に共感すべきかに関して見解が分かれる。

・少数の人々の苦難に共感することで、多数の人々に破滅的な影響が及ぶ。

・道徳的義務と起こり得る結果に関する合理的で反共感的な分析は、腹の底から湧き出してくる共感よりも優れた未来への指針に。

 

第4章 プライベートな領域

・「過度の共同性(unmitigated communion)。「他者に過剰に配慮し、自分のニーズより他者のニーズを優先すること」と定義。

・過度の共同性の度合いが高い人は、他者を非常に気づかうが、他者からはあまり気づかわれず、さらに支援を受ける側になるのを好まない人が多い。

・共感とは対照的に、思いやりは他者の苦しみの共有を意味せず、他者に対する温かさ、配慮、気づかい、他者の福祉を向上させようとする強い動機によって特徴づけられる。思いやりは他者に向けられた感情であり、他者と共に感じることではない。~タニア・シンガー、オルガ・クリメッキ~

○2014年の論文「Empathy and compassion」。自分と相手を混同しないことで疲弊することを防ぐということ。特に医療関係の方はそうしないと気持ちがもたないでしょう。

 

幕間Ⅱ 道徳基盤としての共感

・進化は、思いやりや気づかいを備え、特定の他者の運命に対する純粋な関心が呼び起こされるようにすることで、我々を利他的な存在にした。

・共感を司る脳領域は、初めから存在するのではなく、外界との相互作用の産物であるという研究。

○情けは人のためならず。

 

第5章 暴力と残虐性

・ある研究では、自分が誰かを怒らせたケースでは、被験者は自分のした有害な行為を過小評価し、それには正当な理由があると答えることが多く、自分が犠牲者の場合は、その行為が重大であり、理不尽さとサディズムが入り混じった動機に駆り立てられていると見なすことが多かった。

・自分の子どもと同程度に敵の子どもに共感を寄せるよう求めることは、リンゴと同程度に犬の糞に食欲を感じるよう求めるのと変わらない。

・非人間化とは、十全な人間ではないものとして他者を見なしたり扱ったりすること。世界の至る所でなされている残虐行為の大半はこれがもと。

・哲学者オーゥエン・フラナガンによるダライ・ラマへの質問。「ホロコーストを止めるためなら、あなたはヒトラーを殺しますか?」。「そう、彼を殺すべきである。だが怒りを込めてではない」。(中略)理性を備え他者を気づかう人は、殺人を含めてある種の暴力行為をなさねばならない場合があることを認めた。必要悪としての最後の手段。

○本音で話す人を人は信用しますね。とはいえ、本音100%ではなくても伝わるような気もします。

 

第6章 理性の時代

・名前がその人の全生涯に影響を及ぼすことを示唆する証拠。「ラリー(Larry)」が法律家(lawyer)、「ゲイリー(Gary)」がジョージア(Georgia)州に住む可能性が高い統計的な証拠。選好に微妙な影響を及ぼす。

○名は体を表すというのは、これかもしれません。

ステーィブン・ピンカーの主張。高い自制心が当人に利益をもたらすように、自制心を称揚する文化的価値は社会に資する。欧州では中世から現代にかけて殺人発生率は30分の1に。名誉の文化から、抑制を称揚する尊厳の文化への変遷が関係

 

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