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新版 身体心理学

春木豊・山口創 編著

 

まえがき

・体の動きについてはノンバーバル・コミュニケーションの研究において指摘されている体の動きを基準にした。そしてこれらの体の動きが他者に与える効果を対他効果とし、(中略)一方、自分に与える効果を対自効果として、これを身体心理学の研究とするのである。

 

第1章 身体心理学とは何か

・レスポンデント反応→これはいわゆる反射と言われる反応である。無意志的反応ともいう。

・オペラント反応→行動の主体者の主体的な反応である。意志的な反応である。

・両方の性質を持った反応があるということである。(中略)そこでこの反応を新たに「レスペラント反応」と名づけることを提唱したい。

・顔は解剖学用語では内臓頭蓋といい1つの臓器として考えられている(西原、1996)。それは顔のさまざまな器官が腸や鰓からおこってきていることによるのであろう。(中略)顔は(中略)内臓筋がもとである。内臓筋は不随意筋である。感情が顔面反応に表れたり、同時に呼吸や心臓などの内臓反応に表れたりするのはこれらの臓器が同じ発生源を持つことによると考えると理解しやすい。

○顔が内臓から!これは腑に落ちました。食べ物を取り入れる、空気を取り入れる入り口。正に、気持ちは「顔にでる」ですね。

・環境が生存にとって不適切になった時に、動くことによって生存の可能性を切り開いているのである。(中略)動くことの本質は生きることにあるといえる。

・さまざまな文化において、(中略)軍人(武士)は肩を飾るというのである。まさしくわが国の裃は肩を飾ったのであった。

〇大きく見せることで威嚇する。

・動きは身体と精神の中間に位置するものといえる。身体心理学でいう身体は「動き」である。

・心は初めからなかった。「初めに言葉ありき」という聖書の文言はあてはまらない。初めに有機体があり、そこに動きが生じ、動きから心は生まれてきた。

・漢字を思い出すとき、中国人や日本人の大部分(10歳以上)は指なぞり(空書という)をするという。

〇実験では、空書を禁じられると漢字パズル?の成績は半分以下だそう。わかる気がします。

第2章 呼吸

・呼吸運動のテンポをゆっくりさせることと同様に、吸気に比べて呼気時間を長くすることがポジティブな心理状態を導くための重要なポイントのようである。

・腹式呼吸はリラックス状態を引き起こすものであり、逆に胸式呼吸は生理的覚醒を高めるの野であるといえる。

・退屈な気分が欠伸を引き起こすと考えられがちだが、身体心理学的な観点に立つと、(中略)覚醒し集中力を高め、その状況に適応しようとする無意図的な’身体の努力’とは考えられないだろうか。

○この考え、良いですね。非言語コミュニケーション的には、嘘でも好意的に取るのが個人的に好きです。

 

第3章 筋反応

・筋と心的現象との関連性は古くからよく知られてた。(中略)ジェームズ(James,W.1842-1910)の情動の末梢起源説が挙げられる。ジェームズは、身体から分離された感情は存在しないと主張した。

・ジェームズの理論を支持する研究として注目されたのは、表情フィードバックの研究であった。(中略)トムキンス(Tomkins,1962)によると、顔面筋からのフィードバックが感情を生みだしているとするものである。レアード(Laird,1974)の定義では、顔面の表出活動のパターンは、何らかの主観的経験に先行し、その原因となるというものである。フェイシャルフィードバックは、内臓筋と異なり、反応が早く、感情経験に匹敵するほどの多様性がある(Correlius,1996)(後略)。

 

第4章 表情・視線

・一般に表情と称される顔面運動は、人が視覚的な情報処理を優先させることによって、もっとも微細で優れたコミュニケーション・チャンネルになり(Ekman & Friesen, 1974)、加えて文化的な呈示ルール(Ekman, 1973, 1982)を学ぶことによって、社会性を前提としたコミュニケーション行動として発達する(吉川ら、1993)。

・右利きの人間の場合、知覚対象が右側にあると左側にある場合に比べ感情的に好意的に評価される傾向にあることが知られている(Swartz & Hewitt, 1970; Levy,1976)。

 

第5章 姿勢

・非言語コミュニケーションの文脈では、姿勢は、表情なども含めて、「表出行動」(expressive behaviors)と呼ばれるように、感情状態を表す行動だと考えられている。

・日本では、姿勢という言葉こそ歴史は浅いが、構えという言葉は、体の構え(狭義の身構え)と心構えの両方の意味で、1000年以上使用されている。

・リスキンド(Riskind, 1983)は、直立姿勢ではポジティブな経験を、前屈姿勢では不快な体験を思い出しやすいのではないかと考えた。

・鈴木・春木(1992)は、行動の持つコミュニケーション機能、つまり他者に対する効果を「対他効果」と名づけ、行動が行動主体者に与える効果を「対自効果」と呼び、この区別をもとに姿勢を捉えなおした。体幹の左右方向はおもに「拒絶」などの対他的次元、体幹の前後方向が対自的次元とされ(中略)。

〇体をひねって避ける。前後で好意が喚起される?

・姿勢が倫理意識に影響するという研究(Yap et al., 2013)もある。

〇車の運転姿勢。ゆったりした姿勢だと運転が荒くなったり、ルールを破ったり。

・「首を傾げる」というメタファーに着目し、実際に頭部姿勢を変化させ、疑問や不信が高まるか検討した(杉本ら、2016)。

・首傾げ姿勢が疑問や不信を高めるという仮説は右傾に限って指示された。(中略)大半の人は生まれつき首を右に傾けやすいという報告(Anderson & Imperia, 1992)もあり、首を傾げて疑問を表すのは右傾の場合が多いために、右傾の頭部姿勢が見られたのかもしれない。

・多くの研究に共通しているのは、頭を垂れた猫背の姿勢(前屈姿勢)がもつネガティブな効果である。

〇慣用句には意味があるのを明らかにしていく研究者に感嘆します。

 

第6章 発声

・怒りを呼び起こすような出来事を話す場合でも、ゆっくりと穏やかな声で話すと、怒りをあまり感じず、また血圧と心拍も、中性的な出来事を話すときと同じレベルまで減少する(後略)。

 

第8章 対人空間と身体接触

・市川(1975)の現象学の言葉でいえば、「対他的とは他者によって把握された私の身体(対他身体)であり、対自的とは自分によって把握された私の身体(対自身体)である」ともいえよう。

・市川(1975)は、対他的身体空間(自己と他者とのあいだにある空間)は、自己の身体が体表を越え出て拡大延長したものであり自己防衛の機能をもつと考えている。

〇パーソナルスペースの概念。

・治療者は患者の右側に座ると、患者は落ち着いて話すことができるともいわれている(嵯峨山、1990)。それは相手の左側、つまり心臓のある側から接近されたり話しかけられたりすると無意識的に防衛本能が働き警戒心が抱かれるからだと考えられている。

・皮膚はすべての臓器の中で最大の臓器であり、発生的には脳と同じ外胚葉からなる。そのため「皮膚は露出した脳」、あるいは「第2の脳」といわれ、皮膚への刺激が脳へ及ぼす影響は非常に大きいことがわかってきた。

〇スキンシップが大事な理由。

 

第10章 身体心理学の発展

・身体心理学では人間を考える時、その存在は進化の過程によって生じたものと考える。

・「身体心理学」は”Embodied Psycology”と英訳する。

 

第11章 精神に潜む身体

・触覚に関する実験として、柔らかいものに触れた者と硬いものに触れた者について、人物の社会性を評価したり、対立する意見に対する態度を評定した結果、柔らかいものに触れた者の方が、人物の社会性を高く評価し、対立した意見を受容する傾向が高くなることが示されている。

〇グループワークのボールが柔らかい理由とつながります。

・増田・菅村(2014)は、椅子に座って足が床に着く被験者(着群)と宙ぶらりんになる被験者(不着群)について、身体感覚や気分の違いについて調べた。その結果、着群は快、リラックス、安定、実感の感覚があり、気分は落ち着き、自信が不着群より高かった。

〇地に足がつく、浮足立つ。

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