ことばにできない想いを伝える
ことばにできない想いを伝える
マイルズ・L・パターソン
〇1994に出版された「非言語コミュニケーションの基礎理論」よりも一般向けに書かれていて、読み物としても楽しく読めます。
第1章 非言語コミュニケーションの特質と領域
・非言語コミュニケーションは、「物理的環境、身体、非言語行動を通じて行われる、情報の送受信」と明確に定義できます。
・私たちは周りにある何かを用いて常に合図を送っており、また、同様に他人の合図を解読しているのです。
〇非言語コミュニケーションの受発信をしている、と意識することは大事です。
第3章 非言語コミュニケーションの構成要素とパターン
・ペルの研究グループの実験では、スペイン語しか話せないアルゼンチンの実験参加者に、ドイツ語、英語、アラビア語の感情的な発話とスペイン語の無意味な発話を聴かせました。(中略)実験参加者はスペイン語の無意味な発話を聴いて、正確に感情(怒り、嫌悪、恐れ、悲しみ、喜び)を判断することができました。しかし、実験参加者は他の言語を聴いた時でも、そこから正確に感情を判断することができたのです。
〇音楽は国境を超える、というのはこれなんでしょう。音で感情が共有できるということ。
・人なつっこいセールスマンは、その行動から感じるほど本当は好意的ではないことを、私たち皆が知っています。ところが、私たちのほとんどがこの、そこそこ高い関与によって影響されてしまうのです。
第4章 基本的決定因
・通常、私たちが社会的状況にいる時は他人に注目しているので、社会的伝染も起こりやすいと言えます。言い換えると、私たちはしばしば、周囲にいる人々の行動を無意識に真似しているのです。
〇類は友を呼ぶ、郷に入れば郷に従えなど。
・デュシェンヌ・スマイルとして知られる心の底からの笑顔は、笑顔のタイプを区別した先駆的研究者にちなんで名づけられています。
〇目が笑っていないのは本当の笑顔ではない、と。でも、「あなたと仲良くなりたいから」、わざと口角を上げているのは認めてほしいですね。
第5章 情報の提供
・私たちが他人について判断する場合、たいてい無意識に行っており、効率性も高いのです。私たちがそれを好むと好まざるとにかかわらず、いったん無意識的な判断が生じると、その判断は私たちの他人に対する考えや反応の仕方に影響を及ぼします。
・他人の行動をごくわずか観察することで、私たちはその人について多くを知ることができます。これら「行動の薄切り(一瞬の間だけ切り取られた行動)」は、数秒間から数分間までさまざまですが、そのわずかの観察によって、他人に対し正確な判断を下すことができます。
・会話中の一方が姿勢を変え、もう一方がすぐに真似をすることがあります。コミュニケーション中にこれが頻繁に起きますと、通常、模倣された人は模倣した人への好意を強めます。同じことが表情表出でも起きます。
〇ミラーリングとミミクリ。好きな人の真似は心地よいのでしょう。
第6章 相互作用の調整
・社会学者のアービング・ゴッフマンは、異なる相互作用の重要な違いを述べています。まず、私たちの普通の相互作用は、いわゆる「焦点の定まった相互作用(focusd interaction)です。(中略)ゴッフマンは、「焦点の定まらない相互作用(unfocusd interaction)」についても言っています。これは、お互いに話をする気はないのに、お互いの存在に影響を受けている人々がいる状況です。
・焦点の定まらない相互作用の研究は、色々な文化内の個人や広範な社会組織を理解するための独特な観点を提示してくれます。
〇礼儀というものが文化の違いに表れます。
・話し手と聞き手の非言語コミュニケーションは、話の内容に彩りを添えるのです。
・ジェスチャーは発話するときに、ある役割を果たしています。特に特定の単語や句を思い出せないときに、明らかになります。発話と緊密に結びついているジェスチャーは、語彙的ジェスチャー(lexical gesture)として知られています。
・話し手にジェスチャーをしないように指示すると、面白いことにスピーチがぎこちなくなり、休止や言い間違いが多くなります。
〇身振り手振りになれていると、これはきついかも。
・一般的に聞き手は、話し手が聞き手を見るより多く話し手を見ます。聞き手の注目は重要です。なぜなら、メッセージの一部は、話し手の表情のような非言語行動で伝えられるからです。
・権力の違いがはっきりとしている人々の場合は、高い地位の人が話すときの視線のパターンは、一般的なパターンとは逆になります。
〇権力を誇示するような人にはなりたくなりませんね。気を付けないと、言葉が丁寧でも、非言語が体から漏出します。
第8章 対人影響力
・一般的に、表出を多くする人、特に好意的な反応をする人は、表出が少ない人よりも好ましいと判断されます。
・フリットルンドの行動生態学理論では、表出は将来の行動に関する意図を伝えるといわれています。(中略)対照的に人々の表出行動にほとんど変化がないと、私たちは彼らを理解することが難しく、彼らがこれからどう行動するのかを予測することも難しくなります。
〇笑顔は「あなたと仲良くなりたい」というサイン。
・魅力に及ぼす模倣の効果は、相手の好意的な表出を真似るだけにとどまりません。行動模倣は着席位置や姿勢の調整、手や足の動きにも見られます。互いに好意を抱くと、行動模倣は自然に増加します。また模倣は好意を高めるためにも意図的に行われます。
・非言語的影響力は、フィードバックと強化を提供します。対面相互作用では、同意や不同意の明確な反応はしばしば非言語チャネルで示されます。
・多くの研究結果は、偶発的な非言語的強化がテストの得点を伸ばすことを報告しています。(中略)温かく表出的な教師は、快適で安全な学習環境を築くのに一役買っているのです。
〇怒ってばっかりいる教師よりは温かい先生の方が良いですよね。でも、先生も大変です。
・言語メッセージと非言語メッセージが一致しない場合には、非言語メッセージが通常、判断を下す際に重視されます。
・非言語メッセージを読み取り、その後の会話を調整することは、相手側の責任です。
〇これができる人と苦手な人がいます。まずは非言語メッセージの受発信を意識することがやはり大事です。
第9章 印象操作
・印象操作は、他人に望み通りの印象を容易に与え、特別なイメージやアイディアを作り出す非言語表出を含んでいます。同様に、他人に特定の印象やイメージを抱かせることは、望み通りの目標を達成するための手段になります。
・社会的行動に対するゴッフマンのアプローチは、”演技的(dramaturgical)アプローチ”として説明できます。(中略)ゴッフマンはシェイクスピアのように、私たちが皆ステージ上の役者である、つまり私たちは周りの聴衆のために演じていると考えたのです。
〇人間関係は、演じることで円滑になるというのは結構ありますね。
・ある行動パターンはある人には好意的な印象を与え、別の人にはとても否定的な印象を与える場合があります。
〇相手を見極めること。研修でお伝えしている「4つのタイプ論」は有効です。
第10章 システムズ・アプローチ
・非言語コミュニケーションのやり取りの大部分は、自動的に行われています。自動的な行動パターンや社会的判断は、適応的でとても効率的です。
・自らの行動を意識的に管理し、他人が形成する印象のことを考えすぎると、コミュニケーションはうまくいかなくなることが、先行研究の知見から報告されています。
〇非言語コミュニケーションの受発信を意識することが重要ですが、バランスも大事ということですね。考えすぎないこと。
・ある行動を見ると、それと同じ行動を生じさせるミラーニューロンが活性化することで、模倣が促進されるのです。
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