非言語行動の心理学~対人関係とコミュニケーションの理解のために~

非言語行動の心理学

ヴァージニア・P・リッチモンド、ジェイムズ・C・マクロスキー

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【1章 コミュニケーションと非言語行動】

・ヒューマンコミュニケーション(human communication)とは、ある人が言語(verbal)・非言語(nonverbal)メッセージによって他者(や人々)の心に意味を生じさせるプロセスである。(中略)本書での焦点は、ヒューマンコミュニケーションにおけるメッセージとしての非言語行動の役割にある。

『1 非言語コミュニケーションについての俗説』

・非言語的要素は、ヒューマンコミュニケーションの研究史において、ずっと無視されてきた(Andersen,
1999; Ruesch&Kees,1971)。

1.「非言語コミュニケーションは無意味である。すべてのコミュニケーションは言語を必要とする。ゆえに、すべてのコミュニケーションは言語によるものである」。これは主として、言語に注意を集中し、言語とコミュニケーションと言う用語が、実質的に交換可能であると考える人々がいだく伝統的な俗説である。

○言葉だけでコミュニケーションを取っているつもりでも、常に非言語メッセージはついて回ります。

2.「非言語行動は人間の相互作用におけるほとんどのコミュニケーションを明らかにする」。この俗説は、俗説1の虚偽に対する過剰反応のひとつである。実験室環境とフィールド環境の両方で実施された、非言語コミュニケーションに関する初期の研究は、伝達される意味が変わるかどうかは言語メッセージではなく、大部分、非言語メッセージの働きによることを示した。最終的に、この研究は伝統的俗説が偽りであることを示すが、後に多くの研究者たちがこれを過剰解釈した。伝達されるすべての意味の65~93%が非言語的要素に起因すると結論づけるために、著作者達の多くが共通して、この初期の研究を引用している(Birdwhistell,1970;Mehrabian & Ferris,1967;Mehrabian & Weiner,1967;Philpot,1983)。(中略)しかしながら、これらの初期の研究は俗説1が正確ではないと証明するために、特別に計画されたものであり、研究された相互作用が人間のすべての相互作用の典型だと仮定できないということが、一般的に無視されている。だから、ほとんどの人間の相互作用においては、言語要素と非言語要素の両方がとても重要であり、通常、伝えられる意味はどちらか一方の要素にだけではなく、2つの要素の相互作用に依存するのである。

○長々と引用してしまいましたが、ここは重要だと思います。自分たちの都合のいいように「過剰解釈」することに対する批判は必要だなと。非言語コミュニケーションは大事だけど、それだけじゃ思いは伝わりません。やはり言葉も必要です。

3.「本のように人の心を読むことができる」。これは通俗書の題名になることの他に、非言語コミュニケーションを一度も学んだ経験のない人びとによって持たれる俗説である。(中略)大人が笑うと、その人は喜んでいるのかもしれないし、怒りや憎しみを隠しているのかもしれない。自分の責任で読み取れ!

4.「相手があなたの目を見て話していないならば、その人はあなたに真実を話していない」。これは俗説3の変形であり、われわれすべてが子どもの時に学んだ非言語行動についての俗説全体を代表するものである。(中略)優れた詐欺師は、あなたからお金を巻き上げようとしている間、常にあなたの目を見ているものだ!

○「読み取れ!」「見ているものだ!」。ここ、原著はどうなっているんだろう(笑)

5.「非言語行動は人によって異なるが、たいていの非言語行動はすべての人びとにとって、自然なものである」。この俗説は、言葉で表されると受けいれる人は少ないが、われわれのほとんどのすべてが、まるでそう信じているかのように行動する俗説である。

○異文化、男女、年齢差、倫理観。そして意識的か無意識的か。

6.「異なった状況でも、非言語行動は同じ意味を生じさせる」。この俗説は、非言語行動がそれ自体で意味があるということを仮定するものである。(中略)非言語行動に依拠して、コミュニケーションを説明しようと試みる際には、常に文脈が考慮されなければならない。

『2 非言語メッセージと言語メッセージ』

・ヒューマンコミュニケーション研究に関連する、ほぼ5千年の記録された歴史を通じて、コミュニケーションについての研究と教授は、言語メッセージに集中していた。18世紀になってようやく、コミュニケーション研究者たちが非言語行動の役割に真剣な注意を向け始めた。

<言語学的な区分>

・言語メッセージは、明らかにランゲージ(language)に依存するが、非言語メッセージは必ずしもランゲージの存在に依存しない。これは、非言語コミュニケーションとはたんに「言葉なしのコミュニケーション」であるという考えへと人を導く。

・現在、さまざまな文化(例:ギリシャ、イタリア、アメリカ、日本)に対する書籍がたくさん存在する。(中略)大抵の言語メッセージはランゲージに依存しており、一方、非言語メッセージの多くはそうではないということを理解するのに役立つ。

<連続性による区分>

・言語メッセージは非連続である。(中略)非言語メッセージは連続である。

・実際、個々の非言語メッセージは停止する。(中略)しかしながら、非言語メッセージをジェスチャー、音声、接触などの別個のメッセージとしてではなく、同時に起こるメッセージのまとまりと考えるのが一番良い。

<処理による区分>

・処理による区分は研究者たちが期待していたほどうまくいかない。神経生理学的研究の進歩により、将来、われわれが処理の領域で重要な区分を発見するという見込みはあるが、そのような発見はいまだになされていない。

<結果としての区分>

・言語メッセージは、主として、内容や認知機能を供給する。非言語メッセージは、主として、感情的、関係的あるいは情動的機能を供給する。

・聞き手がメッセージ全体を受け取り、その背後にある意味を理解する上で、コミュニケーションの非言語的構成要素と言語的構成要素の両方が必要とされることが多いのである。

<絶対的な区分>

・一般的に、言語メッセージには、明示的な意図や意味がある。非言語メッセージは暗黙的で、不確かな意味を伝えることがよくある。

『3 意図性と非言語コミュニケーション』

・本書では、非言語行動と非言語コミュニケーションという用語を使用しているが、ここまでは、とくにそれらを区別してこなかった。

・われわれは自分ひとりだけの時に顔を掻くという非言語行動を行うことができる。たとえば、もしだれかがいる時にそれをし、その人が掻くという行為をメッセージとして解釈し、それをわれわれが神経質だということを示すものとして解釈するとすれば、たとえそうしていたことに気づいていないとしても、われわれは非言語コミュニケーションを行っている。

・ヒューマンコミュニケーションが存在するには、言語・非言語にかかわらず、送り手がメッセージを送り、受け手がそのメッセージを受け取り、解釈しなければならない。

・人は自分の行動が潜在的に他者へのメッセージになるなど考えずに行動することが多い。たとえば、ある人は会議に数分遅れて行き、それを何とも思わないかもしれない。しかし、会議に参加している他の人たちは、この非言語行動を自分たちへの敬意の欠如や会議への無関心を示すものとして解釈するかもしれない。

○これは怖いです。意図していないことで評判を落とす。

『4 文化と非言語コミュニケーション』

・ある文化における特定の非言語行動は、その文化では強いメッセージを送るかもしれないが、他の文化ではメッセージとして影響力がほとんどない、もしくはまったくないということがある。(中略)同一の行動が2つの異なる文化でまったく正反対の意味を生むかもしれない。

『5 非言語メッセージの機能』

・言語・非言語メッセージのどちらが支配的であるかは状況に依存する。

・コミュニケーションにおける言語メッセージと関連づけて、非言語メッセージの6つの主要な機能を調べることは有益である。このような分析により、言語・非言語メッセージがいかに相互に関係しているかが明らかになるだろう。これら6つの機能とは、補完、矛盾、強調、反復、調節、置換である。

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①補完(complementing)

・非言語メッセージが随伴する言語メッセージと一致するもの。言語メッセージを補完する非言語メッセージは、言語メッセージの意味を強化し、明確化し、詳細化し、精緻化し、説明したりする。

②矛盾(contradicting)

・言語メッセージを補完する代わりに、言語メッセージと矛盾したり、争ったり、対立したりする非言語メッセージがある。(中略)人は言語メッセージと非言語メッセージが対立する場合、圧倒的に非言語メッセージを信じる傾向にある。

・人は自分の言いたいことを述べるために、皮肉を使うことがよくある。(中略)皮肉を相手に理解させたいなら、確実に非言語メッセージと言語メッセージを矛盾させなければならない。時には、大人でも、矛盾に気づきそこなうことがあり、その場合には、皮肉が通じない。

○皮肉を言うのはあまりススメられませんし、聞きたくもないですが、皮肉にも気づかないような厚顔無恥にはなりたくないものです。

③強調(accenting)

・非言語メッセージは言語メッセージを強調したり、誇張したり、力説したり、目立たせたりするのにも使われる。
(中略)逆に、言語メッセージを淡々と話すことで、強調しないようにすることができる。そのように話されると、人はそれが大事ではないと考え、すぐ忘れる傾向にある。

○覚えていてほしいのに、淡々としかしゃべれないのはもったいない。

④反復(repeating)

・「タコス2つ」と言いながら、同時に指を2本立てるだろう。この場合は、非言語が言語を反復している。

⑤調節(regulating)

・調節的非言語メッセージには、相手を見たり、視線をそらせたり、自分がまだ話し終わっていないことを表わすためにポーズの間に指をあげること、声の抑揚を上げ下げすることなどがある。

⑥置換(substituting)

・置換は非言語メッセージが言語メッセージの代わりに送られる場合に起こる。他者に手を振ったり、手招きをしたりすることが一般的な例である。(中略)いかなる言語メッセージも送らないことで、相手に怒っているということをわからせることがよくある。

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・これらの6つの機能は、常に独立して起こるわけではない。補完、反復、強調は、同時に起こることがありうる。

・ほとんどの場合、言語メッセージは主として、内容の機能を果たすのに対して、非言語メッセージは主として、感情的、関係的な機能を果たす。(中略)この関係的、感情的、情動的な意味は、非言語的接近性(nonverbal immediacy)と呼ばれることがある。ある人が他者に非言語的に接近する時その他者はしばしば物理的あるいは心理的な親密感を持つ。

○親密だからこそ、接近できる。裏を返すと、近づけば親密になれる。でも、タイミングや適度さも重要。

『6 非言語メッセージの分類』

・本書の構造は、概要として、以下のようにまとめられる。

<外見的特徴(physical appearance)>

・出会った人に送る最初のメッセージは、われわれの外見的特徴によって伝えられる。

<ジェスチャーと動作(gesture and movement)>

・ジェスチャーや身体動作に関するコミュニケーション面からの研究は、動作学(kinesics)として知られている(Birdwhistell,1970)。

<表情と視線行動(facial and eye behavior)>

・視線行動のコミュニケーション面からの研究は、視線学(oculesics)として知られている。

<音声行動(vocal behavior)>

・音声のコミュニケーション面からの研究は、音調学(vocalics)や周辺言語(paralanguage)の研究として知られている。

<空間(space)>

・空間のコミュニケーション面からの研究は、近接学(proxemics)として知られている。

<接触(touch)>

・接触のコミュニケーション面からの研究は、触覚学(haptics)として知られている。

【2章 外見的特徴】

・外見的特徴に基づいた非言語メッセージは、他者から受け取る、他の非言語メッセージと同じくらい重要であると考えられる。

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1.一般的に、外見に基づいたメッセージは、最初に受け取られる。
2.これらの外見メッセージは、最初に、その人と話をするかしないかという意欲に、大きな影響を与える。
3.これらの外見メッセージは、どのように関係を進展するかしないかに、大きな影響を与える。
4.これらの外見メッセージは、他者についての初期判断を行うために、使用されることがよくある。
5.他者についてなされた初期判断は、その人を代表したり、しなかったりする。

○第一印象が肝心。「人は見た目じゃない」とも言いますが、身だしなみは相手への敬意の象徴です。

『1 魅力』

・だれかがだれかを魅力的だという時、彼らは何を意味しているのか?人々は魅力と呼ばれる何かを持っているのか?(中略)魅力的であるかどうかは、見る人によって決まる(Berscheid & Walster,1969,1971,1972,1978;Cash & Janda,1984; Dion,Berscheid & Walster,1972;Feingold,1992;Lewis & Bierly,1990;McCroskey &Richmond,1996;McCroskey,Wrench & Richmond,2003;Mottet & Richmond,2002;Richmond,2002;Richmond & Hickson,III,2002,Richmond & McCroskey,2000;Stone,Singletary & Richmond,1999;Walster, Aronson,Abrahams & Rohmann,1966)。

<魅力のタイプ>

・人間関係が発展する初期段階では、性格は重視されず、美しさと外見が重視される(Bixler & Nix-Rice,1997;Heilman & Stopeck,1985;Morris,1985;Richmond,1996;Sabatelli & Rubin,1986,WalsterAronson,,Abrahams & Rohmann,1966;Widgery & Ruch,1981)。

・マクロスキーとマケイン(McCroskey & McCain,1974)は、魅力には異なる3つのタイプがあると指摘した。

・身体的魅力(physical attractiveness)である。このタイプの魅力は、われわれが他者を、その人の身体的属性から魅力的であると認識する度合に関係する。

・魅力の第2のタイプは、社会的魅力(social attractiveness)である。社会的魅力とは、他者を、兄弟のように親しく交わり、仲間になり、社交的に交際したい人として認識する度合のことである。

・魅力の最後のタイプは、職業的魅力(task attractiveness)である。これは他者を、一緒に働き仕事を行う人、若しくは同僚やチームメイトにしたい人として認識する度合のことである。

・商店街の道を尋ねるために、平均的で、格好の良い人に近づくだろうか、それとも汗まみれで、くさい、赤ら顔の、器量の悪い人に近づくだろうか?ほぼ間違いなく、2人のうち、より魅力的な人のほうへ接近するだろう。

<今日、魅力的であることが明日には違うかもしれない>

・だれを、もしくは何を魅力的であると考えるかは、現在の傾向と同様に、文化的かつ歴史的影響に大きく依存する(Gudykunst & Kim,1992;Hall,1984)。

<判断の形成>

・より魅力的であると判断される人々は、多くの点で、社会的に望ましい人物だと判断されることがよくある。(中略)つまりアメリカ文化では、魅力的な人物はそうでない人と比べると、一般的に、ものごとがうまく運ぶ(Dion,Berscheid & Walster,1972;Feiman & Gill,1978;Hickson & Stacks,1993;Mehrabian,1971a;Raiscot,1983;Schlenker,1980;Shriver,2002;Tanke,1982)

【3章 ジェスチャーと動作】

・ジェスチャーと身体動作は、人の言葉の裏側にある本当の気持をしばしば伝えることがある。ジェスチャーがどのように解釈されるのかというのは、しばしばそのジェスチャーや身体動作を使う状況によって、決定される。

『1 ジェスチャーと動作の理論的考察』

・身体動作が他者に対して多くを物語っていることを、われわれはいつも直感的にに知っている。

・動作学に関する2つの一般的なアプローチがあり、1番目は構造上(structural)からのアプローチ、2番めは外部変数(external variable)からのアプローチである。

<動作学への構造上からのアプローチ>

・バードウィステル(Birdwhistell,1952,1970)は、構造上からのアプローチを行った最も有名な著者の一人である。彼は、行動が起こる状況は非常に重要であるが、しかしながら、この行動は言語としての多くの基準を満たしているように見える、と信じている。言い換えると、行動には根本的な構造が存在し、ルールシステムの発見が可能なのである。(中略)バードウィステルは言語と非言語を区別することを無意味だと考えた。彼の動作に対する言語学的なアプローチは、今日広く知られるところであり、よく討論されてきた。

・ディットマン(Dittmann,1971)は、バードウィステルの動作学へのアプローチに対する有名な批評家であり、われわれが言語で行うような処理を非言語行動に対しても行うことができるという確信を却下した。

・ディットマンとほかの批評者は、バードウィステルの提案した身ぶりと身体動作がたいせつな情報源であるという点には、強く同意した。彼らは言語と非言語行動が区別なく構成できるという部分に対して、異を唱えたのである。

○バードウィステルさんの功績は色あせません。

<動作学への外部変数からのアプローチ>

・他のほとんどの研究者は、バードウィステルとは異なる、外部変数からのアプローチを身体動作の研究に関して使用している。エックマン(Ekman,1976)は、この件における最も有名なひとりである。

・社会的な対話が彼らに要求している非言語的な行動の機能となる、ふるまいの基本ユニットを考察することに関心がある、とエックマンとフリーセン(Ekman & Friesen,1969a,1969b)はしばしば明言した。エックマンとフリーセンは、人のジェスチャーや動作の分類は、どのような観察者でも容易に見ることが可能な動きに基づくべきであると述べている。

・エックマンとフリーセンの研究と考察によって考案された、ジェスチャーと動作の分類システムは、最も一般的に容認されている。

『2 ジェスチャーと動作のタイプ』

・人間の身ぶりおよび動作は、エンブレム(emblem)、例示的動作(illustrator)、調整的動作(regulator)、情動表出(affected display)、適応的動作(adaptor)、という5種類に分類されるだろう。(Ekman,1976;Ekman & Friesen,1969a,1969b,1972,1974;Scherer & Ekman,1982)

<エンブレム>

・エンブレムは会話から独立したジェスチャーであるとしばしば言われる。ジェスチャーはエンブレムとして分類される以前に、いくつかの特色がある。

・エンブレムは、言語を直接的に換言したジェスチャーや動作である。

・エンブレムの使用者はみずからの行為に気づいており、動作やジェスチャーをコントロールしている。発信者は本質的にメッセージを送った責任を負う。

エンブレムは多くの場合において、言葉を話す代わりに使うことが可能である。

・エンブレムはそれ自体が非常に言語に似ている。

・エンブレムは言葉と同じように、異なる文化の人々にとっては、まったく異なった意味があるかもしれないし、反対にまったく意味がないかもしれない。

・「A-OK」のサインは、アメリカ文化では、肯定的に見られるが、ほかの文化ではわいせつなジェスチャー、金銭のシンボル、または意味がないと見られる。

・スマイルだけが例外であるが、それ以外には世界的に普遍なジェスチャーというのは、ほとんどない。要約すると、ジェスチャーの大部分は、状況や文化の範囲内でのみ解釈されるべきである。

○『スマイル」だけは各文化に共通。類人猿の時代から。→「人間が示す正直シグナルは、この四つだけではない。たとえば、ロバート・プロヴァインは、笑いがミミクリと似た、大昔からのシグナルであることを示した。誰かが笑うと、その笑いをまねる反射作用は自動的なので、たとえ、笑うのがふさわしくないときにさえ、笑わないのが難しいことが多い。」正直シグナル

<例示的動作>(イラストレーター)

・話し言葉に密接に関連し、発話している内容の説明を支援するジェスチャーや動作は、例示的動作と呼ばれている。(中略)例示的動作とは、発話をともなわなければわずかな意味、若しくは無意味なものでしかない。

○「こんなに大きかったよ!」と手を広げたり、「おいしくなかった!」と舌を出したり、「大事なことを3つ言います」と言って指を折ったり、会話を始める時に目を見たり。

<調整的動作>(レギュレーター)

・調整的動作とは、ジェスチャーや身体動作であり、目や言葉の合図と同時に行ない、対話の維持や、話し手と聞き手の間で行き来する対話を調整するものである。(中略)この他者との会話を調整・調節するふるまいを、われわれが意識することはまれである。

・コミュニケーションでのターン取得を管理することは、調整的動作のおもな機能である。それはわれわれが会話を行う間、話し手と聞き手の役割を交換するために必要なものである。コミュニケーションのターン取得行動(turn-taking behavior)とは、話し手が話を続けることや、話のターンを譲渡すること、また聞き手が話のターンを要求することや、話の誘いを辞退することと分類される(Duncan,1972,1974)。

○「話したいよ~」という非言語メッセージをしっかりと受け止める、意識するにことにより、良き聞き手になれますね。

<情動表出>(アフェクト・ディスプレイ)

・これらの合図はおもに顔の表情であるが、感情の状態や気分に関する情報を導くポスチャー、歩き方、四肢の動作、他の行動も含まれる。

・多くの人々は、実際に感じていない感情を描写することもできる。他人に気づかせることが不適切な場合、多くの人々にとって彼らが感じている感情の表現を抑制することも、同様に可能である。しかしながら、通常は、本当の感情の状態を暴露するような行動は故意ではない。(中略)われわれが恐怖や不安を経験している時には、膝の震えを感じ、手が震えることがあるが、それを制御することはしばしば不可能である。

○恐怖は確かに制御は難しいですね。

<適応的動作>(アダプター)

・適応的動作は本当に何気なく行っている行動であり、通例は倦怠やストレスの反応で、自分自身や他者に対する否定的感情に非常に密接な関係がある。(中略)何人かの著者によると適応的動作とは、かつて、肉体や感情のニーズ、道具的行動の学習によるニーズに対処した、われわれの努力の一部だった。(中略)それは後に自動的に、癖となる行為として描写できる。

○「努力の一部」。涙ぐましいものがありますが、それを克服したからこその「癖」なんでしょうか。

『3 欺瞞の手がかり』

・魅力的な人々は、魅力的でない人に比べ、真実ではないものをより他人に納得させそうである。(中略)醜い詐欺師の成功例はほとんどない。

・欺瞞を識別することは困難である。よからぬ情動表出をしているからこの人は嘘つきだとか、正直な情動表出をしているからあの人は真実を語っている、といううぬぼれをわれわれは警戒すべきである。

・人々はあなたに嘘をつくだろうが、あなたはだれが嘘をついているのかを知る方法を持たないだろう。非言語行動のエキスパートになり、誤った安心感を得ることは可能であるが、それはあなたを護らないだろう(DePaulo,1988;DePaulo & Kirkendol,1988;Goleman,1999,McCroskey & Richmond,1996b;Rosenfeld,1966a,1966b,1982)。

・社会的な小さな嘘は、家族、友人、仕事上関係ある人の中で発生する。(中略)ほとんどの社会的な嘘は礼儀正しさの一部であり、一般的には無害で意味のないものである(DePaulo,1988;Goffman,1959,1967;Hall,1996,1998)。

○若い頃、悪い嘘をつく人を「嘘つき」、良い嘘?をつく人を『嘘使い」と言っていたことを思い出しました。

『4 ポスチャー』

○情動表出(アフェクト・ディスプレイ)の一部。

<ポスチャーはどのように伝達するのか?>

・身体動作とジェスチャーの主要な著者であるメラビアン(Mehrabian,1969a,1969b,1971,1972,1981)は、ポスチャーにはおもに2つの次元があると仮定した。(中略)1番目の次元は、接近性(immediacy)と呼ばれている。(中略)接近的な態度のポスチャーによるふるまいというのは、正面向きの体、対称なポジショニング、前屈姿勢で表されるものが含まれる。(Richmond,2002a)。

・2番めの次元は、緩和(relaxation)と呼ばれている。緩和によるリラックスしたふるまいとは、後反姿勢、手足の緊張の緩和、非対称なポジショニングを含む。

・メラビアンの成果による基本的な考えでは、われわれは肯定的な態度に沿い、親密性と緩和によるポスチャーのポジションを示すことによって、開放的・自発的な意思疎通が可能であるということである。一方、われわれのポスチャーは他者を閉ざし、コミュニケーションを遮断することも可能である。コミュニケート性のないポスチャーの合図は、視界を縮小して、対人距離が長くなり落胆した対話をする傾向がある。

・動作学の分野でシェフレン(Scheflen,1964)は、注目に値するもうひとりの著者兼研究者であり、われわれは多くの方法で、ポスチャーによる意思伝達が可能であると強く主張している。

<適合-不適合>

・2人のポスチャーが適合している状態ならば、同意、対等、互いに好み合っていることのシグナルであろう

・地位の高い個人はリラックスして、相手の方を向かず、後反姿勢であり、非対称的な手足のポジションを示す。地位の低い個人は通例、改まったポスチャーを示し、相手の方を向き、前傾姿勢であり、筋肉は緊張し、直立した脊椎を維持する。

○そのとおりだと思いますが、「相手の方を向かず」な地位の高い人とは付き合いたくありません。地位の高い人でも、尊敬できる人は、こちらを向きます。

『5 動作とコミュニケータースタイル』

・ノートン(Norton,1983)は、コミュニケーターのスタイルの違いに関する包括的な本を出版した。(中略)ノートンが提案したおもなコミュニケーターのタイプは、ドラマティック(dramatic)、支配的(dominant)、生き生きとした(animated)、くつろぎ(relaxed)、傾聴(attentive)、オープン(open)、フレンドリー(friendly)、論争(contentious)、印象を残す(impression-leaveg)スタイルである。

<ドラマティックスタイル>

・ドラマティックに表現するというのは、すべてのコミュニケータースタイルの中で、最も物理的に目立つ方法である。(中略)一般的に広い範囲に及ぶ例示的動作のふるまいを頼りにしている。(ドラマティックコミュニケータースタイルが、人気や魅力、地位の認識を高めることがしばしばある。

<支配的スタイル>

・支配的コミュニケーターは、聞き手を圧倒するために、非言語の合図を用いる。何人かの著者は、支配的すぎるスタイルとして、大きな杖で聞き手を叩き、聞き手に服従のポスチャーを取らせることにたとえている。空間を占めるように膨張した身体のポスチャーと動作は、しばしば支配に関係する。(中略)研究によると、支配的コミュニケーターは、より断定的で、うぬぼれ、自信があり、競争的で、荒々しく、能動的で、熱狂的な人物であると認識されている。

<生き生きとしたスタイル>

・生き生きとしたコミュニケーターは話をしている間、大げさな体の動きとジェスチャーを活動的に行なう。(中略)頭部のうなずきを頻繁に繰り返し、たびたびほほえむことは、このスタイルとともに一般的に用いられている。シェフレン(Scheflen,1964)の初期の研究では、本質的に、求愛行動やデートなどに浸透している、洒落た身づくろいと親密なポジショニングが、生き生きとした行動であると示唆された。

<くつろぎスタイル>

・くつろぎのコミュニケーターは、心配が生じるような状態でも、集中力を残し、内面的に穏やかであるように見える。その人はポスチャー、動作、ジェスチャーで、くつろぎを表わす。(中略)くつろぎスタイルのコミュニケーターは、静穏、平穏、平和、信頼を寄せることが可能で、快適さを伝えるとされている。

<傾聴スタイル>

・傾聴スタイルのコミュニケーターは、話をするというスタイルよりも、聴き、他者からメッセージを受け取るスタイルとしてより十分に特徴づけられる。(中略)ノートンはこの傾聴スタイルを、支配的スタイルやドラマティックスタイルの逆の関係として主張する。傾聴スタイルは、以前学んだ接近性のポスチャーとしてより特徴づけられ、同意を示すうなづき、相手の方を向きジェスチャーを使うことは、相手の話者に話を続けさせようと励ます。これらは興味と思いやりのシグナルとなる合図でもある。

<オープンスタイル>

・ノートンは、オープンコミュニケーターは余裕のある、遠慮のない、外向型で、積極思考の肉体的な活発さを用いると主張している。オープンスタイルコミュニケーターが用いるふるまいのおもな機能は、各々に対して、彼らは開放的で自由なコミュニケートが可能であるというシグナルを発することである。

<フレンドリースタイル>

・フレンドリースタイルの範囲は、深い親密性から、敵意の不在にまで及ぶとノートンは言う。(中略)このスタイルは傾聴スタイル、オープンスタイルと密接した関連がある。距離を縮小させ近づくようなことに仕える身体動作、前傾姿勢、ほかの接近性の行動はフレンドリースタイルを作る助けになるだろう。

<論争スタイル>

このスタイルは支配的スタイルに似ているが、より好戦的な支配、とみなされるかもしれない。このスタイルを示す人は議論好きである。腕を振る量は多く、前傾姿勢で断定的なトーンの声をともなうだろう。

<印象を残すスタイル>

・これは種々のコミュニケータースタイルの中でも、最も研究されていないものであり、たんにほかのスタイルのコンビネーションであると思われる。

『6 一般的なコミュニケータースタイル』

・コミュニケータースタイルには、一般的に3つの次元があり、それぞれ断定性(assertiveness)、応答性(responsiveness)、汎用性(versatility)に相当する(McCroskey & Richmond,1996)。

・断定性スタイルは、ドラマティック、支配的、生き生きとした、論争スタイルのコンビネーションである。

・応答スタイルは、オープン、傾聴、くつろぎ、フレンドリースタイルのコンビネーションである。

・3番目の一般的なコミュニケーション次元は汎用性である。高度な汎用性コミュニケーターは、他者に応じてコミュニケーションのふるまいを適応させる。(中略)このスタイルの表現が可能な人は、ノートンによって記述されたほとんどすべてのスタイルにおいて、意図的にレベルを上げ下げして表現する。疑いもなく、このスタイルを用いる人は、相当に高いコミュニケーション能力を持っていることになる。

○支配的スタイルを嫌味なく使いこなすのは結構難しいでしょう。

【4章 表情行動】

・非言語についての理論家たちは、表情研究が『感情それ自身」の研究であると暗示する(Darwin,1872;Tomkins,1962;Tomkins & McCarter,1964)。(中略)われわれは訓練をすれば、顔のねじれと感情表現の名人であるジム・キャリーそっくりに、百面相を作ることができるだろう。

○訓練すれば、確かに。まずその前に、はずかしさを克服できるかどうかのハードルがありますが(苦笑)。

『1 表情の重要性』

・非言語コミュニケーションにおける顔や目の役割に関して、明確な展望を明らかにするために、ほかの研究者たちが提出した展望のいくつかを検討することが有益である。

『2 獲得と発達に関する展望』

・表情が生得的か学習的か(あるいは両方か)という議論は、今に始まったことではない。

<展望1:進化と自然淘汰>

・進化論や種の起源で最も有名なチャールズ・H・ダーウィン(Charles H Darwin,1872)は、動物の表情にかなりの興味を持っていた。彼は表現に富む表情行動が、生存するうえで絶対必要なメカニズムであるので、他の身体的特徴と同様に進化してきたと信じていた。

・表情行動の研究者であるアイブル=アイベスフェルト(Eibl-Eibesfeldt,1970,1972)は、表情は生得的であるという立場を取る。彼の主張の多くは、聴覚と視覚の両方に障害を持って生まれた子どもの観察に基づいている。

・基本的な表情のいくつかは、気分や気持ちと生得的に結ばれている。それらは進化の過程で、生得的にもたらされたものなのであり、一般的に、アメリカ先住民、南アメリカ人、北アメリカ人、ヨーロッパ人、アジア人であろうが、普遍的である。

<展望2:外的要因>

・研究の多くは生得的見解を支持し、また多くの基本的表情はさまざまな文化で同じように解読されるが、おそらく環境や社会規則、文化といった、表情行動の一因となる外的要因が存在する。(中略)子どもは成長するにつれて、ある感情について、どのような表情が適切であるかということを、さまざまな役割モデルによって教えられる(Ekman,1972;Ekman & Friesen,1967)。

○表情の使い所を学ぶ。

<展望3:生得的かつ学習的>

・人は生まれた時点で、一般には、基本的な表現を表出する。人は成長し、発達し、さまざまな相手や状況と接触するにつれて、他者が期待する表情をすることを学習するのである(Newcombe & Lie,1995;Russell & Bullock,1985;Wagner,McDonald & Manstead,1986)。

・ヘーゼルタイン(Haseltine、2002c)は、笑いが気分をよくすることも確かめた。(中略)笑っている時には、より幸福を感じると考えられ、そしてこの幸福が他者に伝えられるかもしれない。

○正直シグナルより
~人間が示す正直シグナルは、この四つだけではない。たとえば、ロバート・プロヴァインは、笑いがミミクリと似た、大昔からのシグナルであることを示した。誰かが笑うと、その笑いをまねる反射作用は自動的なので、たとえ、笑うのがふさわしくないときにさえ、笑わないのが難しいことが多い。~

『3 顔面の管理と感情表出』

・以下では、4つの最も共通した顔面管理技術である、マスキング(masking)、強化(intensification)、中立(neutralization)、弱化(deintensification)(それぞれの頭文字からMINDという)をレビューする(Ekman & Friesen,1969a,1969b,1975)。

<マスキング>

・この技術は、感じられた感情に関係する表情の抑制と、その環境で受容できる表現への置換を必要とする。

・日本人はマスキングの熟練者と考えられることが多い。

○空気を読むということ。

<強化>

・表現の強化は、感じたことを誇張することで達成される、他者の感情表出に対応するために、感じたこと以上に感情を外部に表出しなければならない時がある。

○相手を思いやる気持ちが、「強化」。~ほとんどの社会的な嘘は礼儀正しさの一部であり、一般的には無害で意味のないものである(DePaulo,1988;Goffman,1959,1967;Hall,1996,1998)。~

<中立>

・一見したところ、感情がないように見える人は、中立という顔面管理技術を使っている。

・表情が中立だと、他者はわれわれがどんな感情を経験するか気づかない。

<弱化>

・弱化と呼ばれる状況や社会的事象がある。それは環境が本当はどのくらい感じているのかを控えめに見せるように要求するので、特定感情の表情を弱めることである。

・経営者、指導者、外科医、聖職者などの地位にある人々は、感じたことをそのまま表出すると不適切だと思われる状況に、自分がいると思うことがよくある。(中略)経営者は部内会議で部下の行動に激怒するかもしれない。しかし、その場でそのような感情を表出することは非生産的だと考える。

・本当に有能な伝達者は、どの顔を全面に出すかはコミュニケーション状況で異なることを知っている。感情表出を統制することを学習することは、注意や技術、訓練を要する。

○立派な大人になる、ということでしょうか。

『4 感情表出とコミュニケーション』

・カチキティスら(Katsikitis,Pilowksy & Innes,1990)は、コンピューターで生成された顔の線画が、その線画を作るのに使った写真への反応と同じ反応を見た人に起こすかどうかを調べた。(中略)実験参加者はコンピューターの生成した画像と実際の写真から、感情表現をかなり等しく認識し、解読できる。

【5章 視線行動】

・視線行動(eye behavior)、アイコンタクト(eye contact)、眼球運動(eye movement)の研究は、視線学(oculesics)と呼ばれる。

『1 視線行動の属性と機能』

・かつて、哲学者エマスン(Emerson)は「凝視は話しことばを超越する」と言った。

<視線行動の属性>

・視線行動には、3つの主要な属性がある。第1の属性は、顕著性(salience)である。まっすぐな凝視といった視線行動は、気づかれる可能性が高いので、ふつうは他の身体動作よりもずっと顕著な相互作用シグナルとなる。(中略)一般的に、われわれは人々が凝視に反応することを期待しており、すぐに反応してもらえないとイライラする。

・視線行動の第2の重要な属性は、覚醒刺激(stimulate arousal)に対する驚くべき能力にある。(中略)かかわりたくないだれかの一瞥を感じる時、この覚醒はネガティブなものになる。恋人同士が薄暗いレストランの中で、居心地の良いテーブルを挟んで、お互いに見つめ合う場合には、この覚醒はポジティブなものになるだろう。

・第3の属性は、かかわりあい(involvement)である。(中略)他者とのアイコンタクトは、その人とのかかわりあいを命令すると言っても良い。

<視線行動の機能>

・走査(scanning)は、目の基本的な機能のひとつである。目は周囲の世界の情報を走査し、焦点を合わせ、収集する。

・アイコンタクトは人々の間の物理的距離を減少させる(decrease phisical distances)ことができる。(中略)たとえば、話し手が聴衆の中の誰かやグループを走査し、見つめると、聴衆全員が話し手とより近づいたと感じるようになる。

○人前に立つ人は、これを上手にやれると良いですね。適度に視線を分散させることも必要ですが。

・視線行動とは、われわれがコミュニケーションをしていることを示すサイン(sign that we are in communication)である。アーガイルとディーン(Argyle & Dean,1965)が述べたように、「アイコンタクトがないと、人々は自分たちが十分にコミュニケーションしているとは感じない」のである。

『2 視線行動のタイプ』

<欺瞞と視線行動>

・フロイト(Freud,1905)は、こう宣言した。「見るための目を持ち、聞くための耳を持つ彼は、秘密を保つことのできる人間はいないと思い込むかもしれない。もし彼の唇が沈黙すれば、彼は指先でおしゃべりをする。裏切りは彼のあらゆる毛穴から漏れ出す」。現在、漏出は「非言語漏出手がかり(nonverbal leakage cues)」として言及される。この文化では、少なくとも、欺瞞(deception)や言行不一致のシグナルとして、視線行動(目をそらす、目を伏せる)だけに依存することはまれである。

○目は口ほどにモノを言いますが、嘘をつく方法も学んでいます。むしろ、欺瞞は態度や声に表れるかもしれません。

『3 視線行動と個人差』

・一般的な視線行動とは、見る頻度と持続時間を含むものである。他者の凝視活動を評価する際には、性格上の、性別上の、文化上の、文脈上の影響を考えることが必要である。これらの影響を無視すると、対人関係での誤解へとつながるだろう。

【6章 音声行動】

・音声行動もしくは周辺言語(paralanguage)の伝達価値の研究は、音調学(vocalics)と呼ばれる。

『1 音声行動の分類』

・トレーガー(Trager,1958)は、すべての周辺言語活動をいくつかのカテゴリーのひとつに分かれるものとして分類した。

<音声セット>

・音声セット(voice set)は、だれが話し手であるかと密接に関連する。(中略)たとえば、か弱い老人、トラック運転手、大臣、学校の教師、女性実業家を考えてみよう。この人たちが「とてもいい日ですね」「こんにちは、フェルナンド」「とてもおいしい」という文章を同じ程度の熱意と感情で話す場合に、どのように聞こえるのかについて考えてみよう。おそらく、あなたはそのフレーズを考える前に、すでに、4人の音声手がかりに違いがあることを思い浮かべただろう。(中略)優れた役者にとって、役をリアルに演じるカギはキャラクターの個性と一致した音声セットを作り出すことにある。

○声色(こわいろ)と言いますが、音声セットと言う考えは面白いです。

<コミュニケーションにおける沈黙の使用>

・人は自分と他者の間に距離を置きたいと望む時がある。物理的に自分自身を取り除くことはできないが、沈黙したままでいることで、心理的距離を作り出すことができる(Jawoski,1999;Braithwaite,1999;McCroskey & Richmond,1996;Mehrabian,1968)。

『2 音声行動とターン相互作用管理』

・話し方のせいで、人々を差別することは不公正である。口調によって、その人の知性を判断するのは不公正である。けれども、それは毎日起こっている。口調以外の情報源を使って正しいと認識できるまでは、判断を保留するのが賢明である。

○非言語メッセージを読み取る際に注意しなければならないことの一つ。それは、気づくキッカケだけど、断定するものではないということですね。

『3 音声行動の効果』

<音声行動と感情>

・実際の言語内容とは別に、音声行動は感情について多くの情報を伝える(Bachorowski & Owren,1955;Camras,Sullivan & Michel,1993;Davitz,1964;Mehrabian & Ferris,1967,Scherer,Koivumaki & Rosenthal,1972;Starkweather,1961)。

<音声行動と学習>

・抑揚のない声はその他の要因よりも教師への否定的な評価にしばしばつながることが示されている。(中略)単調さは話し手の情報提示に何ら寄与せず、話し手が学生の注意を活性化しようと努力しても、それとは逆に作用する。(McCroskey,2001,;Richmond,1996a)。

・教室における学習では、教師の温かく、肯定的な音声行動も重要である。(中略)一般的に、肯定的な音声行動は、どの学生群においても改善を生み出すが、中流階級の学生に対するよりも、下層階級の学生に対する学習や興味の改善に貢献するという結果を示す研究がいくつか存在する(Richmond,1996a,2002)。

○声の温かみやアクセントって大事なんですね。いくら熱意があっても、それを伝える「熱さ」「温かさ」がないと伝わらないと。

【7章 空間とテリトリー行動】

・人が空間とともにコミュニケートする方法に関する研究は、近接学(proxemics)と呼ばれている。空間やテリトリーの使い方は、文化と強い関係がある。

『1 テリトリー行動の現象』

<否定的な侵略のタイプ>

・汚染は、その定義と使用法に関して、他人のテリトリーを純粋でないものにすることの表現である。ある学生は「だれかのテリトリーに入り、その場所を悪臭で充たすことを意味する」と非常に適切に述べていた。

○電車でお隣に座られると、逃げるしかない場合・・・自分も気をつけないといけません(苦笑)

『2 パーソナルスペース』

・パーソナルスペースは、個性、状況、関係性のタイプに依存して拡大・収縮する、われわれを囲む不可視の気泡である。

『3 混雑と密度』

<高密度のインパクト>

・全体として、研究文献はひとつの主な関心事に一貫しているように見える。それは一般的に高密度エリアでは低密度エリアに比べて、1人あたりにおいてより多数の人災で悩まされるという点である。(中略)彼らのような都市居住者は、混雑が人の思いやりをなくしたと思わせるように、適切にふるまうことによって対処している。ナップとホール(Knapp & Hall,1992)によれば、そのような人々によって使用される対処手段は、下記のものが含まれる。

・・・・・・・・・・・

1.互いに短い時間を使うこと(短い会話)
2.優先度が低い相手に関する無関心(道、地下鉄、エレベーター、通勤列車中の他の人々を無視)
3.いくつかの業務の責任転嫁(バス運転手がお金を崩す必要はない)
4.他者をブロックすること(守衛がアパートを守り、人の出入りを制限すること)

・・・・・・・・・・・

○関わりを持ちたくない、という自己防衛を非言語メッセージで伝える。寂しくもあり、合理的でもあります。

【8章 接触とコミュニケーション】

・触覚コミュニケーションは、最も初期の、おそらく最も基本的なコミュニケーションの形態である。

・触覚学(haptics)は、触覚行動のタイプ、量、使われ方、結果について研究する。

『1 生涯発達と接触』

『2 接触のカテゴリー』

<専門職-職務上の接触>

・専門職-職務上の接触(professional-functional touch)とは、仕事やサービスを達成し、遂行するために使われる非個人的で、事務的な接触である。

<社会的-丁寧な接触>

・社会的-丁寧な接触(social-polite touch)としてしられるタイプの接触は、対人的なかかわりの限定的形態を伝えるのに役立つ。(中略)われわれの身体的接触は、あいさつの時のような社会的役割において、他者を受け入れることに役立つ。

<友情-思いやりの接触>

・友情-思いやりの接触(friendship-warmth touch)は、われわれが相手を心配したり、尊重したり、興味を持っていることを、他者に知らせるものである。

<恋愛-親密な接触>

・恋愛-親密な接触(love-intimacy touch)は、頬を撫でたり、相手の腰を抱いたり、抱きしめたり、抱擁したり、キスをしたり、特に親しく、個人間の関係がある交際であることを伝えるその他多くのジェスチャーを含む。

<性的-興奮の接触>

・性的-興奮の接触(sexual-arousal touch)は、接触において最も激しい形態である。それは最もコミュニケーション的なものかもしれない。(中略)しかしながら、親密な関係なしに、性的交渉を持つことはないとは言えないので、事実上、コミュニケーション的でない性的交渉を持つことは可能である。

『3 接触規範とコミュニケーション』

<文化差>

・アメリカ人はたいていの文化の人に比べて頻繁な接触はしないが、いずれにせよ、ある研究によって、われわれが日本人よりも頻繁に身体接触に携わっていることが明らかになった。

『4 接触は何を伝えるのか』

<接触と地位>

・ヘンリー(Henley,1973,1977)は、接触と地位に関する文献について、3つの普遍的な結論を提案した。

・・・・・・・・・・・

1.人は、特定の役割関係において、接触することや接触されることについて、一定の予想を持つ。たとえば、上司よりも部下により多く接触すること、また部下からよりも上司から多く接触されると予想する。
2.接触は状況的な文脈に依存する。
3.接触と支配は関係がある。とくに、支配的な人は接触を始める傾向が強い。

『5. 接触欠乏の影響』

・幼少期での接触欠乏により、皮膚障害やアレルギーを含むさまざまな健康上の問題が起こることを、多くの研究者が主張している。

・ハイト(Hite,1977)は、新生のラットをサンプルとした接触の3条件の影響について研究したシーモア・リヴァイン(Seymour Levine)の研究を報告している。最初の条件では、赤ちゃんラットは母親から身体接触を受けることが許されている。2番めの条件では、ラットは完全に接触を奪われる。3番目の条件では、赤ちゃんラットに電気ショックが与えられる。一定期間後、接触欠乏には虚弱や病気がみられた。一方、母親との身体接触が可能なラットは、健康で生き生きしていた。

・リヴァインを最も驚かせたのは、ショックを与えられたラットの状態であった。このラットは、母親との身体接触群のラットと同様に元気で健康であった!この発見は、むしろ驚くべき影響を示唆しているかもしれない。正常な生物学的発達のためには、『悪い」接触は接触がまったくないということより、よいということになるのだろうか?これは少し不自然かもしれないが、この劇的な結果は、接触欠乏が確かによくないことを例証している。

○電気ショックと母親との身体接触で同じ結果。ちょっと寒気がする結果です。

【9章 接近性とコミュニケーション】

・相互関係における接近的・共感的行動は、今日のコミュニケーション研究においても最も重要な非言語コミュニケーション(nonverbalcommunication)であるといえよう。

『1 接近性』

・接近性(immediacy)とは、二者間において認識されたある一定の身体的・心理的な親密性のことである。接近性の概念については、メラビアン(Mehrabian,1966,1971a,1981)による接近性の原理によって最もよく理解できるだろう。(中略)この社会的-心理学的観点は、肯定的な感情は人をより接近的にし、一方、否定的な感情は接近性の低下を招くことを示唆している。

<言語的接近性>

・モテットとリッチモンド(Mottet & Richmond,1998)は、関係性の発展において、言語による接近性あるいは接近志向的なコミュニケーション方略が、回避的あるいは言語的に非接近的なコミュニケーション方略よりも強力なコミュニケーションの道具となることを示した。

<非言語行動>

・非言語メッセージの重要な点は、ブラックマンとクレベンガー(Blackman & Clevenger,1990)の研究によって明らかにされた。その研究は、電子会議におけるコンピューターを介した相互関係に注目したものである。(中略)参加者たちは、対面で会話をしている時と同じ程度に、各々の言語的発言を表現する必要性を感じる。

○絵文字、顔文字。[:-( (しかめ面)、:)(笑顔)。

『2 非言語的接近性』

<外見的特徴>

「魅力」

・魅力的でない人物の多くは、接近性が魅力を増すためのひとつの要素であることを学習しているのである。

・人間の本質的な魅力の程度にかかわらず、接近的な行動を用いる人物は、より魅力的であると受け止められる。

「体格と体のサイズ」

・接近的であるように努めたり、親しみやすく見られるような行動を行ったりすることによって、印象を払拭することができるのではないだろうか。

「匂い」

・体臭は、あなたを接近的または非接近的に見せるための原因となりうる。(中略)非接近性につながる匂いを回避するためのおそらく最適な方法は、人工的な匂いを使用することよりも、定期的に入浴することである。

「髪型」

・毛髪の長さ、髪型、色は、接近性や非接近性を強化しうる。

「服装とアーチファクト」

・あなたから着用者の目を見させないような、反射するサングラスもまた、一般的には非接近性を示す。

<ジェスチャーと身体動作>

「エンブレム」

・エンブレムとは、文化をともにする人間のほとんどが理解できる特定のメッセージを伝達するような、言語の接近的な言い換えとしてのジェスチャーのことである。

○親指を上げたり、ピースしたり。ただ、文化の違いを鑑みないといけません。

「例示的動作」

・言語のみの場合に比べて、例示的動作を利用する場合には、より正確で豊富な意味合いを促進することができる。

・喜びや興奮を促すような例示的動作は怒りや退屈を促す例示動作よりも、接近性を増す効果があることを意味している。

「調整的動作」

・対人相互作用におけるコミュニケーションの流れをコントロールするのに有効なジェスチャーは、調整的動作と呼ばれている。これは、うなずき、手や身体の動作、視線行動、接触、声の使用などによって行なわれる。

「情動の行動」

・感情の強さや激しさを反映させるような動作(情動の行動)は、しばしば、われわれの情動の状態を表示する。

「適応的動作」

・日常的に不安な人や、他者とのコミュニケーションに不安をいだく人は、適応的動作をより行なう傾向がある。(中略)彼らはけっしてリラックスしているようには見られないため、他者に対して、接近性を伝達しない。彼らが伝達するのはたいてい不安だけである。

○その不安に気づいてあげるのもリーダーの役目だと思います。

「姿勢」

・研究者らは長い間、姿勢によるコミュニケーションが、他人に対するあなたの認識のすべてを伝達するものであると感じてきた。

<表情と視線行動>

・表情行動と視線行動は、接近性や非接近性の認識において重要な影響を持つ。肯定的な表情を表わし、アイコンタクトを多く行なう人は、否定的な表情を表わし、アイコンタクトをあまり行わない人に比べて、より接近的であると認識される。

<音声行動>

・不安な発話者はしばしば、応答的でない音声行動に加えて、適応的な行動を多く示すものである。さらに、弱々しく、退屈な、怒った、嫌悪感があり、興味がなさそうに話す人物は、接近性が低下するが、それに対して、快活に、活動的に、興味がありそうに、楽しそうに話す人物は、接近性が増加する。

<空間行動>

・空間の利用は、パーソナルスペース(personal space)の定位と、なわばり(territoriality)両方を含んでいる。

「パーソナルスペース」

・背が高い人はそれだけで支配的であると受け止められる。なぜなら、単純に、その高さが支配的であると受け止められるからである。よって、背の高い人は、相手に対して身を乗り出すような姿勢にならないように注意すべきであるが、少し離れて立つことによって、相手の前に立つことができる。

○大きさの威圧感は、人によっては相当のプレッシャーを感じるようです。

「なわばり意識」

・会話を増加させるような空間を作り出すためのよい方法は、すべての人が部屋のすべての人とアイコンタクトを行えるような環境を作ることである。もしあなたがなわばりを接近的な方法で配置すれば、他者はあなたをより接近的であると感じるであろう。

<触覚行動>

・手、前腕、肩、背中の上部などにふれることは、ほとんどの人々にとって適切であり、受け入れられる。(中略)これらの体の領域に触れることは、思いやりや優しさを意味し、接近性とコミュニケーションを増大させることに関連している。

<時間要因>

・だれかがあなたに質問した場合、あなたは言語的であれ非言語的であれただちに応答すべきであると期待されている。迅速な応答は親密さを生み出し、遅い応答は不安や緊張を引き起こす。会話において、応答潜時(response latency)は、接近的である。より多くの時間を他者に対して取ることは、相手との接近性を増加させる。

○貴重な時間を使ってくれる人には、当然ながら感謝を覚えます。普通はなかなか使ってくれません。

『3 接近性の結果』

<好意・交友関係・感情の増加>

・メラビアンは、『接近性と好意は、一枚のコインの裏表のようなものである。つまり、好意は接近性を促進し、接近性は好意を引き起こすのである」(1971a,p.77)と示唆した。

<より親しみやすいコミュニケーションスタイル>

・自分に近づいてくる人に対して笑顔を見せない人は多いのである。

○多い?のでしょうか。もったいない気がします。

<コミュニケーション能力の認識の増大>

・ブーアら(Buhr,Clifton & Pryor,1994)は、接近的な行動が、話者に関して認識される好意や能力、信頼度、類似性を高めることを明らかにした。

『4 接近性の欠点』

・接近性の第1の欠点は、認識と関連している。

○自意識過剰。

・第2の欠点は、不安と関連している。

・最後の欠点は、肯定的にも否定的にも解釈しうる。接近性は人と人との間のコミュニケーションを促進する。(中略)より多くのコミュニケーションは、より多くの時間を必要とするのである。

・接近性の欠点は、問題を引き起こすことがある。しかし、人が非接近である時に他者の心内で作られる認識は、なおさら厳しいものである。

【10章 男女の非言語コミュニケーション】

【11章 職場での人間関係】

・地位(ststus)とは何か?地位とは、一般に、集団での階級や身分として定義される。(中略)通常はだれかが高位になり、だれかが低位になる。(Richmond & McCroskey,2001)。

・たとえば、教師と生徒の関係では、一般に、教師が高位の人として考えられる。仕事環境においては、上司(supervisor)が一般に、高位の人であり、部下(subordinate)は低位の人である。

<2 非言語メッセージの役割>

・他の関係と同様に、非言語メッセージは、主として、労働関係を明確にするのに役に立つ。ジェスチャー、接触、着席、声の調子、時間の使用、空間や人工物、対象の使用のような非言語メッセージはすべて、だれがボスで、だれが従業員かを明確にするのに貢献する。

<ジェスチャーと動作>

・ジェスチャーとその動作のタイプは、上司と部下の関係を表すことができる。

・組織環境では、上司に何が受け入れられ、何が受け入れられないかについて、確実にわかるまでは、尊敬、興味、注意や黙従をする非言語行動をとるべきである。

<空間>

・メラビアン(Mehrabian,1971)は、「他者へ接近する特権は高位の人にある」と言及する(p.63)。

・ソマー(Sommer,1969)は、「上司は、動き回るためのより大きな自由と同様に、より広い、よりよい空間を持つ」と結論づけた(p.25)

<接触>

・近年、高位の人が、同性のあるいは異性の低位の人と接触することがますます困難になってきている(Cohen,1983,Hickson,Grierson & Linder,1991)。接触は常に、部下に満足していることを知らせる手段であった。

・今日の組織環境では、接触の使用は誤認識という不必要な危険性を招くものである。

『3 上司ー部下の関係についての結論』

・組織の中で人の地位格差が大きくなればなるほど、上司と部下間のコミュニケーション効果がより小さくなる。

・われわれは、部下と親友にならねばならないと言うつもりではないが、より親密で、よりコミュニケーション的な関係は、上司と部下間の情報の流れを改善するだろう。

○情報の流れが寸断したら目も当てられませんね。

『4 職場における接近性』

<接近性の利点>

・研究によって、部下は上司に、敏感で、温かく、受容的で、応答的で、接近的であってほしいと望んでいることが示された。部下は、そのような上司のために、よく働くことができると感じる。接近的な上司は、強制力を使うことなく、部下からの協力を得る可能性が高い。協力は、どんな組織の成功にとってもカギとなる。接近的な上司は、より多くの協力を生み出すものである(Richmond,2002b;Richmond &Martin,1998;Richmond & McCroskey,1988,2000,2001;Richmond,McCroskey & Davis,1986;Richmond,Wagner &McCroskey,1983;Richmond,Davis,Saylor & McCroskey,1984;Richmond,Smith,Heisel & McCroskey,1998,2001,2002;Robinson,1998)。

<接近性の欠点>

・部下を管理できないとか親しすぎると見なされることなく、どのようにして接近的になりうるだろうか?簡単に言うと、ボスが近くにいるときは、接近的すぎず、地位の役割を部下との間ではっきり区別し、ボスが去った時に接近を再開することである。

○これは一概には言えないような気がします。「ボスの前だけいい子にしやがって」なんて邪な見方をする人も?

・結局、接近性はその欠点よりも、上司と部下の両方にとってより多くの利点がある。現実の問題が起こりそうなのは、接近性が過度に行われた時だけである。

【12章 教師と学生の非言語的関係性】

『1教師の役割』

<スピーカーとしての教師>

・効果的な講師たちは、潜在的によそよそしい教授法を行わないよう注意しなければならない。このような方法は、接近的な教師-学生の関係性を確立しようとする試みを妨害するものである。

<モデレーターとしての教師>

・教師がモデレーターの役割に立ち返り、真の議論の雰囲気に焦点を移すという点で、もっとも効果的な方法は、開かれた質問をすることである。開かれた質問は分析、統合、応用目的(application objective)をねらいとする場合、特に適切である。このような質問には正答がない。学生たちは自分の立場を守ろうと挑戦するかもしれないが、彼らが間違うことはありえない。

○間違わないから、何を言っても良い。安心な空間ですよ、と講師が空気を作ること。

・モデレータとしての教師の役割に関する最後の提案は、待ち時間と関係する。教師が自分の質問に自分で答えるという状況はきわめてよく観察される、なぜなら、ふつう、学生の回答がすぐになされないからである。学生たちはこのパターンを即座に学習し、参加に対する責任を免除する。

○答えを待てないのは沈黙が怖いからという側面もあると思います。そこをぐっと堪えること。

<コーディネーターとしての教師>

・われわれは教師がさまざまな肩書きを持つべきであると示唆してきた。スピーカー、モデレーター、トレーナー、マネージャー、そしてコーディネーター(cordinator)。(中略)多くの学生が望むことは、(中略)、非言語的に受容的で、表現豊かで、そして協力的な教師である。

『2 非言語コミュニケーションの役割』

・われわれが1万人以上の教師を調査した結果、ほとんどの教師が言語コミュニケーションと比べて、非言語コミュニケーションが教師と学生の間のコミュニケーションをよりよくするうえで、効果的なコミュニケーション手段であると感じていることを見いだした。

・アンバディーとローゼンタール(Ambady & Rosenthal,1993)は、「30秒:非言語行動と身体的魅力のほんの一部から教師の評価を予測する」と題した画期的な研究を完成させた。(中略)実際、非言語に関する研究からいつも示唆されてきたように、印象形成は関係性のごく初期において行なわれる。しばしばこれらの第一印象がその後のコミュニケーションを決定するのである。

○たとえば、学生時代は、第一印象が悪くても挽回するチャンスはあったと思うけど、大人には挽回するチャンスはあまりないでしょうね。やはり、最初が肝心です。

<教師の外見>

・われわれは、教師たちがとてもフォーマルな服装をしている場合、教師が自分たちの要求に対して理解がなく、自分たちとコミュニケーションを取りたいと思っていないと学生たちに感じさせることを明らかにした。その教師は有能であると認識されるが、理解がないと認識されるのである。

<学生の外見>

・一般的に、より魅力的な学生や教師は優先的な扱いを受ける。魅力的でない学生や教師は、有能で好ましいと認識されるためにはより一生懸命努力しなければならない。子どもが学校において適度に魅力的な外見を示せるように、親は手助けをすべきである。多くの子どもはこれを1人で達成することはできない。そして、これは学生の成績に違いをもたらすのである。

○親の責任。身に沁みます。

<表情行動>

・教師と学生の関係性は笑顔によって促進されるのである。幼稚園から大学院まで、学生は笑顔の教師に対してよりよく反応する。

・好ましい表情の教師や学生は、陰気あるいは不機嫌に見える教師や学生よりも、より接近的で親しみやすいと認識される(Richmond,1997)。

<音声行動>

・単調な教師の声は、学生たちにとって、圧倒的に不愉快な音声行動であると受け止められた。彼らは、単調な声は退屈で思いやりがなく、非接近的な印象を投影するものであると認識した。(中略)学生たちは教師に対して、活気のある生き生きした声を望んでいるのである(Richmond,1997)

・バー(barr,1929)が初期に実施した研究では、社会科学のよい教師とよくない教師が研究され、よい教師はより多く笑い、学生にも教室で笑うことを許しているが、良くない教師はそうでないことを発見した。(中略)よく笑い、学生たちに対しても笑うことを奨励するような教師たちは、そうでない教師に比べてさらに接近的である。

○笑顔は太古からの最高のコミュニケーションなのかもしれませんね。

<空間>

・教師が近づいた時に遠のいたり、教師が近くに立ったり座ったりすることを受け入れない学生は、教師からも同様に認識される。(中略)たんに他者から近づかれることを好まない人もいる。このような人々は、接触的回避である。(中略)このように相互関係から離れていく人を、無情に判断しすぎないよう用心しなければならない。(中略)(Anderson & Leibowitz,1978)。

<接触>

・低学年では、接触は生徒と教師の効果的な関係性を確立する上での不可欠な要素である。小さな子どもたちのほとんどは家庭でたくさんの接触を受けてきている。彼らは学校でも同じことを期待する。小学校の教師はしばしば両親の代わりとしてみなされ、子どもは教師から接触を受けることを期待する。

○小さい頃、先生を『お母さん」と呼んじゃった人、結構いると思います(笑)

<環境>

・本書の著者は、あらゆる種類の劣悪な環境で教育を受けてきた。劣悪な環境では学生の注意を持続させることは困難である。劣悪な環境とは、暑すぎたり寒すぎたり、くすんだ黄色や暗い茶色、工業的な緑、戦艦のような灰色で壁が塗られている、あるいは清潔でないような環境である。

「色」

・明るい色や装飾は、学校環境に影響を及ぼす。(中略)美術教師や(中略)管理者とともに、学生たちが一緒になって学校の内装を描く手伝いをするような学校がたくさんある。(中略)このような学校はこの種の努力をしていない学校よりも、学生たちが自分たちの学校に対して、誇りを持っていることを発見している。このような活気ある装飾を持つ学校では、壁の落書きや汚れ、シミなどがめったにない。もし壁が汚れた場合には、それを掃除する学生を普通に見かける。

「温度と湿度」

・冬の間、湿度は30%以下にならず、50%以上になることを許容すべきではない。湿度がこのレベルより高かったり、低かったりする場合、学生は体調を崩し、欠席が増加する。トッド=マンシラス(Todd-Mancillas,1982)は、グリーン(Green,1979)による気候の研究結果を要約している。この結果は、カナダのサスカトゥーン(Saskatoon)における11の学校の小学1年生から中学1年生までの3,600人の生徒たちに関する研究から得られたものである。

~結果から、教室の湿度が22%から26%の学校に通っている子どもたちは、27%から33%である場合に比べて、病気や欠席が13%多かったことが示された。グリーンはまた、同様の研究によって、50%以上の湿度が呼吸器感染を引き起こすという結果が出ていることから、高すぎる湿度についても警告している(p85)。~

○子どもたちの教室の環境はとても大事です。私がお手伝している「ときがわカンパニー」では、まさにそこを支援できればと思って活動しています。

ときがわカンパニーの記事:内装木質化の効能

学校環境衛生基準

『3 教師の接近性の結果』

・接近的な教師は非接近的な教師に比べて、明らかにより肯定的に認識される。

・接近的な行動は、教師たちが利用できる最もたいせつなコミュニケーション手段の一部である。教師と学生がより幸福になるために、そして実り多い授業経験のために、これらの非言語的接近性のスキルが役立つのである。

【13章 異文化の人間関係】

・異文化の接触における適切な行動と不適切な行動に関する自覚を増す必要が存在している(Adler,1974;Carbaugh,1990;GudyKunst & Kim,1997;Klopf,1998;Klopf & Ishiii,1984;Neuliep,2002;Thomas-Maddox & Lowery-Hart,1998;Ting-Toomy & Korzeny,1991;Yousef,1976)。

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