表情分析入門

表情分析入門

P.エクマン/W.V.フリーセン

【2 顔にあらわれる感情表出を理解するとき、なぜまちがいが起こるのか】

<1.多重信号、多重通信システムとしての顔>

・顔は3タイプの信号を提供する。すなわち、(皮膚の色ごとく)静的なもの、(深く刻み込まれた皺のごとく)ゆっくりしたもの、(眉毛をつり上げるような)素早いもの、の3タイプである。

・研究の示すところでは、感情の正確な判断は素早い顔の信号から可能である。

<2.顔をなぜ見ないのか>

・顔の表情を理解する際の諸問題は、人々がお互いの顔をほとんど注視しないことから生じる。感情をあらわす顔の表情の殆どはごく短時間なので、重要なメッセージは見落とされがちである。顔の表情の中には大変素早いものがあり、わずか一秒の何分の一あらわれるだけの表情がある。これらは微表情(micro-expressions)と名付けられる。

・私たちには他人の顔に対する好奇心がある。

・会話をしているとき、絶えず相手の人の顔を見たりなどしないものである。

・会話中、相手の顔をあまり見ないのはなぜだろうか。相手が顔の表情に感情を露呈するかも知れないと直感するまさにその瞬間に、なぜ人は実際には視線を逸らすのだろうか。その答えの一部分は、(中略)つまり礼儀ということにあるようである。

・相手の顔を見ないのは、相手がどういう気持ちでいるかということを知ってかえって心の負担にならないようにするためである。何かしてやらなければという義務感を持ちたくないという気持ちが動機づけとなっているのである。

◯相手の心を知ろうとするのであれば、それ相応の覚悟も必要ですね。

<3.コミュニケーションの弾幕>

・感情をあらわすメッセージは、声の調子、姿勢、手や腕の動き、脚や足の動きからも伝えられる。しかし、これらが顔と同じくらい正確に感情に関する情報を伝えられるかどうかは定かではない。

・言葉と同じように顔の表情に焦点があてられていても、言葉のほうが人の注意を引きつけるのである。言葉は始終私たちの耳に届くが、顔の表情は見なければわからない。にもかかわらず、顔は感情の情報伝達において、言葉に比べて一層重要な情報源なのである。

◯顔を見ないのが礼儀、というハンデが表情にはあるということ。

<4.顔の表情の統制>

・感情をあらわす顔の表情は、種々の理由で統制されるどんな表情をしたらよいかということについては社会的なしきたりがある、人前で自分の表情をどのように示したらよいかということを左右する文化的な表示規則があるわけである。

・顔は真実と偽りの感情メッセージのどちらも伝達するので、顔の表情に関して多少混乱が生じる。

【3 感情をあらわす顔の表情研究】

<1.顔はどのような種類の感情を示すのだろうか>

・本書の主題である6つの感情、すなわち、幸福、悲しみ、驚き、恐怖、怒り、嫌悪は、過去30年間、顔の表情と連合した感情語の語彙を決定しようと努めてきた研究者たちが見いだした感情である。

<3.感情をあらわす万国共通の顔の表情はあるのだろうか>

・主要なそれぞれの感情をあらわす顔つきは、すべての民族に共通しているのだが、顔の表情は、実は少なくとも2つの点で文化のちがいがあるといってよい。(中略)2つの異なる文化圏に住む人びとは、最愛の人の死に対して同じように悲しみに浸るであろうが、一方の文化圏では、喪主は控えめながら機嫌のよい顔つきをして、顔の表情をおおい隠すように規定されていたりするのである。

<5.顔の表情はどのように統制されるのだろうか>

・フォルムを用いた研究により、非言語的「漏洩」理論の基礎が構築された。これは、人が隠蔽する感情を顔の表情や身体の動きから見分ける方法である。

【4 驚き】

<1.驚きの経験>

・驚きは、予期せぬ出来事と予期に反した出来事から生ずる。

・出来事が予期せぬ性質のものなのか、それとも予期に反したものであるのかそれが判明しさえすれば、驚きの感情は別の感情にに素早く変化する。(中略)この経験に肯定的な感じを与えたり否定的な感じを付与するのは、むしろそれに引き続く感情によるのであって、出来事の性質しだいなのである。

・驚きの感情経験自体はごくわずかな時間であって、この経験にすぐ引き続いて別の感情が生ずるために、顔に驚きと後続の感情の混合した表情が示されやすい。

【5 恐怖】

<1.恐怖の経験>

・驚きの感情は、ふつう出来事の意味が判明するとすぐに消え去り、驚きの原因になった事柄に対する感情次第で別の感情へと変わっていく。恐怖心は危険がなくなった後でもなかな消失せず、恐怖の感覚は残るのである。

【6 嫌悪】

<1.嫌悪の経験>

・嫌悪感はふつう、排除反応と回避反応を含む。嫌悪の対象が取り除かれるか、それが避けられるかのいずれかである。

【7 怒り】

<1.怒りの経験>

・精神身体的障害の原因に関する理論では、ある種の身体的疾病は、怒りを表現できない人、つまり、怒りを挑発した当人に怒りをぶつけず、自己犠牲化する人に生ずる、と述べている。

◯怒りを飲み込むのは大人としてしなければいけないことですが、それを発散できないというのは辛そうです。

・怒りに関しては、表情が顔の3領域すべてにあらわれなければそのメッセージは曖昧なものになる。

【8 幸福】

<1.幸福の経験>

◯幸福感の4つのタイプ。快感、興奮、安心感、自己概念の高揚。

<2.幸福の顔貌>

・幸福の表情の認知がいかに簡単であるかは、多くの異文化研究で明らかにされてきた。

◯ロバート・プロヴァインは、笑いがミミクリと似た、大昔からのシグナルであることを示した。

「正直シグナル」

【9 悲しみ】

<1.悲しみの経験>

・悲しみによる苦痛は強烈であるが、それでも恐怖の苦痛に比べれば耐えることはできる。人は長期間悲しみに耐え、それから蘇ることもできるのである。

◯悲しくてもお腹が減る。生きるということ。

【10 顔の練習】

【11 偽りの顔】

・人びとは、感情をあらわす顔の表情を言葉よりも信頼できると考えている。

・顔でうまく嘘をつけるのは、役者や政治家だけとは限らない。ほとんどすべての人が、時にはそうしようとするのである。

<1.人びとが顔の表情を統制する4つの理由>

・表示規則としてこれまで挙げられた例では、ある特定の感情(男性では恐怖、女性では怒り)は人前で示してはいけないことを明示している。

・なぜ人びとは自分の顔の表情を統制するのか、(後略)。

◯文化的な表示規則(社会生活における慣習の役割)、個人的な表示規則の役割、職業上の必要、その時点で生ずる個人的な都合。

<2.顔面統御の技法>

・顔の表情を統御するには、実際に感じている感情表出を修飾したり、その感情の表出を調節したり、あるいは、そのメッセージを偽装することが可能である。

『修飾』

・最も頻繁に用いられる修飾は、微笑である。これは、どのような否定的感情にも注釈として加えることができる。

『調節』

・顔の表情を調節するには3つの方法がある。関与する顔の領域の数、表情の持続時間、そして、顔の筋肉の可動具合が変えられるのである。

『偽装』

・感情をあらわす顔の表情を偽装する場合に、3つの形がみられる。

◯擬態、中立、隠蔽。

・感情の修飾の最も一般的なものは微笑であるが、微笑はまた、感情を隠蔽する最も一般的な手法でもある。

<3.顔面統御を認知する際に出会う障害>

・人びとは他の人が顔の表情にあらわす種々の誤りに無意識的に気づかないふりをしていることが多いということである。

◯これが意識的なのが、日本的な「空気を読む」ということでしょうか。意識的に気づいてしまえば、ハッキリと口にする文化との違い?

<4.漏洩と欺瞞の手掛かりの源泉>

・表情が統制されていることを知らせてくれる顔の表情には、4つの側面があり、(中略)すなわち形態、タイミング、位置そして微表情の全ては、当然その表情があらわされる社会的脈絡の観点から解釈されなければならない。

【12 自分の顔の表情を検査する】

<1.顔の表情の8つのスタイル>

・あなたは感情を抑えるほうですか、それとも、ことによると、感情をあらわにするほうですか、これらは、最初に取り上げる二種の表出スタイルである。

*無意識の感情表出者→自分の顔の表情にきづかない。

*無表情な感情表出者→表情は曖昧だが、自分では表情を出しているつもり。

*代替的な感情表出者→自分では感情を素直に表情に出しているつもりでも、他者から見ると別の表情に見えてしまう。

*凝結した感情表出者→長年の経験や自然の悪戯に起因する固定された表情。

*常備の感情表出者→どんな感情が起きても、最初は同じ表情が表出してしまう。

*過剰な感情表出者→感情過多な人。心的混乱状態の人びとにもみられる。

【13 結論】

・他人や自分の気持ちがわかったからといって、それへの対処法がわかるということにはならない。他人の感情がわかってもうれしい気分にはならないかもしれない。(中略)他人の感情の理解は、それについてなんとかしてやりたくなることと同じ意味ではない。

・相互の感情の共有に関心があるかどうかということは、あなた自身、相手、状況、そして相互の関係性に依存する。

・顔の表情や感情に関する知識の増大は、実用的な利点があると信じている。ただし、その知識の活用法はあなたがみずから熟慮せねばならないのである。

◯知らないでやるのよりは、知っていてやるほうが良いです。相手を思いやる気持ちは誰にでもあるのだから、正しく理解し、正しく表現することが大事ですね。

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