応用インプロの挑戦

応用インプロの挑戦

テレサ・ロビンズ・デュデク & ケイトリン・マクルアー

イントロダクション

・「応用インプロ」は、演劇のインプロヴィゼーション(理論・教え・ゲーム・テクニック・エクササイズ)を、従来の演劇空間を超えて、現在のVUCA世界において必要とされる柔軟な構造、新しい考え方、対人間・個人内のスキルの成長と発展を育むための応用を指す広い意味で用いられる言葉。

・初心者や怖がりのインプロバイザーは、真実の人間関係を築いてしっかりとストーリーを発展させ、観客と深いレベルで繋がろうとせず、何とか面白くして笑いを取ろうとする間違いを犯す。

・初期のサイコドラマ的なインプロヴィゼーションの実験室は「自発性は人の基本的形質」「行為は話すよりも健全」という前提によって生まれた。

・組織開発における目標のほとんどは、応用インプロの目標と類似。

1 インプロヴィゼーションでレジリエンス文化を創造した看護師たち

・世界中で行われている応用インプロは、批判されたり、試されたり、教えられたりすることなく、「本当に遊ぶ」。(中略)成長し、新しいことを学び、レジリエンスの新しいツールを創造するには、遊ぶことが必要。

・「1分間で自分の人生を表現する」ワークにて。多くの看護師がいかに「強くあること」「我慢すること」に高い価値をおいており、その選択が、身体的・情動的・精神的レジリエンスを減少させるコストになっていることが明らかに。

・当初の目的、「ストレスの軽減」「情動的支援」「コミュニティの強化」「より良いチームワーク形成」の達成。

○吐き出しやすくするためにインプロは力を発揮するのかも。

2 コネクト・インプロ・カリキュラムー自閉症スペクトラムの若者と教育者の支援ー

・インプロは欠点を正すよりも、むしろ自閉症者がもっている長所を伸ばす助けに。

・自閉症を理解するに当たり使う用語は「脳の多様性」。非定型発達と定型発達の差異を「違い」とみなす。

・エクササイズにて「失敗を恐れない」「失敗をチャンスと捉える」ことを体験。(中略)コミュニケーションや相互交流における問題は、失敗や葛藤を必死に避けようとすることと深い関係。

3 自発的な村を作るー遊びから生まれる共同体ー

・遊びや笑いは、脳の扁桃体周囲での認知(闘争か逃走か)を新皮質での認知と切り替え、高度な社会的機能を遂行させる。また遊びの中に見つけたユーモアを共有することで、参加者が自分たちの置かれた社会的状況ごとに分裂してしまうのを最小限に抑える。

・気乗りせずに見学していた者が参加しだすというパターンは、集団の雰囲気が自分にうつる「感情の伝染」という心理学の概念にも関係。

・応用インプロには、コミュニケーションや協働、創造性が求められる人間中心のプロセスやプロジェクトを改善する力を持ち、集団にプラスの成長をもたらす効果的なアプローチ。インプロヴゼーションは人間の自然な状態。

4 非常事態に対する実践ー 勇者の即興サイクル ー

5 ティファニー社のイエス・アンド実践

・プログラムの最中に頻繁にお礼を言うのは、お礼を言うことは、風土にポジティブな影響を与えるもっとも簡単な方法の一つだから。

○この一番簡単なことを「自意識」が邪魔をして難しくしてしまう場合も・・・。もったいないです。

・6つの共同原則(ティファニー社用に調整)。1.関与する(commit)2.パートナーが素敵に見えるようにする(Make your partner look good)3.与えられたものから創り出す(Build with what you're given)4.失敗を贈り物として扱う(Treat mistakes as gifts)5.好奇心を持つ(Be curious)6.ありのままの自分でいる(Be obvious)

・最も疑い深かったり、イライラしたり、辛辣であったりする参加者の反応に対してもファシリテーターが「イエス・アンド」で対応できればできるほど、たくさんの学びが参加者全員に生まれる。

6 アクション!-即興演劇を通したエグゼクティブの変容ー

・ほとんどの語り手は、聞き手が好奇心を持って「もっと知りたい」と言ってくれれば、詳しく話すのを楽しむもの。

・即興は舞台の上でも外でも、理論を実践するツールであり、振り返りを通して自己認識を高め、より協力的な関係性を築き、自信と明確さを持ってコミュニケーションする力を高めるために使うことができる。

7 金魚と金魚鉢ー協同的知性を解き放つ冒険ー

・参加者はいつも、自分自身が思っていたよりも成功する。(中略)「単に言葉で伝えるのは無理。経験しなければならない」。

○ファシリテーターとして、エンパワーメントすることでしょうか。

8 ノーからイエス・アンドへー 対立解消のための応用インプロ ー

・全ての対立には、外的側面(食料・金・プロジェクト・土地・移民法など)と内的側面(認識・アイデンティティ・関係性・生い立ち・感情)がある。効果的対立解決のアプローチは、両側面に上手く対処。

・「交渉とは言わば・・・あるテーマに関するインプロのようなもの。どこに行きたいかはわかっていても、そこにどうやって行くかはわからない」。

・即興の基本は聴くこと。「瞬間に起こっていることに注意を向け、今そこにいて、真心をもって対応すること。聴くこと・気づくことが多くなればなるほど、より繋がってより意味深く情報を取り入れることができる(Poynton 2008)」。

9 応用インプロを使ってキャンパスの「多様性」を非植民地化する試み

・キース・ジョンストンは、「なぜ教育学部でステイタスを教えないのか理解できない」と思っていた。(中略)(筆者は)「専門家」として行動しつつも、学生と柔軟で堅苦しくない関係を構築。学生とより対等な関係を作るために、自分の「専門家」ステイタスをできるだけ頻繁に下げるように意識。

・沈黙の中に、自らを観察したり他者と出会ったりする時間・空間が生まれる。ヴァイオラ・スポーリンは「親密なインプロのグループは、超人的な技術と速度で非言語コミュニケーションを行っている」(Spolin 1963: 45)と述べている。

10 科学を理解するー 科学と健康における応用インプロ ー

・スポーリン(Spolin 1963: 61-3)の「ミラー」のワークを行うことで、さまざまなパートナーを気づかい、自分の主導権を少し手離すことを考え、パートナーのニーズに対してより的確に対応することを練習。「フォロワーをフォローする」コンセプト。(中略)主導権の共有が不可欠。

・笑顔を見せて、アイコンタクトを上手く行い、患者との話し合いの時に怒らなかった医師は、患者の健康上の課題改善に重要な役割を果たしたことが明らかに(Slepian et al. 2014)。

11 創発という概念についてー キース・ソーヤ、ニール・マラーキーとの対話 ー

・片方だけが得をするような取引は成立しない。両者にとって得るものがある着地点を見つけるプロセスこそ即興。

・インプロの素晴らしさ。相反する欲求「独立欲求」と「所属欲求」の両方に応えられる点。

・最小限の秩序、最大限の自律。

○ルールの中でいかに自由に振舞うことができるか。

・基本ルールは「傾聴と受容(イエス・アンド)」。シンプルなようで複雑。聴いた内容の全部ではなく、どの細部に対して「アンド」するかを選びながら聴く。

・即興とは、限られた素材を使ってベストを尽くすこと。

○インプロと起業家教育は相性が良いかも!

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