流れといのち

流れといのち

エイドリアン・べジャン

第1章 生命とは何か

・『流れといのち』の内容は、あらゆる動物と人間が力を求めるという明白な事実に根差している。(中略)動物は食物を求め、車両や機械は燃料を必要とする。「人間と機械が一体化した種」にとっての食物は力。「有効エネルギー(エクセルギ―)。

・誰もがより多くの力をほしがり、より多くの力を手に入れるために他者と協働する。

第2章 全世界が望むもの

・人間は、地球上に存在する生物学的な水の流動系の一つ。(中略)全て(動き、水の流れ、科学、テクノロジーなど)において進歩し、進歩はより大きな流れを容易に動かす能力。

第3章 目的を持った動きとしての富

・さまざまなビジネスと法規は、人間の暮らしのために建設された流路やビーバーの暮らしのために建設された流路と何の変りもない。ビジネスと法規とは人間を動かす流路を維持する道の規則。自由な社会では流れが良くなるために形を変え続ける。

○法の支配。

第4章 テクノロジーの変化

・機械工学の教授、ピーター・ヴァーダス:「いかなる社会であれ、利用可能なテクノロジーが提供し維持できるだけの自由しか持ちえない」。自由は与えられるとそれに報い、新たなテクノロジーの創出を可能にする。

○共産国の科学も侮れない部分もある中、「創出者」の疲弊の仕方が違うのでしょうか。

・「小型化」は、私たちの体や輸送手段、仲間をより楽に、より長く、より遠くへ動かすという自然の傾向。

・新しいものは古いものにとって代わるのではなく、古いものに加わる。歴然とした「複雑性」の織物。

・コンコルドは、燃料消費が過剰なために、コンストラル法則に基づく進化のデザインの道筋から大きく外れているとの論文。あるジャーナリストは「最初から先が見えていた」と嘲り。それを捉えたある生物学教授は、その発言をべジャンの言葉と受取り、脳の大きさと体の質量データを集めて比較するグラフを作成。そのグラフの上に「私たちはみな先が見えている!」と書き付け。人間の脳が一般的な傾向よりもはるか上に来る理由を生物学者たちは知らないが、物理学者は知っているため、生物学の教授は赤恥。

○生物学の教授にはちょっとかわいそうな気もしますが、来日講演時のべジャンさんのチャーミングさを思い出しました(笑)

・産業革命と航空輸送とインターネットなどの人工物が人間の脳を外へと拡張したおかげで、私たち全員は一緒に地球の全表面と共に流れている。新たな人工物が登場するたびに人間の動きが良くなるためには、各個人が富、自由、余暇、平和へアクセスできなければならない。

第5章 スポーツの進化

・競泳や陸上の100メートルのタイムは物理の法則に従えば今の倍まで記録が伸びる。

○すごい!

第6章 都市の進化

・道は人々が自由に歩く所に出現するのであり、固定された道筋を意志に反してたどることを強要されてもそれには従わない。

・都市は、多数の小さな通りと少数の大きな通りや、環状道路を持った、自由に構造を変える流動系。

第7章 成長

・20年前には大学教授と医学博士は高度な専門の仕事だけをやっていたが、今日では、彼らは仕事時間の半分を事務作業に費やす。

・テクノロジーの成熟と共に、多様性と構成が分かちがたく協働している。河川流域と同じで、多様性は詳細(曲がった流路、湿った泥、倒れた木々など)、構成は全体的なデザインであり、それぞれの本流に特定の数の支流を持つ川のようなもの。

・新しいテクノロジーはより多くの流れを促進し、その流れを既存の流れに重ね合わせる。増大した流れを地球全体で動かし、必然的により多くの燃料を消費する。燃料を多く使うからといって、気候変動が制御不能になっているわけではない。人類は存続し、流れ続けるため、生きるために適応する。

・広がる流れのそれぞれがS字カーブをたどる形で推移するので、どれ一つとして永遠に成長し続けたり、破局を招いて終わったりしないことが予測される。

○べジャンさんが「楽観的」といわれる所以。でも、これが真だと信じたいものです。

・間違っていた過去の予測を覚えている人がほとんどいないというのもS字カーブ現象を反映。うまく機能するものは自然に広まり、うまく機能しないものは忘れ去られる。

第8章 政治、科学、デザイン変更

・政治家も自らのアイデアのパッケージを一新して新たなS字カーブを描かなければ忘れ去られる。

・自由は、あらゆる流れのデザインに「効率性」と「持久性」を与える。自由に変化できる社会制度に「富」と「長寿」が備わっている理由。

・先進国は、良き隣人であろうとして利他的な衝動を示してきた。

・寄付や慈善活動を行うのは富裕層。力を与えられた人から無力な人々へ階層的に流れていく。

○やらない(できない)善より、やる偽善。

第9章 時間の矢

・進化現象の時間の矢は、自然界のいたるところでデザインに起こる変化の方向を示す。

・知識とは、アイデア(デザイン変更)と行動(デザイン変更の実行)という同時に存在するデザインの二つの特徴の名称。デザイン変更は自然に広まり、動きの拡がりを促進し、高める。あらゆるデザイン変更を導く時間の矢がある。

第10章 死とは何か

・生命とは、地球上で進化を続ける動き。動きは流れの道筋を作り出し、その道筋が次第に大きなアクセスを提供する。動きは終始、独自のS字カーブをたどって推移しながら拡がる。

・生命とは、時間と空間の両方における動きー誕生から死まで、誕生の地から移動の終焉の地への動きであり、その移動の終着点が新しい動くものの誕生の地となる。

第11章 物理的現象としての生命と進化

・途切れたり再生することによって、有限の領域における地球の時間平均の攪拌は増していく。アリ塚が出現しては崩れ、帝国が崩壊して平和が消え去り戦争となり、再び帝国が築かれて平和が訪れるという再生のサイクルが繰り返される。

・法則は一つで、理論は多数ー理論を考える人が法則を引き合いに出して予測したい現象の数と同じだけある。

・「生命の起源における第一歩は、動力を生み出す方法を偶然に見つけ、エネルギー問題を克服したことだ」~エルバート・ブランスコム~

○心は初めからなかった。「初めに言葉ありき」という聖書の文言はあてはまらない。初めに有機体があり、そこに動きが生じ、動きから心は生まれてきた。「新版:身体心理学」

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