21 Lessons

21lessons:21世紀の人類のための21の思考

ユヴァル・ノア・ハラリ

1 幻滅

・どんな人も集団も国家も、独自の物語や神話を持っている。(中略)三つの壮大な物語、ファシズム・共産主義・自由主義。

・自由主義の物語は順応性があり、ダイナミックであるのが実証され、帝国主義にもファシズムにも共産主義にも勝利した。

・テクノロジー革命は間もなく、何十億人もの人を雇用市場から排除して巨大な「無用者階級」を新たに生み出し、(中略)社会的・政治的大変動を招くかもしれない。

2 雇用

・情動や欲望が生化学的なアルゴリズムに過ぎないのなら、コンピューターがそのアルゴリズムを解読できない理由はなく、ホモ・サピエンスよりもはるかに上手くやれる。

・AIが持っている人間とは無縁の特に重要な能力二つ、接続性と更新可能性。

○集団の知。

・普遍的な経済的セーフティネットを強力なコミュニティや有意義な営みと結び付けられれば、アルゴリズムに仕事を奪われることは恩恵となりうるが、自分の人生を思い通りにできなくなることは恐ろしい筋書き。

サピエンス全史に書かれていた家畜と重ねると恐ろしいことです。

3 自由

・感情は合理性の対極ではなく、進化が育んだ合理性を体現。(中略)脳内で何百万ものニューロンが生存と繁殖の確率を計算しているのを感じないので、自分の意見は何か謎めいた「自由意志」の結果だと誤って信じている。

・b×c×d=ahh!、すなわち、生物学的知識(biolojical knowledge)と演算能力(computing power)とデータ(data)の積は、人間をハッキングする能力(ability to hack humans)に等しい。

・AIが意識を獲得すると考える理由はない。知能と意識は全くの別物。(中略)全く意識を持たないまま、超知能を持ちうる。

・ビッグデータアルゴリズムは、自由を消し去りかねないばかりか、同時にかつてないほど不平等な社会を生み出しかねない。あらゆる富と権力が一握りのエリートに集中する一方で、ほとんどの人が存在意義の喪失に苦しむことになるかもしれない。

○やはり、家畜が思い浮かぶと・・・。

4 平等

・巨大なデータ企業の真の事業は広告を売る事よりも、私たちの注意を惹いて私たちに関する膨大な量のデータを首尾よく蓄積すること。

・企業や政府機関は、全ての体と脳の難解なメカニズムを解読し、それによって生命を創り出す力を獲得しうる。(中略)誰がデータを制するか。自分のDNAや脳や人生のデータは自分ものなのか、政府のものなのか、企業のものなのか、人類という共同体のものなのか。(中略)データの所有をどう規制するかという問題に注意を向けることが今の時代の最重要政治的疑問。

5 コミュニティ

・フェイスブックをはじめとするオンラインの巨大企業は、人間を視聴覚的な動物ー二つの目と二つの耳が10本の指と電子機器の画面とクレジットカードにつながったものとみなしがち。

6 文明

・ドル紙幣(紙そのもの)は飲食できず、本質的な価値はないにもかかわらず信頼は絶大なので、あらゆる人がその信頼を共有している。

・最も頻繁に争う相手は「身内の人」。アイデンティティは合意よりも争いやジレンマを特徴とする。(中略)人類は円満なコミュニティを築き上げるには程遠いが、単一の混乱したやかましいグローバル文明の成員。

○似ているからこそ、自分と違う点に苛立つ。親しき仲だからこそ、難しいです。

7 ナショナリズム

・平和で繁栄している自由主義の国はナショナリズムの強固な感覚を享受しているが、問題は、有益な愛国心が狂信的排外主義の超国家主義(ultranationalism)に変容したときから始まり、暴力的な争いの温床となる。(中略)核兵器が発明され、ナショナリズムがただの戦争につながることは恐れず、核戦争につながることを恐れ始めた。

・今日の人類は、グローバルな協力を通してしか解決しようのない三つの共通の難題に直面。核の難題・生態系の難題・テクノロジーの難題。

・クリーンミート(肉)の可能性。細胞から肉を「栽培」する。牛を育てて殺す代わりに、ハンバーガーを栽培。

○これが出来たら・・・とは思う反面、怖い気もしますが、テクノロジーが解決してくれるのでしょうか。

・地球温暖化において得をする国もある。(中略)ナショナリストは目先のことや自分のことばかりしか頭になく、危険を正しく認識できない可能性も。

・核戦争や生態系の崩壊は避けるべきだと誰もが同意しても、生物工学とAIを使って人間をアップグレードしたり新しい生命体を生み出したりすることに関しては、意見は分かれる。

8 宗教

・現代の経済理論は伝統的な宗教の教義よりもはるかに現状に即しているので、表向きは宗教上の争いさえも、経済の観点から解釈するのが当たり前になったが、その逆をやろうとはしない。

・宗教はどれほど古めかしく見えたとしても、少しばかりの想像力を働かせて解釈し直せば、最新テクノロジーを使った装置や最も高度な現代の機関と結びつけることができる。

・人類の力が集団の協力を拠り所としている限り、宗教や儀式は重要であり続ける。

9 移民

・従来の人種差別は下火になってきているが、世界は今や「文化差別主義者」満ち溢れている。

10 テロ

・テロリストはあまりに弱いので戦争を起こせない代わりに、劇的な光景を現出させ、敵を刺激して過剰に反応させることを願う。(中略)テロリストは軍の将軍とは考え方が違い、演劇のプロデューサーのように考える。

11 戦争

・新たな世界大戦が避けられないと決めてかかるのは「自己成就予言」となり、危険。

12 謙虚さ

・多くの宗教が謙虚さの価値を褒め称えても、結局は「自らがこの宇宙で最も重要」だと考える。個人には従順さを求めつつも、集団としては目に余るほどの傲慢。

○人の振り見て我が振り直せ、に通じます。

13 神

・道徳とは「神の命令に従うこと」ではなく、「苦しみを減らすこと」。道徳的に行動するためには、どんな神話も物語も信じる必要はない。

14 世俗主義

・世俗主義者は、道徳と叡智がある特定の場所に特定の時に天から降りてきたものではなく、全人類が自然に受け継いできたものと考える。

・世俗主義者が科学的真実を大切にする深遠な理由は、好奇心を満たすためではなく、この世の苦しみを減らす最善の方法を知るため。

・どの宗教やイデオロギーや信条に従おうと、自分の陰の面を認めるべき。誤りは起こりえる。(中略)誤りを犯しがちな人間による真実の探求の価値を信じているなら、失敗を認めることも、おのずとその探求の一端となる。

15 無知

・「知識の錯覚」。ファスナーの開閉方法を詳しく説明できる人はほとんどいない。他者の頭の中にある知識を自分のもののように扱う。(中略)他者の知識を信頼するという方法(集団思考)のお陰で、ホモ・サピエンスは世界の主人に。

・権力のブラックホール。革命的な知識はめったに中心まで行きつかない。本当に真実を知りたかったら権力のブラックホールから脱出して、時間を浪費しながら周辺をあちこちうろつきまわる必要がある。

○遠山の金さんを思い出します。市井のことは権力者の耳には入りづらい。

16 正義

○身近な正義ならまだしも、世界全体の正義を考えるのは難しそうです。

17ポスト・トゥルース

・ホモ・サピエンスがこの惑星を征服できたのは、虚構を創り出して広める人間ならではの能力に負うところが大きい。(中略)誰もが同じ虚構を信じている限り、全員が同じ法や規則に従い、効果的に協力できる。

・現実と虚構を区別する経験則二つ。「信頼できる情報が欲しければ、たっぷりお金を払うこと」「自分にとって格別に重要な問題については、関連した科学文献を読む努力をすること」。

○これは学びにおける最大の示唆。

18 SF

・20世紀のもっとも予言的なSF書、「すばらしい新世界」。

・シェイクスピアと宗教で洗脳されていたため。現代的なもののすべて退ける習慣が身についていた。

○1984のビッグブラザー的な怖さはありませんでしたが、とても考えさせれらる小説。自分さえよければ・・・?満足さえしていれば・・・?

19 教育

・人々が必要としているのは、(すでにとんでもないほど持っている)情報ではなく、情報の意味を理解したり、重要なものとそうでないものを見分けたりする能力、大量の情報の断片を結び付けて、世の中の状況を幅広く捉える能力。

・教育の専門家は、「4つのC」、「critical thinking」「communication」「collaboration」「creativity」を教えるべきと主張。(中略)最も重要なのは、変化に対応し、新しいことを学び、馴染みのない状況下でも心の安定を保つ能力。

・変化はほぼ例外なくストレスに満ちており、ある年齢を過ぎると、大抵の人は変化を好まなくなる。(中略)シナプスを配線し直すのはかなりの重労働。(中略)経済的だけでなく、社会的にも存在価値を持ち続けるには、絶えず学習して自己改造する能力が必要。

○老害にならないように。

20 意味

・人間は物語を「儀式を通じて」信じている。抽象的なものを具体的にし、虚構を現実に変える摩訶不思議な行為が儀式。

・今日人々が信じる物語や神は皆、不完全で穴だらけで矛盾に満ちている。一つの物語に全信頼を置かず、いくつかの物語といくつかのアイデンティティからなるポートフォリオを維持し、必要に応じてそのうちの一つから別の一つへと切り替える。

・人間の脳には引き出しや仕切りがたっぷりあり、ニューロンの一部は金輪際言葉を交わさない。

○相反するものを受け入れる不可思議さがここにあります。

・現実の世界では、邪悪さは必ずしも醜くない。

21 瞑想

・世の中を変えるためには行動を起こす必要があり、団結する必要がある。(中略)本当に気にかけていることがあれば、それに関連した組織に加わること。

○たしかに、一人で出来ることはたかが知れています。

訳者あとがき

・著者の使命二つ。明確さの提供と、読者に個人の力と責任を自覚させ、行動を促すこと。

○不確かな情報に振り回されないように、信頼できる仲間と共に行動できるように。

○訳者の柴田裕之さんの訳は本当に素晴らしいです。

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