ワイズカンパニー
ワイズカンパニー
野中郁次郎/竹内弘高
第1章 知識から知恵へ
・本田宗一郎と藤野道格二人の共通点、「『物事を成し遂げるためには直接的な経験』と『人と人との相互交流』が重要だと固く信じている」「未来を築くことにこそテクノロジーの役割があると考えていた」の二点。
・「ミッション(目的)」自分たちの会社ななんのためにあるのか。「ビジョン(夢)」どういう未来を築きたいと、自分たちは思っているか。「バリュー(信念)」どういうバリューや信念(びビリーフ)を、自分たちは大事にしているのか。
・ミッションとは、個人なり組織なりが担う具体的な任務。高次な目的。
・ビジョンとは、自分の手で自ら築く未来。「私たち」が築きたい未来。
・リーダーたちが企業を社会と衝突させず、調和させられる判断を一貫して下せるようになるために必要なのは「形式知」「暗黙知」ともう一つ、忘れられがちな「実践知」。(中略)実践によって一人一人の知恵が磨かれる。
・リーダーは理想主義的な現実主義者にならなくてはいけない。
・「知識はすべて暗黙知化、暗黙知に根差したものかのどちらかである。
○マイケル・ポランニー著「暗黙知の次元」
第2章 知識実践の土台
・アリストテレスは師であるプラトンと正反対の説を提唱。プラトンが合理主義の立場から、知識は論理的な思考の産物だと考えたのに対し、経験主義の立場から、感覚的な経験のみが知識の源泉であると主張。
・フロネシス(実践知・賢慮)とは「人間にとって良いことか、悪いことかに基づいて行動できる、真に分別の備わった状態」。(中略)時宜にかなった賢明な判断を下させると共に、価値観やモラルに即した行動を取ることを可能にする経験的な知識。日本語の徳(共通善や道徳的卓越性を極める生き方)に似ている。
・知識実践の起源はフロネシスに。知識実践には「行動」「文脈」「善」「目的」の四要素。
・未来の可能性を最大限に高められるよう「いま・ここ」を生きることこそ、知識実践の理想的な方法。
・メルロ・ポンティは主観的な経験は感覚的な経験から生じるとした。フッサールやハイデガー同様、西洋哲学では思惟が過剰に重んじられてきたことを批判し、人間は自分たちで動かし、形作っているこの世界に、物理的に投げ込まれた存在であると強調。
・「知る人」は「行動する人」。(中略)知識の利用によって知識は増え、洗練され、利用できる範囲が広がる。行動は知識を生む。新たな知識からさらなる行動が生まれる。知識と行動は分かちがたく結びついている。
・エナクティビズム(enactivism)。身体化された認知。(中略)環境の中にある「行動」が人間の認知の源としてばかりではなく、スキルや判断や目的意識などのような、人間の認知の現れでもあることが協調されている。
・二つの異なる学問分野(哲学と脳科学)の研究が同じ結論に到達。身体は脳機能において中心的な役割を果たしている。
○身体心理学。<心は初めからなかった。「初めに言葉ありき」という聖書の文言はあてはまらない。初めに有機体があり、そこに動きが生じ、動きから心は生まれてきた>
第3章 知識創造と知識実践のモデル
・フロネシスがSECIの上昇の原動力になる3つの特徴、「共通善」「時宜」「人」。
第4章 何が善かを判断する
・ワイズリーダーが善についての判断力を養う方法。1.経験、とりわけ逆境や失敗を通じて。2.人生経験に裏打ちされた価値観や倫理観の原則を書き出し、共有する。3.飽くなき卓越の追及。
○できれば、1の(立ち直れないほどの)逆境や失敗は経験しなくてもよい気がします。私は辛かったし、次に来る起業家の人には味わってほしくない・・・。その経験を2の「共有」で疑似体験の留めてほしいです。
・リベラルアーツ(とりわけ哲学、歴史、文学、芸術などの人文科学や社会科学)を学ぶことも、善についての判断力を養うことにつながる。
第5章 本質をつかむ
・本田宗一郎さんの言葉、「君たちは、相手の人の心を理解する人間になってくれ。それが哲学だ。哲学というのは、小難しい理屈でも何でもない。机上の空論ではないのである」。優秀なエンジニアと凡庸なエンジニアの違いは、顧客の心に寄り添えるかどうか、顧客に対して共感できるかどうかにある。
○人生のシンプルな答えは、「行動すること」「共感すること」、そのために「学ぶこと」なのかなぁ、などと考えます。
・サム・ウォルトンの言葉、「成功すると、惰性に流されやすくなる。そうならないための唯一の方法は変化を強制すること」。
・「いま・ここ」におけるその需要の変化について、一番必要とされる知識を創造できるということが「変化への対応」の本質。(中略)世界も我々自身も一定不変のものではないことを忘れてはならない。
○自分の弱さを自覚できるなら、惰性に流される前に人に会うことでしょうか。
・経営とは、直観や、ビジョン、(自分の)経験の基づくものであり、科学というよりアートに近い。
第6章 「場」を創出する
・ワイズカンパニーは「行動学習(learning by doing)に重点。行動学習が行われるのは「場」における知識の創造と実践を通じて。(中略)「場」は知識の容れ物であると同時に、孵化器。
・「場」すべてに共通するのは、参加者が文脈を共有し、「いま・ここ」の人間関係を築き、相互交流を通じて新しい意味と洞察を獲得すること。そのためには、相互交流が適切な文脈で、適切な時に、適切な環境で行われなくてはならない。
第7章 本質を伝える
・アリストテレスは、レトリックとは個々の状況に適した説得の仕方を見極める能力だと指摘。説得には「ロゴス」「パトス」「エトス」の3つの手段。
・「共感を実践させてくれるのは文学だけだ」(モーソン& シャピロ)。
・歴史は、過去と現在の因果関係を示すとともに、どのように出来事が生じたかを描き出すことで、物語同様、「なぜ」と「どのように」の両方を明らかにする。
○歴史から学ぶことは大きいですね。
第8章 政治力を行使する
・ニッコロ・マキャベリという名前は、「典型的な政治指導者が武器にする二枚舌や、権謀術数や、無慈悲さや、鉄の意志」と同時に、変革型リーダーに備わっていなくてはならない「創造性、柔軟さ、日和見主義」という要素にも目を向けさせてくれる。
・トヨタには、生き方として両極ー理想と現実、変化と安定、アナログとデジタルーを追求することが文化として根付いている。
・知識創造と知識実践(暗黙知と形式知)は二元論の両極ではなく、相補的。相互に作用し入れ替わることで新しいものが生まれる。正反対に見えるもの同士が相互に作用しあって「総合」される。
・知識の創造と実践のプロセスを促進する上で重要な役割を果たしているのは「ミドルマネジャー」。ナレッジエンジニアと呼ぶ。経営トップの理想と第一線の現実の両方を踏まえ、中範囲の解決策を策定し、部下たちに意味を理解させられるように。(中略)持続的なイノベーションに不可欠な「矛盾の解決者」。
○現場の人達にとって勇気づけられる言葉ではないでしょうか。ものの言い方ひとつですべてが変わる可能性。
第9章 社員の実践知を育む
エピローグ 最後に伝えたいこと
・アンソニー・ブラントと(作曲家)とデイビッド・イーグルトン(神経科学者)は、人間の脳には過去の経験から得られた知識を活用する「深化」の能力と、新しい可能性や未知の選択肢を探る「探索」の能力が備わっていることを発見。
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