悪の処世術
悪の処世術
佐藤優
〇ある知人と意気統合したのが、「コンビニには、結構良書がある」ということ。普段だったらチョイスしない書籍を読む良い機会になります(笑)。
はじめに
・不安が覆う社会では、強くて賢くて大いなる何かに導かれたいという願望が高まりやすくなる。多様な価値観が緩やかに共生する社会ではなく、単一の価値観による統制的な社会の方が、脅威に立ち向かう上で効率的だと感じるようになる。
第1章 ウラジミール・プーチン
第2章 習 近平
・「ある国の文明度を測る唯一の基準は、弱者に対して国がどういう態度を取るかだ」。
第3章 ドナルド・トランプ
・「ビジネスでも自己表現が可能。ビジネスも一つの芸術。鍛錬、技術、忍耐力など、ビジネスと芸術には多くの共通点がある」。
・トランプが一定の層から熱烈に支持され続ける理由は「下品力」。誰もが隠したい下品さを抑圧から解き放った。
第4章 金 正恩
第5章 バッシャール・アル・アサド
・彼(アサド)がシリアの混沌から逃げずに踏みとどまっていることも注目に値する。ある程度の剤を溜めて、混沌としたシリアから、逃げ出さないのは、自分が逃げ出せば、シリアならず者暴力集団が割拠する無法地帯となり果てることがわかっているから。
第6章 エンベル・ホッジャ
・平等を理想とする社会は、国家権力の暴力とイデオロギー統制がなくては維持できなかったということを20世紀の社会主義の国々は提示。国民の自由を徹底的に奪うことで国民を飢えさせなかったホッジャは政治指導者としては偉大といえるが、そういう国に済み続けたい人は恐らく皆無。
第7章 アドルフ・ヒトラー
・構成員がそれぞれグループの中で上手く立ち回り利益を追求することで、ワンマンなトップの方針は助長され、引き返しようのないところに行き着く。(中略)独裁政治は決して過去の遺物ではなく、指導者への忖度が生み出す「強要されない独裁」への警戒心を常に持つこと。
・ヒトラーにとっての読書は楽しみではなく、政治闘争の武器。技術的に有益な断片を拾い上げることが読書術の中心。観念の「モザイク」に適合する事実に線を引き、利用する。
〇これはある意味読書をする人は共感できると思います。いくらGoogleで何でも調べられても、上手く利用できるかどうかは数稽古がものを言います。その点においても読書はアドバンテージに。
・後世から見れば極端で、理解に苦しむヒトラーの思想も、実は当時の「知」の集積(中途半端な知識の粗暴な寄せ集めではあるが)の結果。
第8章 毛 沢東
・幅広い層の人間を集めた調査会によって、コレクティブ・インテリジェンス(集合知)を形成するべきとしている。(中略)毛沢東は同時に上級の指導機関への絶対服従を要求。可能にしたのは農民からゴロツキまでかき集めて結成した従順な暴力装置を有していたから。
第9章 ヨシフ・スターリン
・社会が自信を喪失した時、不安が蔓延した時、多様な価値観を包摂する民主主義というシステムを突き崩すような独裁体制が生まれるリスクは極めて高くなる。
第10章 カダフィ大佐
・民主主義の根本には「人権」。対立するのが「神権」。(中略)アラブ諸国ではいまだ「神権」の意識。(中略)独裁者は神から神権を授かり統治者としての権威を持つ。中東で独裁国家が生じやすい構造。(中略)混乱した民主主義よりも安定した独裁を受け入れるのが多くの中東の現実。
第11章 金 日成
・金日成はスターリンと同じく「普通の人々を幸せにするためには、人々から自由を取り上げてしまわなくてはならない」と考えた「愛の思想」を持った独裁者。
・側近たちが、間違った情報しか金日成の耳に入れていなかったのだと。
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