ミラーニューロンの発見

ミラーニューロンの発見

マルコ・イアコボーニ

第1章 サルの「猿真似」

・他人のしていることや考えていることや感じていることを人間はどうしてわかるのかの仕組みは誰にも説明できなかった。(中略)人間は脳にある特殊な細胞の集まりのお陰で、他人を極めて微妙なところまで鋭敏に理解できる。それらの細胞群を総称して「ミラーニューロン」という。

・ミラーニューロンは、他人の行動を認識させることにより、意図を認識させ、理解させている。(中略)他人の心の問題(他我問題)は哲学者が考えを巡らせても進歩はほぼなかったが、ミラーニューロンについての研究は、人間同士が互いを理解し合える仕組みに関心あるすべての人々に「思考の糧」を与えた。

・カノニカル(正準)ニューロン。「把持行動」をとる時に発火する細胞であると同時に、掴むことのできる対象を見ただけでも発火。(中略)運動皮質のF5野にあるミラーニューロンとカノニカルニューロンの発火パターンを見れば、知覚と行動が脳内で分離していないことは明らか。コインの表と裏。

・ミラーニューロン発見の数年前の実験にて、F4野での新たな発見。視覚受容野と触覚受容野の反応は、身体の周囲の(空間地図としての)「身体近傍空間地図」を形成。同時に腕の動きも誘発。二つの異なる機能(感覚機能と運動機能)が同じ一群の細胞に表出。こうした生理学特性は、身体の周囲の空間地図が、その体のとれる可能な行動の地図であることを示している。

・計算論的神経学者のマイケル・アービンの仮説、「ミラーニューロンが言語を司る神経系の重要な「先駆体」」。アービンによれば、サルの持つ比較的単純なミラーニューロンシステムから、高い抽象度を支えるはるかに洗練された人間の脳の神経系への進化的発達において、パントマイムは決定的な役割を果たしている。

○物をつかむというパントマイムでは、サルのミラーニューロンは発火しないそう。

第2章 サイモン・セッズ

・アンドルー・メルツォフのテスト。新生児が簡単な手ぶりや顔の表情を模倣することを実証。もっとも幼かったのは生後41分。

・ミーム。「遺伝子によらない手段、特に模倣によって受け渡されていくと考えられている文化の一要素」。ミラーニューロン発見にまつわるミーム。ヴィットリオ・ガレーゼがコーンアイスを舐めている時にサルの脳内のニューロンが発火し始めたというもの。

○根も葉もないうわさが駆け巡ったそうです(笑)

・模倣の主要な目標の一つは社会的関係における自分と他人との「親密さ」の具現を促進すること(ではないか?)。

第3章 言葉をつかみとる

・身振りは概して二種類に大別。「アイコン(表象)」と「ビート(拍子)」。(中略)アイコンは主に「聞く側・見る側」に、ビートは「話す側」にとって有益。(中略)語り手がアイコンとしての身振りの際にミラーニューロンが活性化。

・ブローカー野(運動性言語中枢)が模倣にとっても非常に重要な領域であり、ミラーニューロンを含んでいるという事実(中略)。心のプロセスは身体によって形成され、その過程での身体運動と周囲の世界との相互作用の所産として、どのような知覚経験と運動経験を得たかによって形成。「身体化された認知」と呼ばれ、特に言語に適用した理論を「身体化された意味論」という。ミラーニューロンの発見は、こうした認知や言語が身体化された仮説を強力に援護。

身体心理学

・言語におけるミラーニューロンの役割は、言語を通じて我々の身体行動を個人的な経験から社会的な経験に変換し、人間の仲間全体で共有されるようにすること。

・発声のミラーリング。楽しさや勝利を表す発声を聞くことで、笑う時に活性化されるのと同じ運動野が活性化されることが確認されている。

○自宅で仕事をしている際に聞こえてくる家族の笑い声がモチベーションを掻き立てます(笑)

第4章 私を見て、私を感じて

・運動の同調性を強く示しているカップルの強い親密性、面接官の優しい態度ー身体を前に乗り出し、微笑み、頷くーは同じ行動を誘発。運動性の「擬態」はコミュニケーションの促進や知覚の役割。

・考える間もなく自動的に他人の表情のシュミレーション(脳内模倣)を行い、ミラーニューロンは大脳辺縁系に位置する感情中枢に信号を送る。信号によって誘発された神経活動が、観察された表情と関わりのある感情を我々に感じさせる。

・誰かが自分を真似している時、その人を好きになる傾向。

・顔の筋肉組織の変化によって感情的な経験が形成されるとする「顔面フィードバック仮説」の長い歴史。チャールズ・ダーゥインは「感情を表に出すことによる自由な表現は、その感情を増幅する。一方、感情をできるだけ表に出さないよう抑制することで、その感情は和らげられる」。と記述。ウィリアム・ジェームズは、「最も厳密な意味で、私たちの内面が肉体の枠に結び合わされている事」と。

第5章 自分に向き合う

・ミラーニューロン領域は視覚刺激にも聴覚刺激にも反応する多機能性を持つ。(中略)ミラーニューロンが「自己に関連する」多様な刺激をコードし、自己認識(及びそこでの自己の抽象的な表れ)におけるミラーニューロンの重要性がより確かに。

第6章 壊れた鏡

・子供の感情的な共感性が高ければ高いほど、その子供が感情を顔に表している他人を見ている時のミラーニューロン領域は強く活性化する。(中略)社会的能力があるー友達がたくさんいて遊びの約束もたくさんあるーと報告されていた子供は、模倣の間にミラーニューロン領域が強く活性化荒れる子供でもあった。

第7章 スーパーミラーとワイヤーの効用

・ある実験。片方の被験者群は大学教授を頭に浮かべて書き出す指示、もう一方はサッカーのフーリガンについて。その後、一般知識問題を解答させる。一般知識のみの対照群と比べて、「大学教授」群は高い成績、「フーリガン」群は低い成績に。(中略)無意識の模倣は何らかの神経ミラーリングの表れ。

・人間が始終やっている複雑な行動を細かいニュアンスまで模倣するには、もっと広いミラーニューロンシステムの概念が必要。通常の典型的で単純なミラーニューロンの制御と調節を役割とする別種のシステムを考慮すべき。

・てんかん患者に対する電極埋設位置が前頭葉にあり、そこのミラーニューロン領域とも連結している眼窩前頭皮質・前帯状皮質・前補足運動野にあるミラーニューロンがスーパーミラーニューロンではないかという仮説。

・自己の行動に対するコーディング(発火率を上げる)と他者の行動に対するコーディング(発火率を下げる)の違いは、スーパーミラーニューロンの識別の表れかもしれない。

第8章 悪玉と卑劣漢―暴力と薬物中毒

・幼少期のメディア暴力の視聴と攻撃行動は、30才時の犯罪性と相関関係あり。メディア暴力が模倣暴力を誘発。

・他人の行動を見ている間のミラーニューロン活動の形成を経験が左右する。

第9章 好みのミラーリング

・人間は自分が本当に思っていることよりも、面接者や進行役が聞きたがっていそうなことを答える傾向。

第10章 ニューロポリティクス

・さしあたって特別な目標や課題が手元にない時、ぼんやりと夢想している時や何もしないでいる時の支配的な状態を「デフォルトモード」と定義。特定の課題によって注意が必要になると、この神経系の活動は停止。

・ミラーニューロンは社会的関係を背景にして展開される行動に特に関心を寄せる。(中略)大半の人間は常に社会的関係のことを考えている(デフォルトモード)。(中略)脳内にはミラーニューロンシステムに加え、自己と他者に関わるもう一つの神経系―デフォルトネットワークーがあり、そこでは自己と他者がそれぞれに独立。

・ミラーニューロンが自己と他者との身体的な側面を担当しているとすれば、デフォルトネットワークは自己と他者との関係の抽象的な側面を担当。各人が属している社会やコミュニティで各人が果たしている役割。

第11章 実存主義神経科学と社会

・イスラエルの俳優の受賞スピーチ。「神経学者は(ミラーニューロンの)特性をとんでもないものだと思っているが、「私たち俳優」に聞いてみればよかったのだ。私たちはずっと前から、そういう細胞のようなものが自分たちの脳の中にあるに違いないと知っていた―というより「感じていた」ーのだから!」

○俳優経験者ならではのスピーチ、素敵です。

・私たちの脳内では他人を経験に基づいて、意識する間もなく、自動的に理解しているとしか思われない。現象学の父と言われるエトムント・フッサールはこの現象を「結合」と称した。

・間主観性におけるミラーニューロンの役割は、純粋な「結合」というよりも、「相互依存の許容」と表現。

・ミラーニューロンの研究は「実存主義神経科学」。(中略)ミラーニューロンは我々が実存しているという事、人と関わり合っているという事を理解させることに特化したかのような脳細胞。

・我々の神経生物学的機構(ミラーニューロン)は、我々を他者に深く関与させる。(中略)生まれつき共感を覚えるように出来ており、だからこそ社会を形成して、さらに住みよい場所に変えていくことができる。

・共感を生むように配線されているのに起きてしまう「残虐な世界」。3つの主な要因。模倣暴力、顕在意識と潜在意識の非相互作用、ミラーリングと模倣の効果が局地的であること。

○ミラーニューロンがある、と踏まえたうえでのやり方は変わります。

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