「日本人」という、うそ

「日本人」という、うそ

山岸俊男

第1章 「心がけ」では何も変わらない!

・人間の脳が最初は白紙状態だったとしたら、厳しい自然環境の中で人類は生き延びていけない。(中略)人間の心が「タブラ・ラサ(白紙状態)」であるわけはない。

・いじめ問題が起きているクラスでは、多くの生徒たちが傍観者的態度。対して、いじめが起きていないクラスではそうした傍観者的態度を取る子供が少ない。

第2章 「日本人らしさ」という幻想

・日本の社会という「環境」が変わることで、生きる上での「戦略的行動」も変わり、結果、「日本人らしさ」のあり方も急速に変貌してきた。

・「日本人らしい」と思われていた謙虚さとは、本来的に持っている心の性質ではなく、日本の社会にうまく適応するための「戦略」として生まれてきた態度。

第3章 日本人の正体は「個人主義者」だった⁉

・相手の行動から「相手の意図」を推し量る性質が人間にあるために起きる認知の間違い、「帰属の基本的エラー」。

・「人を見たら泥棒と思え」という日本人に対して、アメリカ人は「渡る世間に鬼はなし」に近い行動をしている。

第4章 日本人は正直者か?

・「帰属の基本的エラー」のため、鍵をかけない農村の人達はきっと心もキレイなのだろうと考えてしまう。

・集団主義社会とは社会の仕組みそのものが人々に「安心」を提供することによって、いちいち他人を「信頼」しなくてもいいようにしてくれる社会。

・農村のような集団主義社会は本質的に「信頼」を必要としない社会であり、逆に都会のような個人主義的社会とは本質的に「信頼」を必要とする社会。

・日本人は、相手が自分の身内であればそれだけで相手を無条件に信用していいと考えるが、「よそ者」に対しては最初から「泥棒ではないか」と警戒感を抱いてしまう。「よそ者」とは自分を騙し、利用しようと考える油断のならない存在。

第5章 なぜ、日本の企業は噓をつくのか

・人間の心はおかれた環境によってその働き方を変える。日本の社会にいれば自己卑下傾向が現れ、アメリカの社会にいれば自己高揚傾向が現れる。

・日本人が「他人を信じないほうがいい」と考える根拠は、「安心社会」とは、「正直者である」「約束を守る」といった美徳を必要としない社会であったから。

○身内だからということ、得をするから、というより損をしないようにと、やっているだけ。

第6章 信じる者はトクをする?

・「囚人のジレンマ」。二人の人間が互いに協力し合えばいい結果が出るのに、相手を信じられないために双方共損をしてしまう人間関係。

・「人間はみな信用できない」と考える「低信頼者」と、「人間にはいい人もあれば、悪い人もある」と考えるリアリストな「高信頼者」。(中略)「高信頼者」は、他人と協力し合うことで得られる成果は、裏切られる悔しさよりもずっと大きいことを知っている。

第8章 「臨界質量」が、いじめを解決する

・利他的な教育を受け、その精神が叩き込まれていればいるほど、他者を疑ったり、裏切ることはできず、利己主義者たちは「お人好し」たちをいいように利用しつくすことが可能。

・信号無視をする人の比率が「ある一線」を超えるとほとんどの人が信号無視をして横断歩道を渡る。社会的ジレンマの多くは、他者がどの程度協力行動を取るか、非協力行動を選んだかによって結果が変わる潮目のことを「臨界質量」と呼ぶ。

・正直者がトクをする社会を作っていけば、他者とのあいだに協力関係を結ぶ人たちの数は増えていき、「臨界質量」を突破したらそこに信頼社会のネットワークが生まれてくる。

第9章 信頼社会の作り方

・「安心社会」が提供する安心や安全とは「未来への可能性」を犠牲にすることで成り立っている。

第10章 武士道精神が日本のモラルを破壊する

・ジェイソン・ジェイコブズは、人類には二種類のモラルの体系があることを発見。「市場の倫理」と「統治の倫理」。それぞれ「商人道」と「武士道」。

・武士道は武家という閉鎖社会、安心社会の中で発達してきた倫理。主君に対する忠誠や伝統を墨守する精神であり、信頼社会のモラルにはなり得ない。

・武士道(統治の倫理)の前には、全ての利潤追求運動は「悪」になってしまう。

・「統治の倫理」は「権力者のモラル」。社会体制を維持するために権力者が守るべき道徳律が武士道。

「市場の倫理」は物を作ったり売ったりする「大衆のモラル」。共存共栄のためにお互いに嘘をつかず、信頼し合い、利益を分かち合う姿勢こそが必要であると説くのが商人道。

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