「人間」としての生き方 現代語訳『東洋倫理概論』を読む

「人間」としての生き方 現代語訳『東洋倫理概論』を読む

安岡 正篤 /武石 章 

 

緒論

・漢の時代の『説文解字』(漢字の成り立ちを説いた書)には、王の字の「三」は、天・地・人三才を表し、真ん中の「━」は一貫して実現するという意味を示すものであると説かれている。

・三才と人間の生涯。人間の一生を「三才」(天・地・人)に当てはめて考えると(中略)早年は天、中年は人、晩年は地。

・早年の倫理と志尚、中年の倫理と敬義、晩年の倫理と立命。

 

本論

第一遍 志尚 早年の倫理

第一章 孝悌

・孝によって我々ははじめて真の意味における人となり、あらゆる道徳的行為はここから発する。

・やがて親を養い、親を喜ばせようと思う孝心が無意識的であっても心の底に潜んでいるのでは。丁度世の中の父であり、夫である者が、その妻子のため心ならずも職業や給料につながれるように。

・仮に「孝」が人間を縦に統一するものとすれば、「悌」は人を横に統一するもの。孝悌がそろって人はその心身人格が散りバラにならず一つに。

・孝悌こそ仁という徳を完成させる根本。

 

第二章 師友に対する敬愛

・師と友とは第二次の父母兄弟。「骨肉の親」に対して「道の親」。

・人は自分を理解してくれるもののためには身命を捧げても惜しくはないという感恩の情を意識。(中略)真の師と友とはこのありがたい知己に他ならない。

 

第三章 英雄哲人に対する私淑

・道心に結ばれる師や友は決して時と所を同じくする人の間ばかりとは限らない。我々はまたよく万里の彼方、千年の昔に師や友を得ることができる。(中略)常に古人に私淑し研究しなければならない。

・強烈な「生きようとする意志」の権化。一途にやみくもに生きようとする意志とこれをなんでも矯めて行こうとする志向との深刻な葛藤、人生の厳粛な問題が盗跖編に。

・子張と満苟得と無約。欲求あっての上での克己。欲求を無視して克己が有るという道理はない。

 

第四章 恋愛

・夫に寄り添っては夫をたて、夫の陰に隠れて自分の力を尽くし、夫が成功することで自分自身満足している。

〇時代が文化を作る。でも、歴史は変わる。

・恋と音楽と酒とほど人間に好ましくも、また危ういものはない。

 

第五章 至尊及び社稷に対する忠愛

・官司の本質は私欲に走り社会生活を乱れさせることがないように民を正し、治めること。これを特に「政治(政は正)といい、その最高の政治組織体を国家という。(中略)国家は人間の本来の自然のままの規範的な発展として出来上がったもの。国家についておのずから敬虔の年を抱き、尊貴の情を催さないではいられない。

・孔子は、我が身の振る舞いに恥じるところがあるものが士(立派な人間)ということが出来ると説いている。孟子も、もし羞恥心のないことを本当に恥ずかしいと思うようになれば、ひとりでに(人から)恥辱を受けることはなくなるものと説く。

・顧炎武は、人間の心が清らかでなく、礼に背き、人として踏み行うべき道を犯す原は全て無知から生まれるもの。士太夫の無恥を国恥と記す。

・経済をして真に経済であらしめるのがすでに道徳である。

〇経世済民。

・人類結合の最終形式とした国家も、実は君民を統一した有機的組織ではなく、単に君民を集合した機械的体系。(中略)西洋君主政治の倒壊は必然の運命。

 

余論 学問

・啐啄同機。「教学相長ず」「教学半ばす」。

〇人に教えることが最大の学びですね。

・学問の第一義は「道心の長養」「道徳の発揮」。

 

第二編 敬義 中年の倫理

第一章 家庭生活

・宗教も道徳も法律も本来一体であるべきものであり、事実昔はどこの国の古代史も示す通り三者不可分だった。

 

第二章 社会生活

・良心の指示に従って、自分にふさわしいと思うことに向かって勤労すれば、歩むべき道は開け、才能が磨かれば、衣食も自ずからできる。

・いかなる職業でも、仁を求めて仁を得ぬことはない。その職業を通じて仁を行うことが出来ることが偉大なほど、その職業は貴い。

 

第三章 独の生活

・すなわち厭世は素直な厭世にとどまらず、嘲世、任誕(でたらめ)となった。

〇力がない故の悲しさ。

・真に自己を社会化するためには常に自己を深め、真に人を愛するにはかえって一人を楽しむものでなければならず。浅薄な利他と同情とは最も徳の賊。

・真の隠逸は、「三軍も凌ぐことがなく万鍾(多くの俸禄)もその心を動かすことができない快活の人」。

 

第三篇 立命 晩年の倫理

第一章 境遇の自得

・人々には命があると同時に「命は我より為す」。

 

第二章 生死の覚悟

・生きようとする意志は人生の原動力だが、ただ生きるだけでは動物的な境涯に過ぎず、人格において初めていかに生きるべきかの内面的な要求を生ずる。(中略)「いかに生きるべきか」の内面的な要求に基づいてくると、自己を保存し種族を維持しようとする努力に新たな自覚を生ずる。

・(芭蕉は)昨日の発句は今日の辞世、今日の発句は明日の辞世、自分が生涯に言いすてた句の数々、一句として辞世でないものはない。

 

第三章 報謝の生活

・老荘思想は道徳を否定するものでなく、かえってその期するところは誠の生活、人間の至純な報謝の生活にあることを察しなければ。

 

 

 

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