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自己の心理学を学ぶ人のために

梶田叡一/溝上慎一[編]

 

1 社会心理学

・北米のヨーロッパ系アメリカ人の文化と日本文化の中にある対人関係の成り立ちと主体性の比較から、北米での文化的自己観は「相互独立性」優勢であり、日本での文化的自己観は「相互協調性」が優勢(Markus & Kitayama, 1991)。

・人口密度が低く、移動が頻繁で、狩猟採集に依存する経済体系を歴史的に持つアメリカでは独立性が優先されやすく、逆に人口密度が高く定住型の農耕に依存する経済体系を歴史的に持つ日本では社会の協調性が優先されやすい(北山, 2010b)。

 

自己意識研究メモ1 

・(南博は)アメリカ人ならば自分の失敗は失敗として認め、他者からの笑いを当然のものとして受け止めるであろうが、日本人の自嘲は、表面的には反省と自罰の心理が働いていうように見えるにせよ、実際には自罰を先取りすることによって他者から受ける罰を軽くし、免れようとするエゴイズムが潜んでいる、とする。

○敗戦後の「進歩的文化人」のにおいが感じられないではない、と筆者(梶田叡一)。それもあるけど、奥深いですね。

 

2 人格心理学

・自己概念の変容を迫られるような経験(衝突を引き起こす刺激など)こそが学習あるいは成長の過程である(Lecky, 1945)が、既存の自己概念を揺るがす経験を人は意識することを拒否したり、歪めて意識したりする。

○都合の悪いことは信じたくなかったり、捻じ曲げたり。だからこそ、結論を出す前に一息つくことが大事。

・リデンプティヴ・セルフ(redemptive・self)とは、「ネガティブな体験・出来事を受け止め、それを乗り越えて後世のためにポジティブな未来を志向しようとする自己」。マクアダムス(McAdams, 2006)はナラティヴ・アイデンティティをリデンプティヴ・セルフと表現。悪いものを良いものに変え、ネガティブな経験・出来事もポジティブな未来につなげることが出来るといった救いの物語。

・マクアダムス曰く、redemptiveの意味は「ネガティブでマイナスになっている部分を0に戻し、さらにプラスにしていくこと」。リデンプティヴ・セルフとは「ネガティブを乗り越えてポジティブを目指す自己」ということ。

 

3 認知心理学

・過去の自分についての記憶は、自己知識を構成する重要な要素の一つであるが、現在では、そうした過去の記憶さえもその都度の想起の文脈によって再構成され、変容していくものだと考えられている。(Conway & Pleydell-Pearce,2000; Ross, 1989; Schacter, 2001)。

 

6 心理臨床・精神分析

・ハーマンスら(Hermans, Kempen, & van Loon, 1992, pp. 28-29)は客体としての自己【Me】を一方で認めながらも、他方で「ポジション(position)」という概念を導入してMeを主体化する。主体としての自己【I】が、ある「私(Me)」のポジションを取って(Iポジション)、Meに語る主体の「声」を授ける。そして主体化されたIポジションはそこから見える自己世界を語る。

・主体としての自己【I】の一般水準においてではなく、個別のIポジションの水準において、Iポジション同士の対話による結合を重ねていくしかないもの、たとえば中央政府の一極集中的な力学ではなく、地方分権による地域支配、それが結果として全体の秩序となるような分権的な力学で理論化。

○これは良い例えだと思いました。ピクサーの名画、「インサイド・ヘッド・」を思い出しました。

 

7 研究法

・佐伯(1986)は、「だからどうだっていうのだ(so what ?)」という問いをあえて問うことで、実践と説明体系への実質的貢献が保たれた「面白い研究」ができると述べている。

○so what、師匠によく言われました。肝に銘じています。

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