虚偽検出
虚偽検出:嘘を見抜く心理学の最前線
P.A. ギヨンゴビ、A. ヴレイ 、B. フェルシュクーレ
Section 1 虚偽検出:確立された手法
・DePauloら(2003)は、158種類の行動についての1,338の推計値についてメタ分析を行った。(中略)たとえば、嘘をつく人は視線を回避すると人々は信じている。ところがメタ分析は、視線を回避するのは、嘘と関係がないということを示した。
・広く信じられているにもかかわらず(Strömwall, Granhag, & Hartwig,2004)、嘘をつく人は、そわそわもせず、頻繁に姿勢を変えたりせず、自己の体をさすることもしなかった。
○嘘をつく行為は、非言語コミュニケーションの「発信」を意識するということ。非言語が漏洩するのを防ぐということでしょうか。
・日々の生活における対面での虚偽判断は、言葉と声の特徴に重きが置かれていることを示している。これは、世界58か国の人々が、視線そらしなどの多くの規格的手がかりをとおして嘘を検出できるという事実(Global Deception Research Team, 2006)とは異なるが、真実である。
○目をそらしたから嘘をついていることにはならないというデータが有っても、ステレオタイプでは嘘をつく人は目をそらすよね、と。
Section2 最近の挑戦
・筆者らは、嘘に関する信念には異文化間でのかなりの一致がみられると結論づけた。特に、虚偽の指標として視線回避が異文化間での強固な信念であると強調した。
・視線回避というのは世界中で共通する信念であるが、メタ分析によってこの信念が間違っていることが示されている。
・虚偽についての言語的手がかりについては、少なくともいくつかの信念は、虚偽の客観的手がかりに関する研究と一致しているようである。
・世界各国で行われた調査では、回答者の多くが、嘘をついている人は長く話すという信念を述べた。供述の長さには、真実と嘘で違いがみられないというメタ分析の結果は、この信念に反する結果である。
・専門家もまた、嘘つきは、視線回避、身体の動き、発話の乱れによって虚偽を露呈するというステレオタイプを過信している。
・手や指の動きについては、囚人は、これらの行動は嘘をつくときには減るという信念を述べた。この信念の正しさは、虚偽の実際の手がかりに関する研究で支持されている(Vrij,2008a)。
・囚人は、言語的手がかりは非言語的手がかりよりも役に立つと信じていた。研究では、この信念の正しさは支持されている(たとえば、Vrij,2008b)。
・MatsumotoとKudoh(1993)は、日本人学生はアメリカ人学生と比較して、笑顔を社会的適切性を示すために多く用い、真の嬉しさや喜びの感情を示すためにはあまり用いないという表示規則を見いだした。
○25年前の日本人と比べると、今の若い人はちょっと違うかもしれません。
・行動に関する文化差バイアスが、容姿風貌によって引き起こされるバイアス以上に、虚偽判定に影響を及ぼしうることを示唆する点において興味深い。
・Nishiyama(1995)は、ビジネス交渉の研究において、たとえば、相手方のメンツを守るためにうなずくといった、日本人のある種日常的なビジネス上の行為が、アメリカ人観察者には人目を欺くものと受け取られていることを見いだした。そういった許容性に対する考え方の差が、人々の嘘に対する心構えに影響を及ぼす。
・雑談に対する期待には、文化差が存在する。たとえば、児童書「くまのパディントン」がドイツ人の読者のために翻訳される際には、雑談という言葉の存在しないこの国の特徴に合わせ、雑談の全部のくだりが省略されなくてはならない(House,2006)。雑談に慣れた者にとっては、そういった省略が冷たいものに感じられ、失礼なものにさえ感じられうる。
・権威があると感じさせる人は受け手が何を記憶するかに影響を及ぼしうる。特に、人々は、強力な役割を有すると感じられた人によって示された話により従う傾向にあり(Skagerberg & Wright,2008)、(後略)。
○嫌な言い方だと、権力に弱い、でしょうか。
Section3 虚偽検出の改善:新たなアプローチ
・被疑者の経験に関する研究は、熟練の犯罪者であるほど、彼らはあまり話そうとせず、面接がさらに困難になろうであろうということを示唆している。
○黙秘。
・熟達した被疑者は無実であることについて取調官を説得するのは彼らの仕事ではなく、むしろ、彼らが犯人であることを証明する証拠を見つけるかどうかは警察の責任である、ということを理解していることを指し示している。
・嘘をついている人が認知的負荷を経験しているときには瞬目は減少し、嘘が終わって認知的負荷が減少したときには瞬目が増加する補償効果が起こることを示した。
監訳者あとがき
・日本ではポリグラフ検査が、有罪立証の補助を目指して用いられる傾向があるのに対し(そのため罪を犯した者を取り逃がすリスクは多少高くても無実の者を有罪にするリスクの少ない隠匿情報検査を用いる)、アメリカでは、被疑者を絞り込むために用いる(そのため無実の者も引っかかる可能性はあっても、罪を犯した者を取り逃がすリスクの少ない対照質問法を用いる)といった文化差が存在する。
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