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物語は人生を救うのか

千野帽子

 

第1章 人間は派手なできごとが好き?

・犬が人を噛むより、人が犬を噛む。蓋然性の公準から逸脱した話は物語価値を生む。「当たり前すぎてだれも言語化=可視化=意識しなかったことを言葉にして前景化する」のは文学理論の仕事の出発点。

○言語化すると見えやすくなる。

 

第2章 それ、ほんとの話?

・人は虚構表象(フィクション)の中のできごとに対しては、必然性を求める傾向。アリストテレスが指摘。対して非虚構表象(ノンフィクション)のなかのできごとには素直に驚き「事実は小説より奇なり」として受け入れる。<奇>=「報告価値がある」ということ。

・そもそも人は<奇>すぎるものをフィクションに求めていないのでは。

・嘘は実話を装って流通するが、フィクションは公然とフィクションとして流通する。

 

第3章 僕たちの人生に必然性はあるのか?

・椅子のデザインの話。雑誌のコピー文。「長い歴史の中で磨き抜かれた必然性」。必然性という無時間的な概念は「長い歴史の中で磨き抜かれ」る必要はない。たまたま生き残ってきたデザインを後付けでそこに生き残った「必然性」があることにしてしまう。

○皮肉の利いた洞察。嫌いじゃないです。

 

第4章 人生に本筋はあるのか

・アルフォンス・アレ「テンプル騎士団員たち」。壮大な核闘劇と思いきや、伍長の名前。

・フレドリック・ブラウン「四人の盲人」。密室殺人の謎解き。犯人は象。

・自分の人生に「本筋」と「脇道」の違いは存在するのか。

・群盲像を撫でる。話の本筋、教訓はおおむねハズレではないが常に正しいとも限らない。

○何が本筋か、大事なのかはその人によるということ。人間関係の難しさの一端がここにあるのかも。

 

第5章 自分の動機を自分は知らない

・「ほんとうのこと」と「ほんとうらしいこと」は違う。フィクションは「ほんとうらしいこと」を必要とするが、ノンフィクションはそれを必ずしも必要とはしない。

・人間は自分の行動の動機を語ると「どこかで聞いたような話」になってしまうのでは。

・行動の動機をはき違えて把握してしまうということは起こりうる。

・アメリカの心理学者ジュディス・リッチ・ハリスは、子どもの人格形成の幼児期において養育者が与える影響は決定的だという「子育て神話」を批判。進化心理学などの知見をもとにデータを再解釈。一般に言われているより親の影響力は(好影響も悪影響も)少ないと主張。

・「子育て神話」は三つのものを軽視。「遺伝」「子から親への影響」「学童期・思春期における仲間や同級生の影響」。

・カナダの心理学者アン=マリー・アンバートの報告。大学生に対しての質問、「何が最もあなたを不幸にしたか」に対して、「親の好ましからぬ対応・態度」との回答は9%。「仲間たちからの邪険な扱い」との回答は37%。

○だからこそ、親は子供を信じて守ることが必要なのかも。そして一人の人間として子供を敬うこと。

 

第6章 ライフストーリーの構築戦略

・手持ちの脚本、図式のレパートリーにないことが起きると、人間はフリーズすることがある。

・暴力というのは、加害者にその意図がなくても、単なる知識不足で起こってしまう。親切と暴力は両立しうる。

・ストーリーは、特定の立場から見たストーリーに過ぎない。

・人を憎むというのは、その人に自分の感情の支配権を受け渡してしまう事。

○過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる。他人は「私」のために生きているのではない。

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