悪人列伝 近世篇

悪人列伝 近世篇

海音寺潮五郎

日野富子

・「上の好むところ下おのずから風をなす」という中国の諺。人間の本性が変わらない限り真理性は失われない。世間は支配層の真似をするもの。

松永久秀

・歴史は元来が抽象的に記述され、文章はごく抽象的なので、重立ったことばかり記述。人間の日常の動作や言語の上にただよっている雰囲気はとんでしまっている記録を基にしているので、よほど特異な、たとえば秀吉のような人以外は、明るさや愛嬌のない人物にしか書けないことに。

○歴史小説の面白さはここにあり、の中で、秀吉の底抜けさよ。

陶晴賢

・晴賢は悪人の素質のない人だったと思えるが、癇癪持ちで浅慮、武将としては優れた素質も持っていたのに、元就の術中に。上には上、役者が違うと言えばそれまでだが。

宇喜田直家

・人間はどんなことをしても、その持っている本来の性格以外のことはできない。

○切羽詰まればまさに。その時、少しでも善に留まれるか否かも重要な気がします。

松平忠直

・忠直は一種の狂人。徳川家には狂気的素質のある人が多い。(中略)徳川家に伝わる狂暴性が(環境と相俟って)際限なく長じたもの。

○遺伝が発現するかどうかは環境次第→「善と悪の生物学(上)」

徳川綱吉 

・極端に走る人間は、善事に対してであっても危ないものを本性に。狂信者の素質。芸術家や学者や宗教家にはそのために偉大な業績を成し遂げることもあるが、政治家や人の君なる者には適さない。

・法律には自制作用はなく、ひたすら実行されることを求めるのが本質。さらに役人どもの功績主義がこれを手伝う。苛烈なものになって行き、ついには立法精の精神と相反するところまで行っても停止しようとしない。あらゆる法律悪はこの二つから生じ、この害悪を免れることはできない。

○適度な改正が必要であり、でも既得権益でしなかったり。

・綱吉の遺言は「三年父の道を改めず」という論語の教えはあるが、場合による。学問のし損ない。

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