あなたへの社会構成主義

ケネス・J・ゲーガン

 

第1章 伝統的人間観の行きづまり

・自身たっぷりの主張の裏には致命的なもろさーその主張を作り上げている語は全て非常にあいまいであるという事実ーが隠されている。断定や自信は、疑問をぶつけない限りにおいてのみ保たれるもの。

 

第2章 共同体による構成ー事実と価値

・社会構成主義は、自己、真実、客観性、科学、道徳などを、全て無効にしてしまおうとしているのではない。それをどのように理解し、実践してきたかに疑問の目を向ける。そうした過去をより明るい未来へと再構成しようとしている。

 

第3章 対話の力ー明日を創る試み

・語り(ナラティブ)を構成する基準。収束ポイント、収束ポイントに関係する出来事、出来事の順序、因果的連関。(中略)特に真実味を持たせるのに重要なのは、「収束ポイント」と「因果的連関」。優れた小説などの芸術は真実を語るためのお手本に。

 

第4章 社会構成主義の地平

・社会構成主義は、何よりも「自省」と「解放」を目指している。当たり前に思っている世界を反省する事で代替案を自由に考えることが出来、解放の可能性を追求する事で新たな問いを刺激する。

・感情は、服の着方、ゲームやダンスにおける動きと同じような「行為のレパートリー」。

○この考え方、一見ドライに見えて、とてもやさしい考え方だと思います。お互いの気持ちが楽になる。

 

第5章 「個人主義的な自己」から「関係性の中の自己」へ

・「個人主義的な自己」という想定は、社会にとって有益であると同時に、深い欠陥も。

○自分本位、自己満足のみを追求する事は互いの関係性を軽視してしまうという事でしょうか。

・社会構成主義は、「事実」や「善」の起源を社会的なプロセスの中に位置づけ、「知識」は人々の関係の中で育まれるものであり、個人の「心」の中ではなく、「共同体的な伝統」の中に埋め込まれていると考察。「個人」よりも「関係」、「孤立」よりも「絆」、「対立」よりも「共同」を重視。

・文化心理学的な見方では、教育のプロセスの重点が、生徒の「心」から「関係」ー教師と生徒、生徒同士ーへ。ヴィゴツキーは、学習の「場」は、人と人の関係的行為の網の目に存在するものであり、大切なのは「共にする」事だと考察。

○ZPD(Zone of proximal development最近接発達領域)。

 

第6章 理論と実践(1)ー対話の持つ可能性

・人はある「理解の地平」ーあらかじめ持っている偏見ーからテキストに取り組む。(中略)ただし、理解の地平は、対話的な関係のテキストに加わることによって変化・拡大し得る(Hans Georg Gadamer)。対話的な関係を通して「地平の融合」が達成される。

・統合、団結、同胞愛、連帯意識、共同体などがある所には、必ず他者性が隣り合わせになっており、そこに対立が生じる。

・特定の共同体を超えて、普遍的にあてはまるような「唯一の正しい答え」などない。多様性や差異は、人間の存続にとって最も有効な戦略であるとさえ言える。

・変化力を持つ対話は、相手に行為を調和させようとする努力から生まれる。(中略)調和を生み出す最も重要な方法は「共同構成」と呼ぶことが出来る。(中略)ある人の行為が他者の行為の一部を含んでいる時、共同構成が起こる。

○ミラーリングに通じます。

・共同の現実へ向かうためのもっともシンプルな方法は共通の「大義(cause)」を見出す事。

○長州と薩摩を結ばせた坂本竜馬を思い起こします。

 

第7章 理論と実践(2)ー心理療法・組織変革・教育・研究

・(セラピーにおける)解決へと向かう語りを生み出すための「奇跡の問い」。より明るい未来にクライアントの目を向けさせるもの。

・「内化された他者」(Karl Tomm)。感情や態度は、他者との関係において獲得されたもの。

・(組織変革における)「価値を認める問い」(David Cooperrider, at al.)。どんな作品の中にも「美」を見出すことが出来るとする考え方から発生。

・教育における三つの展開「反省」「共同的実践」「多声性」。

 

第8章 理論と実践(3)ーマスメディア・権力・インターネット

・テクノ・コミュニティによって人工的に「一体感」が作り出され、人々はその感覚を思う通りに利用。目の前にいる現実の他者に直面しようとせず、自分自身の願望を仮想空間の他者に投影。個人的な願望に基づいて他者をイメージする時ー「他者が本当の他者ではなく、実は自分自身である時」ー、実はコミュニティから疎外されているのではないか。

○自己愛のみに満たされるのがネットなのかもしれません。1999年の本、あらためてすごい!

・社会構成主義は、新たな行為の可能性を開くような新しい概念を生み出していこうと主張。「何が本質的な真実や事実であるか」を問うのではなく、関係を生み出し維持していくための文化的な資源をいかに増やすかが肝要。

・サイボーグというメタファ―が「人間/機械」という二分法に対して挑んだように、ポストモダンの言説は「人間、生態システム、機械、複雑な無数のソフトウェア・・・を、一つの広いサイバネティクス的な有機的組織体の中で」融合させていく。

 

第9章 「批判に答える」

・人は関係において、「何が事実か」「何が善い事か」を知り、価値、公正であること、喜びなどの感覚を身に付けていく。

・何かに対する深い関与は、ある文化や歴史に限定されたものであり、そうした伝統の表れであると理解できるようになれば、他者をすぐに排除しようとはしない。

・社会構成主義の立場は、他者に対して知的な意味で「似たような考え方」を要求する傾向。そうした傾向を抑制する三つの歯止め。「自らに根拠があると主張しない」「どんな考え方でもある伝統や生き方に埋め込まれたものとして目を向ける」「意味のもろさ、壊れやすさを認識」。

 

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