善と悪の生物学(下)

善と悪の生物学(下)

ロバート・M・サポルスキー

第11章 <我々>対<彼ら>

・無意識に「忠誠」について考えるよう仕向けられた被験者は<我々>に近く<彼ら>から遠いところに座るが、「平等」を考えるよう仕向けられた被験者は逆のことをする。

第12章 階層構造、服従、抵抗

・従属する個体は基本的に死ぬまで従属し、そのような個体は海馬に広い損傷。グルココルチコイド過多の悪影響に敏感な脳領域。

第13章 道徳性と、正しい行動を理解し実行すること

・道徳上のジレンマに直面すると、一般に扁桃体、vmPFC、島皮質の活性化が、dlPFC の活性化に先行する。こうした直感をつかさどる脳領域に損傷を受けると、道徳的判断が実利的なだけでなく冷徹に。

・自分の道徳上の過ちを考えるときと、他人のそれを考えるときとでは、使われる脳の回路が違う(前者はvmPFCの活性化が大きく、後者は島皮質とdlPFCの活性化が大きい)。

〇自身の過ちは同情的に、他者の過ちは理性的に。

・狩猟採集民から都市住民まであらゆる人々を研究する人類学者は、日常会話のおよそ三分の二が噂話であり、ネガティブなものであることを発見。強者に対する弱者の武器。

・奴隷制度、児童労働、動物虐待が悪であるということが無条件の道徳的直観、道徳的真理についての本能的直感になったのはひとえに一般人の道徳的直感が全く違っていた時代の、先人による熱心な道徳的推論(及び積極的行動)のおかげ。本能は直感を学ぶ。

第14章 人の痛みを感じ、理解し、和らげる

・観察だけで恐怖と条件回避を学ぶのにはACC(前帯状皮質)が不可欠。

・人は「税金」を取られた時より自主的に寄付したときのほうが、ドーパミン作動系の活性(及び満足の自己報告)が強かった。慈善の要素で大事なのは自己利益。

〇「偽善で売名ですよ」と公言しながら寄付する橋幸夫さん。とても大事なことだと感じます。

第15章 象徴のための殺人

・進化は修繕屋であり、間に合わせの材料で対処するもの。(中略)発明家でなく修繕屋としての進化にとって重要なのは、外適応の概念。羽毛は体温調節に加えて飛行の助けになり、島皮質は消化管からの毒除去に加えて、天国に行くのを助けるように。後者は「神経の再利用」と呼ばれていたもの。

・向社会的になる瞬間の多くは償いの行為であり、反社会的だったことを無効にする試み。隠喩的に汚れた手が隠喩的でなく洗われれば、天秤のバランスを取ろうとするために救いの手を差し伸べる傾向が弱くなる。

第16章 生物学、刑事司法制度、そして(もちろん)自由意志

・善意の精神は意志力によるものだが、ひどく弱い肉体によって妨げられるおそれも。「弱められた自由意志」。

・死刑囚の大部分は、特に重要な幼少期に前頭葉損傷の病歴がある。

・自由意志能力は、熟議を伴うゆっくりした決定では最前線に出てくるが、瞬時の決断の状況では、生物学的因子が自由意志をわきに押しやる可能性がある。

・人は素質と衝動を生物学に割り当て、努力と衝動への抵抗を自由意志に割り当てる。

第17章 戦争と平和

・「過去は異国だ。そこでは物事のやり方が異なる」。

・閉じた相互関係にある二人の「互恵主義」は物々交換のようなものだが、間接的な恩送り(pay forword)の互恵主義はお金に似ていて、共通の通貨は「評判」。

・自発的な赦しを示す被害者は、健康全般、心臓血管機能、うつ病、不安、PTSDの症状が改善。

付録1 神経科学初級講座

・発育中の脳がすることは、「巡回セールスマン問題」に使われるアプローチと似たところが。

・客観的にみて19世紀の戦争での大量殺人は、神から神経解剖学者への贈り物。

〇怖い、けど、否定できない。

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