【スムスビ 一級建築士事務所】野口理人さん

板橋区の起業家インタビュー、第17回目は「スムスビ一級建築士事務所」代表の野口理人さんです。2021年10月に設立、そして2022年3月に事務所開きをしたばかりの真新しいオフィス兼モデルルームにてお話を伺いました。

前回の「カワシマシキ工芸」川島さんからのご紹介です。と言いつつ、以前から「いたばし部」つながりで飲み会議をしている仲間でもあります。川島さんからも、「普段とは違った角度から野口さんの話を聴くのは面白いのでは」とのご提案。私も楽しみです!

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-屋号の由来を教えてください。

野口さん:「スムスビ」という名前自体は、妻がイラストレーターなのですが、その際に使っているものです。妻は元々、設計事務所出身で、二級建築士でもあります。今回、スムスビ一級建築士事務所のロゴを作る際、妻と一緒にアイデアを出し合いながらこのようになりました。

野口さん:スムスビという名前は、妻がおむすびが好きだから、というのもありますが(笑)、住む人と自然を結び付けるという意味も込められています。

野口さん:あと、良く言われるのですが、「スムスビ―」ではありません(笑)。
※私もつい、「ビー」と伸ばしちゃいました。すみません(;’∀’)

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見学会の最中にお邪魔したので、お客さまが来訪の対応を見せていただくこともできました。野口さんのお人柄がお客さまの笑顔を引き出しています。

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-起業前の経歴を教えてください。

野口さん:北海道大学で建築を学び、卒業後、ロスアンゼルスの大学院に進学を考えていました。建築を専門とする大学院です。1年かけてTOEFLを勉強し、願書を提出しました。説明会のためにロスに渡航したのですが、肌に合わないと感じて進学は見送りました。

野口さん:TOEFL勉強中、大学時代の先輩に誘われ、大規模建設が得意な大手の設計事務所で半年間アルバイトをしました。その時に関わらせてもらった案件で「大規模」に興味を失いました。余白がないんですね。

野口さん:院を見送り、環境共生型住宅の設計が得意なアトリエ系設計事務所に就職しました。この頃から、セルフビルドの家をいつか建てたい、という夢が芽生え始めていて、戸建てが得意なところに、という思いもありました。

-31才で一度独立されているのですね。

野口さん:はい。実は当時父が設計事務所を経営しており、そこに間借りして活動を始めました。独立前に一緒に仕事をしていた職人さんたちは、日本でもトップクラスの人達ばかりだったのですが、その人たちに1人前と認められたら独立しようと思っていました。

野口さん:その頃、勉強会でお世話になっている方から、日本で最大手の設計事務所に誰か紹介してくれないか、と頼まれていたのですが、なかなか良い人が見つかりませんでした。そうしたら、「修行も兼ねて、野口さんどうですか」と声を掛けてくれたんです。

-独立している方に、会社に入れというのは、勇気がいることだと思います。

野口さん:そうですね。ただ、その設計事務所は、設計に関わる人ならだれでも憧れるところで、おいそれと入れるところではなかったんです。「野口さんなら自信を持って紹介できる」と後押しされたこともあり、正直ヒマだったので(苦笑)アルバイトとしてお手伝いを始めました。

野口さん:その後、仕事量が多いために契約社員として誘われ、幾つかのプロジェクトに関わりました。3年後、会社に請われて正社員になり、結局8年ほどお世話になりました。大変でしたが、良い経験を積むことができました。紹介してくれたNさん、当時の上司のYさんには感謝しかありません。

野口さん:39才で、地元板橋にある、環境共生を掲げているマンションデベロッパーに転職しました。東日本大震災を経験して、地元である板橋区のお役に立ちたい、という思いが沸き上がって来たんです。入社後、すぐに新規立上げのリノベーション部の責任者になり、リフォームやリノベーションの経験を6年ほど積ませていただきました。退職後は職業訓練校で実技を学び直し、2021年に独立しました。

-昨日フェイスブックを拝見したら、前職の上司の方たちが見学に来てくれたようでしたね。

野口さん:はい。嬉しかったです。

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-このモデルルームの造作は、野口さんがお一人で全て施工されたんですね。

野口さん:はい。職業訓練校に通い、リフォーム工事の施工技術を学びました。設計から施工、細かい修理まで、「施工が出来る建築家、デザインの出来る職人」を標榜しています。

野口さん:子供の頃からモノづくりが好きでした。父方の祖父は大工の棟梁だったそうです。生まれる前には亡くなっていましたが。また、母方の実家が千葉県で工場(こうば)を営んでいました。機械油の匂いと、祖父とキャッチボールしているのが私の原風景。千葉は第二の故郷だと感じています。

野口さん:中学生時代、近所にあったドイト(ホームセンター)によく行き、ウィンドウショッピングをしていました。電動工具を見るのが特に好きでしたね。技術家庭の授業も大好きで、他の授業の時も彫刻刀を握って木工をしていたり(笑)。

-設計士の方って、自分で手を動かすイメージはあまりなかったのですが。

野口さん:確かに、そんなにいないかもしれませんね。最初に入った設計事務所では、大工さんや職人さんに舐められたくないという思いがあり、自分で手を動かすことを怠りませんでした。

野口さん:人によると思いますが、私は自分で作り方が明確にイメージできないものは設計できない性格なんです。そこに確証がないと、お客さまにも提案できないと考えています。

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-今回の独立にあたっての思いを聞かせてください。

野口さん:設計という仕事ですが、実際のものづくりではありません。実費が10万円の工事なら、そこに上乗せするのが設計費用。大手では、そのような規模の小さい工事は受注できませんが、自身が設計から施工まで行えば、トータルで10万円でもできると思ったんです。

野口さん:スムスビのホームページにも書いたのですが、「すまいのよろず相談口」というサービスの商圏は自転車で行ける距離。自分の気持ちの中で、何かあった時にいつでもすぐにお客さんの元に駆け付けられる距離でサービスを提供していきます。

-板橋で生きていくという思い、共感します。そんな中、今回起業するに当たり、自転車でポスティングをされていますが、戸建てには配らなかったんですよね。

野口さん:マンションのリノベーションは、前職のマンションデベロッパーの経験が活かせますし、戸建てよりもやりやすいというのがあります。リノベーションであればお客さんと共に注文住宅のように「家づくり」を経験していただくこともできます。

-戸建てへの思いが、マンションのリノベーションにも活かされているのでしょうか。

野口さん:生意気かもしれませんが、今の住宅のあり方は間違っているのではと、20代の頃から思っていました。取得方法はたとえ注文住宅でもハウスメーカー頼り。自分が戸建ての設計をやっていた頃は、お客さまと一緒に作ることを心掛けていました。「完成品を買うもの」ではなく、共に作るもの。「家づくり」の楽しさを、マンションのリノベーションを通して知ってほしいですね。

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-野口さんが思う「自律型人材」とはどのようなものでしょう。

野口さん:「自分で調べられる人」です。管理職だった頃、何でもすぐ聞いてくる部下に対して、「自分で調べて質問しているの?」と疑問がわくことがありました。質問の内容の浅さが透けて見えていたんです。「もうちょっと調べて聞きに来なさいよ」と。まあ、答えてはいましたが(苦笑)。

野口さん:自分の頭で考えられるかどうか。自分が20代の頃は、今と違って情報源は本のみでした。休日に本屋に出かけて専門誌を手に入れたりしていましたね。今は調べようと思えば、ネットですぐ調べられるのだから、そうして欲しいという思いがあります。

野口さん:自分でイメージできないものは設計できない。作り方がわからないと、提案できない。とはいえ、他人に甘えてしまいがちなのが人間ですから、難しいですね。

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-最後に、これから起業を目指す若者にメッセージをお願いします。

野口さん:まだ独立したてで結果が出ていませんが、一度きりの人生ですから、悔いの残らないようにという思いがあります。起業する意思がある人には自分を試してほしいと思います。失敗したら戻ればいい。独立できるスキルがあるなら、再チャレンジはできます。恐れなくてよいと思います。

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「対話型OJT」を献本させていただきました。

※抱えてもらっての撮影、忘れてしまいました(^^;

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インタビュアーの林(ラーンフォレスト合同会社 代表社員)は、上記の「対話型OJT」をもとにした、新人の適応を促す「上手な仕事の教え方」を研修にてお伝えしています。

奥板橋でランチェスター」と、思考ベースが一緒の野口さんとのインタビューは、とても刺激的なものでした。板橋への恩返し、私も一緒に、微力ながらも頑張りたいと思います。

野口さん、どうもありがとうございました!

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