ソクラテスの弁明
ソクラテスの弁明
プラトン/納富信留 訳
第1部 告発への弁明
・何か少しでも役に立つ人間が生きるか死ぬかの危険など斟酌すべきだと考えることは立派ではない。何か行動をする時には、正しいことを行うのか、不正を行うのか、善い人間の為す行為か、悪い人間の為すことなのかを考慮すべき。
・死を恐れるということは知恵がないのにあると思い込むことに他ならない。知らないことについて知っていると思うこと。死というものを誰一人知らないし、死が人間にとってあらゆる善いことのうちで最大のものかもしれないのに、そうかどうかも知らない。
・人々はかえって最大の悪だとよく知っているつもりで死を恐れているのは、恥ずべき無知、知らないものを知っていると思っている状態。
第2部 刑罰の提案
第3部 判決後のコメント
解説
・三平方の定理を使って証明できなければ、本当に知っていることにはならない。答えが誤っている場合だけでなく、その根拠を把握していない状態も「知る」には当たらない。単に「思う」という状態に過ぎない。
・本当は大切なことを知らないにもかかわらず、地位や評判や技量によって自分こそ知恵あるものだと思い込んでいる、「無知(アマティアー)」、「知らないこと(不知、アグノイア)」を自覚していない状態こそが最悪の恥ずべきあり方。「無知」のあり方が「思い込み(ドクサ)」。
プラトン対話篇を読むために
・現存するクセノフォンの作品では、ソクラテスは立派な教師で優れたアドバイザーであり、あらゆる問題に通じて、適切な考えで人々を導いていく。プラトンがしばしば描くような、厳しく相手を論駁して相手の怒りや憎しみを買う「皮肉な」ソクラテスの側面は希薄。
・プラトンは仲間や弟子たちに自分の考えを押しつけるどころか、むしろ最も強い反論を提出することを促しているよう。(中略)批判的で建設的な議論の場、自由で理性的な言論の空間が「学園アカデメイア」。
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