【城山幼稚園】石川明彦園長先生

板橋区の起業家インタビュー、第18回目は「城山幼稚園・城山みどり幼稚園」園長の石川明彦さんです。

前回の「スムスビ一級建築士事務所」の野口さんからのご紹介。野口さんのお子さんも通っている幼稚園とのことでご紹介をいただきました。以前から、ウォーキングで「城山熊野神社」にお参りしていたので、なんとなく親近感を持っておりました。

今回は、「石川先生のお話をじっくり聴いてみたい」という野口さんにもご同席いただき、インタビューのスタートです。

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当日はあいにくの雨の中、神社にお参りをしつつ野口さんと待ち合わせ。時間になり、園の入り口の扉を開けるとウェルカムボードが!

「おはようございます!」

職員の方々が次々とお出迎え。VIP?が来園したような歓待ぶりに嬉しくもびっくりしてしまいました(笑)

今回のインタビューのアポを野口さんにお願いした際、石川園長先生から「朝礼を見学しませんか」というお誘いを受け、朝一からの訪問。朝礼の前にまずはホールに通され、城山グループのコンセプトムービーを見せていただくことになりました。

プレゼンは入社2年目で主任の松永先生。後ろで、先輩の伊藤先生が見守ってくれています。

プレゼンでは、幼稚園の経営理念、大事にしていることは「自ら学び、考え、決定し、行動する力」だということを教えていただきました。

この後に見学させていただく、城山幼稚園の「活力朝礼」は有名で、コロナ前は年間150社ほどが訪れていたそうです。

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松永先生:入社前は自分がこんな朝礼出来るかな、と思っていました。今ではおかげさまで人前で話す力がついてきたと思います。

松永先生のプレゼンは堂々としていて、場慣れしているな、と思いながらお話を聴いていたのですが、実は客前でプレゼンするのは今日が初めてだったと聞いてびっくり。野口さん曰く、「普段から、降園時に保護者に子どもたちの様子をイキイキ話している経験があるから」だそうです。

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職員室に移動し、いよいよ朝礼のスタートです。

キビキビした動き、しっかりとした発声は圧巻です!

野口さんからの感想。

「すごいです!!」

本当に、一言で表せば、スゴイ!!

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朝礼後、皆で記念撮影。

活力朝礼から文字通り「活力」をいただいた後、石川先生のインタビューへ。

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-玄関でのお出迎え、圧倒されました。

石川先生:お出迎えは「社風」から来るものです。皆で経営理念を共有しているからこそなんです。今その時、どうすればよいのかを考えることです。

朝礼でも、職員の皆さんは淀みなく唱和されていましたものね。

石川先生:お出迎えも、別にルールではないんです。職員の皆が、「こうしたら喜んでもらえる」と考え自然にやっていることだと思います。

そうなんですね。ウェルカムボードもそうですが、朝一のオリエンテーション時にいただいたおみやげのメッセージカードも、心が込められているように感じます。

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ご実家の城山幼稚園に就職されたのが25才の時なんですね。

石川先生:はい。私は3代目になります。大学卒業後、大手の商社に勤務していました。今となっては、前職の会社のお金で、色々なことを学ばせてもらっていたと感じています。当時は、そんなことにも気付かずに、大企業の社員として、肩で風を切って歩いていました。実家が経営する幼稚園に戻り、経営に携わる中で、いかに学べていなかったかということを痛感しました。経営者・起業家とは明らかに違いました。

石川先生:戻って初期の頃、経営が傾きかけました。幼稚園が定員割れを起こしていたので、何とかしようと、「通園バスを導入する」ことや「保育料を下げる」ことも考えました。ただ、それをやると言葉は悪いですが「招かれざる客」が来てしまうというジレンマがありました。園の経営の目的は子供の成長であり、質の高い保育です。経営はあくまでも手段ですから、誰でもよい、というわけにはいかないと思っていました。

石川先生:私の知り合いには飲食経営の方が多いのですが、皆が一様に言うのは、「駅前の店に来るお客様にはクレーマーが多く、山奥の名店にはクレーマーはほぼいない。」ということ。駅前は、集客には有利ですが、目的がないお客もフラッと来れるんですよね。山奥の店には、目的を持って、その店を目指して来てくれます。

―そういう幼稚園を目指したということですね。

石川先生:自分は何をやりたいのか、ということをよくよく考えました。26才から全国の名門園を40園、見学に回りました。27才の時、福岡出張の際(福岡県春日市のヨコミネ式導入幼稚園)、嵐で飛行機が遅延したことがあったのですが、その時のことを今でもよく覚えています。私たちは某格安航空だったのですが、隣の搭乗口がANAでした。格安航空の運賃は片道10,500円、一方ANA2万数千円。働いている人を見ると、某航空会社の方が、制服や髪の色は自由な印象を受けました。しかし、同行した職員に、「どっちで働きたい?」と訊くと、皆口を揃えてANAと答えました。接客態度、身だしなみなど、外見のことを口に出しにくい時代にはなりましたが、やはり心の底では皆、しっかり評価していることに気づきました。そして、就活をしている学生も、そういうところに集まるのだと思いました。

-それが、今の職員の皆さんの身だしなみに表れているんですね。

※朝礼でも、お互いの身だしなみをチェックし合っているシーンがありました。

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-ヨコミネ式導入の経緯を教えてください。

石川先生:全国40園を周る中で、理念と保育成果が一致していたからです。導入にあたり、園全体で想いを擦りあわせるために、しっかりと議論を重ね、導入に至りました。「守・破・離」と言いますが、最初の3年は型を守り、少しづつ変化して今に至っています。今でも毎週末、質の高い保育が具現化出来ているかどうか、定量化して記録を残しています。

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-小冊子「ジリタス」について教えてください。

石川先生:我々の教育目標は大きく2つあります。それは「自利利他(じりりた)」と「自ら学び、考え、決定し、行動する力」です。

石川先生:私の曽祖父の話なんですが、現在のみどり幼稚園のそばで交通事故がありました(その子の命に別状はなかったのは不幸中の幸いでした)。そこで、信号をつけるように自治体に要請したそうですが、法律の壁もあり、予算がつかない。そこで、曽祖父が自費で信号を設置したという話は、心に強く残っています。曽祖父のおかげで、自利利他の精神を幼い頃より養えたのかもしれません。「人の喜びが我が喜び」。曽祖父は質素な人だったのですが、そういうところには糸目をつけなかったそうです。また、ビデオカメラや車など、時代を変えそうな匂いのする物は、真っ先に取り入れるタイプの人だったそうです。

-「自利利他」の精神は経営には必要なことですよね。

石川先生:そうですね。そのため、というわけではないのですが、論語を学びに、京都の伊與田先生のもとに1年間通っていました。

石川先生:「ジリタス」ですが、職員同士のグループLINEに投稿された記事の抜粋なんです。「自利利他」のエピソード、自分の体験談を皆で共有するために行っています。意識してもらいたいのは、良いエピソードを「見つけ、文字で起こせることが大事」だということ。文字数を制限することも、よい練習になります。理念に基づいたエピソードトークを全員が出来るようになってほしい。ひいては社風の醸成につながると思っています。

-経営で意識していることを教えてください。

石川先生:まずはビジョンを語ることが大事。そして、決定のプロセスを意識することです。自分で決定し、責任を持つことを習慣づけることが大事です。起業家もそれがないと育たないですよね。ただ、自由と言っても駄目。自由を謳歌するには「覚悟」「知識」「経験」の3つが必要です。

石川先生:自分が価値を提供していると自覚しないといけません。自信を持って価値があると言えるか。そうでないとただの作業になってしまいます。価値を提供し、「ありがとう」をいっぱい集めた人の所に、結果としてお金が集まります。

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-人材育成についてどのようにお考えですか。

石川先生:人が育つためには3つの要素が必要と思っています。「やる気」「やり方」「やり場」の3つです。「やる気」「と「やり方」は本人次第という面もありますが、「やり場」がないと人は、なかなか成長できません。

-環境を整えるということですね。その環境の良さが、職員さんの採用にもつながっているような気がします。職員の採用では、内定者面談の際に、親御さんにも来てもらっているそうですね。

石川先生:はい。我々も学生を面談しますが、親御さんにも、お子さんがどんな環境で働くのかを見てもらいます。

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-石川先生が思う「自律型人材」とはどのようなものでしょう。

石川先生:一言でいえば、「考える以前に、人を喜ばせられる習慣を持っている人」ですかね。例えば、小さな子供が、以前乱れた靴箱を整えた際に、褒められたことを思い出し、今回も靴箱を整えたとします。もちろん、これは素晴らしいことです。しかし、この段階では、まだ自分が褒められるために行動していることになります。一方、「乱れていると居心地が悪い」となれば、他人の視線や評価など気にせずに、反射的に靴箱を整えます。これは、「習慣」の話だと思います。結果として、その子は褒められる訳ですが、この段階になるともはや、人の喜びと自分の喜びの間に境界線はありません。私たちの仕事の場合は、この人を喜ばせる習慣を、幼児体験の中に浸透させていくのが役割だと考えています。

石川先生:自律して夢を叶えることは大切ですが、まずは夢を持つことができるかどうかから始まります。もし仮に、夢がなかったとしても、それは不幸なことではありません。そうであれば、最初は人の夢を一緒に叶えることを、自分の夢にしても良いと思います。

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-最後に、これから起業を目指す若者にメッセージをお願いします。

石川先生:「自分が好きなことだから」と、安易にそれを仕事にしちゃダメだよ、と伝えたいです。「好き」なことには、いずれ限界が来る。仕事にした方が良いのは、自分が自然にできること。ある有名写真家の方から学んだことです。人は誰しも、人から見たら凄いことなのですが、当人にとっては当たり前のことが、あったりするものです。例えば、私の場合は、自分の足で歩けるようになってから今日までずっと、毎日神社に参拝しています。また、学校も幼稚園から大学卒業まで、1日も休んだことがありません。意外とそういったことが、今の仕事に繋がっていると思いますし、そこにヒントがあると思います。

石川先生:それからもう1つ。「学ぶは、真似ぶ」ですから、真似られる環境があるというのは、とても豊かなことです。ぜひ、そういう環境を見つけてみてください。

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「対話型OJT」を献本させていただきました。

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インタビュアーの林(ラーンフォレスト合同会社 代表社員)は、上記の「対話型OJT」をもとにした、新人の適応を促す「上手な仕事の教え方」を研修にてお伝えしています。

石川先生からシリコンバレーのお話を伺っている際、「シリコンバレーは『エコシステム』が確立しており、一番大事にしているのは人と人との結びつき」というものがあったのですが、『板橋区の起業家インタビュー』の取り組みについて、「林さんがやっているのは、板橋区のエコシステムづくりかもしれませんね。板橋区のコミュニティを積極的に利用してください」と嬉しいお言葉をいただきました。私のライフワーク、「板橋区と、ときがわ町を姉妹都市に」のために、是非利用させていただきたいと思います

石川先生、どうもありがとうございました!

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【こぼれ話】

今回のインタビューは、実は2日間にわたってお話を伺ったものでした。初日は雨で、花冷えのとても寒い日だったのですが、インタビュー終了後、野口さんと共に近くのカフェで振り返りミーティングを行いました。その際、カフェまでの10分程の道のりを歩きながら、お互いに口に出さずとも違和感を感じていたことが判明。

「何か、靴の中が・・・」

カフェに到着後、席に着いた野口さんから、

「林さん、靴の中に・・・!」

「野口さん、私も・・・!」

なんと、靴のつま先に靴用ホッカイロが張り付けてありました。寒空の中の靴先はともすれば痛いくらい冷えるものですが、それを感じずに帰宅の途に着けたのでした。

2日目の際、石川先生に野口さんからエピソードを報告。石川先生も感心していました。野口さん共々、職員の皆さんのホスピタリティには感動です。あらためまして、職員の皆さまに感謝いたします。どうもありがとうございました!

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