日本の歴史をよみなおす

日本の歴史をよみなおす

網野善彦

第1章 文字について

・女流の文学が生まれたのは14世紀まで。室町時代以降女性の日記はあるが、江戸時代まで含めて女性の文学といえるものはおそらくない。

・平仮名はまず女性の文字として用いられ、それを男性が取り込む形で普及。男性は平安・鎌倉はもちろん、室町・江戸時代まで、公的な世界では漢字を主として使用。

第2章 貨幣と商業・金融

・日本社会の場合、金融の起源は「出挙(すいこ)」に帰着。最初にとれた初穂は神に捧げられ、神聖な蔵に貯蔵、翌年、神聖な種籾として農民に貸し出し、収穫期に若干の神へのお礼の利稲(利息の稲)をつけて蔵に戻すのが出挙の基本原理。

・金融行為は、神のものを貸与、農業生産を媒介とした神への返礼という形で成立。

・中世の商工業者、芸能民が、神仏、天皇の直属民という地位を持っていたのは、当時の金融や交易という行為そのもの、さらに芸能の行為そのものの特質と深い関りがあり、こうした人々の活動した場の性格とも関係が。神人(じにん)や供御人(くごにん)と言われた商工業者は市場から市場へ遍歴。

・鎌倉新仏教の律僧が「勧進(寺社の修造のための寄付金集め)」に大きな役割。広く世の人から集めるのが勧進上人、勧進聖。(中略)律僧は勧進によって集められたものを資本として運用する企業家であり、貿易商人としての役割も。

・鎌倉新仏教はかつての神仏と異なり、新しい考え方によって商業・金融などに聖なる意味を付与する方向で動き始めていた。

第3章 畏怖と賎視

・14世紀までの非人を江戸時代の被差別部落と同じではなく、神人、寄人(よりうど)と同じように一般の平民百姓とははっきり区別され、不自由民である下人(世俗の奴隷)とも違う存在で、神仏の「奴婢」として聖別された存在であり、時に畏怖・畏敬される一面も。ケガレを清める力を持つ聖別された職能民として社会に位置付け。

第4章 女性をめぐって

・ある女性を女捕る習俗があるのは、道を旅している場合の男女の在り方は、日常の世界とだいぶ違うことを示し、社会も公認している。「旅の恥はかき捨て」はその名残。

・遊女・白拍子は公庭(朝廷)に属するものと『右記』に記載。遊女や白拍子・傀儡は、神人・寄人と同様、天皇や神に直属する女性職能民。天皇や貴族の子供を産んだり、勅撰和歌集にその和歌が採用されているのはその証。

・中国から律令制が導入され、法制的には男性優位、父系、家父長制を採用し親族関係を公的にとらえる場合には、原則的に父系でたどるという建前が導入。(中略)これは日本の当時の社会の実態と大きく異なっており、建前と実態の摩擦を起こすことに。

〇本当に強いのは、女性、ということが歴史を紐解くと見えてくるのでしょうか。今の時代は揺り戻しなのかもしれません。

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