続・日本の歴史をよみなおす

続・日本の歴史をよみなおす

網野善彦

第1章 日本の社会は農業社会か

・百姓は決して農民と同義でなく、たくさんの非農業民 - 農業以外の正業に主として携わる人々を含むことを考慮すると、これまでの常識とは全く違った社会の実態が浮かび上がる。

〇これは目からうろこでした。30年以上前に書かれたものですが、現在の認識が変わったとはまだ言い難いかもしれません。

・廻船と商業を営む富裕な人は土地を持つ必要はないが、江戸時代の制度では、石高を持っていない人々を「水吞」「頭振(あたまふり)」に位置付け。

・江戸時代の「村」は全てが農村なのではなく、海村、山村、都市を含む。「村」というとすぐ農村を思い浮かべる常識を捨て去って社会の実態を考えるべき。

・「百姓」「村」の意味の誤りを犯し続けてきた原因の一つは、「日本」を国号とした「律令国家」が水田を国の制度の基礎に置き、土地に対する課税によって国家を支える制度を決めたこと。(中略)すべての百姓を農民、稲作民と捉えようとする強烈な意思が。

・捨てられたはずの文書、「裏文書」「紙背文書」には、非農業的な正業に携わる人々の現れる頻度が、通常の経緯で保存され伝来した文書に比べるとはるかに多い。動産に関する文書が多いのも特徴。

第2章 海からみた日本列島

・日本列島の社会は当初から交易を行うことによって初めて成り立ちうる社会。「自給自足」の社会など最初から考え難い。

・「律令国家」は、海上交通・河川の交通が中心だったものを無視するように強烈な意思で陸上の道に基本を置いた交通体系を構築。「敗戦」「古代帝国志向」が影響。

・8世紀にはいると陸上交通中心の無理が表面化、重いものを運ぶための水上交通が公的に認められ始め、陸上の大道が荒廃するところも。9世紀には水上交通が主軸になる状況に(回帰)。

第3章 荘園・公領の世界

・手工業に従事する人の多い「工村」。鍛冶屋村、金屋村など。

第4章 悪党・海賊と商人・金融業者

・南北朝の動乱は、日本社会自体の大きな転換に伴って起こった激動で、それまでとは違ったレベルで商品、貨幣、信用経済が展開し始め、政治・宗教のあり方にも大きな転換を迫ったところから起こったもの。

第5章 日本の社会を考えなおす

・15世紀になると、一元論の立場に立って、善悪もろとも全てを救おうとした宗教(時宗)がが力を失い、真宗のように善と悪を鋭く対決させた上でむしろ悪を積極的に肯定する思想のほうが協力に。

・(信長・秀吉・家康の)農業、土地中心に「日本国」を固めていこうとするやり方と、海を舞台にして商業や流通のネットワークを作り、日本列島の外にまで広がる貿易のネットワーク作りの動きとが真っ向から対立。

〇陸上国家と海上国家の揺り戻しがこの国だったのでしょうか。

・明治維新を推進した薩摩・長州・土佐・肥前の諸藩は、辺境のおくれた大名ではなく、海を通じて貿易をやっていた藩。江戸時代末までに日本社会に蓄積されてきた商工業・金融業などの力量、資本主義的な社会の成長度は過小評価できない。

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