人は皮膚から癒される
人は皮膚から癒される
山口創
第1章 コミュニケーションする皮膚
・サイモン・シュナルらは、実験参加者を傾斜のある坂のふもとに連れていき、坂の角度について推測してもらった。友人と一緒に推測した人は一人で推測した人に比べて、傾斜の角度を「緩い」と判断。傾斜の緩和効果は親密であるほど大きかった。
・「駅までの道のり」「重い荷物を背負って上る階段の高さ」「痛みに耐えられる程度」も、親しい人が寄り添ってくれるだけで、負担が軽く感じられることが明らかに。
・人と直接触れることだけでなく、人と一緒にいることも含めて人を癒す行為を「スキンシップケア」と定義。
・皮膚を温めると、人との心理的距離が近くなることや、人を信頼しやすくなることが明らかに。
・アイスティーとホットティーを飲んだ後、「恋愛」「アクション」「恐怖」「コメディ」のうち好きな映画を選択。アイスティーで冷えた参加者は、ホットティーの参加者よりも恋愛映画を好んだ。暖かい部屋と寒い部屋でも同じ傾向。「島皮質」と「線条体」が身体と心の温かさの両方に関与しているため。
・皮膚の「C触覚繊維」。神経線維の末端が枝分かれして皮膚に入り込み直接知覚している神経線維の束。「触れて気持ち良い」「感触が気持ち悪い」などの感情と関わる神経線維。
・C触覚繊維が興奮するための物理的条件、速度と柔らかさ。秒速3センチ~10cmほどの刺激及びベルベットのような柔らかい物質に興奮。この興奮は脳内でセロトニン神経を活性化。抑うつの人へのマッサージで脳内でセロトニンが作られて症状が軽減。
・先のシュナルらの実験。ブドウ糖を摂取した人の方が傾斜を緩やかと判断。
〇身体が欲する時って、確かにありますね。
・解決困難な事態の際、恐怖や不安などの感情をコントロールしなければならない時、信頼できる他者が傍に居るだけで、彼らに問題解決や感情コントロールの一端を担ってくれることを期待。人にアウトソーシング(外注化)。
・共同注意。互いに見つめ合うことではなく、一緒に同じ方向を見つめること。
・相手が信頼できるか否かの判断はほぼ無意識の脳の皮質下でなされており、「触れる」、相手の心に侵入する行為の効果を十分に発揮させるには、触れる前にあらかじめ親密な信頼関係を確立しておくことが必要。
第2章 触れないと皮膚は閉ざされる
・流体としての境界と似たような概念を日本語では「あわい」という。境界をあいまいにすることを美徳とする。(中略)「あわい」の語源は「あう(会う・合う)。「分け・隔てる」ための境界ではなく、相手と境界を共有することを前提にした言葉。
・ジャコモ・リゾラッティは、手の届く領域内にある人や物を、自分の身体の境界である皮膚が膨張して自分の身体の一部であるかのように感じていることを明らかにし、「ペリパーソナルスペース」と呼称。(中略)ミラーニューロンシステムの働き。
・米国人は中心になる対象物に注意を集中させるのに対し、東アジア人は全体的光景を見る。(中略)日本人はまず全体の雰囲気を感じる。それができないこと、「空気が読めない」ことは、排除される格好の理由に。
第3章 病気やストレスが劇的に改善、スキンシップの驚くべき力
・自然治癒力を働かせるためには、自分の身体の感覚に耳を傾け、身体が欲するようにしてあげることが重要。
・インジー・クレスらの実験。被験者の腕を人の手とベルベットをまいた棒で「なでる」「タッピングする」触れ方で刺激。人の手で「なでる」が一番脳の活動が活発に。
・マシュー・ハーテンスタインらは、7種類の情動(怒り、恐怖、幸福、悲しみ、不快、愛、感謝)が、「触れる」ことで相手にどの程度正確に伝わるかを実験。(中略)どの情動を解読する正答率も50~70%で、表情の解読率に匹敵。
・人との境界を拓く際の共通する内容は「見る」「話す」「触れる」というコミュニケーション。
第4章 皮膚を拓いて、元気な自分を取り戻す
「情動の顔面フィードバック説」を提唱したシルバン・トムキンスは、表情を作る目的は情動を表出するためではなく、むしろ情動を作り出すことだと主張。
・笑顔を作ることによって快適な気持ちが生まれるメカニズムは、笑顔を作ると脳に供給する血液の温度上昇を抑える働きの「海綿静脈洞」の血流や温度が変化。神経伝達物質の分泌や合成に影響、笑顔を作ると脳内の温度が下がり、快の感情が生まれる。
・個々人の気持ちと、自分が属している集団の感情が異なるときは、集団の感情に染まる。
・感謝の手紙を書くだけでオキシトシンの分泌が高まる。
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