【平岩石油販売株式会社】平岩正宏さん
板橋区の起業家インタビュー、第20回目は前回の「株式会社タニタハウジングウェア」の谷田さんからのご紹介で、「平岩石油販売株式会社」代表取締役社長の平岩正宏さんにお話を伺いました。
谷田さんから、「顔合わせはランチしながらでもよいですか」とのお誘いに、平岩さんからのご丁寧な返信メールで快諾いただき、美味しいお食事をいただきながら、インタビューのアポイントをいただきました。
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-平岩石油販売株式会社は昭和32年に創業し、現在は、昭和63年2月に社名変更した株式会社互恵を筆頭に、「互恵グループ」として経営を行っているのですね。
平岩さん:はい。ホールディングス体制に移行したのは、中小ではさきがけだと思います。
-平岩さんは3代目ということですが、先代のお二人について教えてください。
平岩さん:伯父は大学を卒業し、鉱山会社に就職して社会人としての経験を重ねた後、昭和32年に平岩石油販売株式会社を創業しました。その後、10才年下の弟である父が大学在学中に入社して、一緒に経営し始めたそうです。まだまだ車が少ない時代でしたが、これからの時代を見据えたのだと思います。
-伯父さんが創業者で、お父さんが2代目なんですね。
平岩さん:平岩さん:といっても、ほとんど二人で一緒に経営していたそうです。延べ10数社を創業し、整理や統合を経て、現在に至っています。
-すごい!まさに起業家精神ですね。
平岩さん:父や伯父から聞いた話ですが、曽祖父が板橋宿にて下駄・草履の製造、販売店を営んでいたそうなんです。また、祖父は質屋や長屋の賃貸経営をしていたそうです。
-起業家の家系なんですね。お祖父さんとはお話しされているのですか。
平岩さん:残念ながら、祖父は私が生まれる2年前に亡くなっており、顔は見ていないのですが、曽祖父・祖父の精神が父や伯父に受け継がれているのかもしれません。
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-家業を継いだ経歴を教えてください。
平岩さん:事業承継を意識しだしたのは高校生の頃です。当時、休日にスタンドでアルバイトもさせてもらっていました。将来を考えた時、大学で何を学ぼうかなと。当時流行していた学園ドラマの影響で教師もいいな、と思って教職課程も視野に入れていました。ですがやっぱり、継ぐことをどこかで意識していましたね。そこで、親には相談せず経営学部に行きました。
-相談せずに進学したんですね。
平岩さん:普段から良い意味で放任主義な父親でした。自分の人生は自分で、という思いもあったのではないでしょうか。
平岩さん:大学3年の時、就活を始めました。進路をどうするか、この時は父親に相談したのですが「好きにすればよい」と言われました。継いでもよいし、継がなくてもよいし、と言ってくれたのは嬉しかったです。それで、将来的に継ごうと決断しました。
平岩さん:大学4年の時、将来的に家業を継ぎたいと父、伯父に相談しました。二人共に言われたのは、「責任を背負うんだぞ」ということでした。支えてくれる社員はもとより、その家族も背負う。とても重いものだと、肝に銘じられた思いでした。
-事業承継の決め手みたいなものはありますか。
平岩さん:そう言われて考えてみると、幼少期の記憶が大きいのかなと思います。小さい頃、スタンドの上に併設された住居に6才まで住んでいましたから、父や伯父の働いている姿を目の当たりにしていました。当時は少なかった車を見て育ち、「カッコいいな」と思っていました。それにもまして、お客さんと笑顔で話している父たちがカッコよかったことを覚えています。
-子供に働いている姿を見せられるというのは、親の幸せでもありますよね。
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-大学卒業後のことを教えてください。
平岩さん:昭和62年4月に出光興産の事業承継コースに就職し、3年弱、札幌で勤務しました。1年目はスタンド勤務で、ルート営業もやりました。2年目は、地場の工場に飛び込み営業。潤滑油(オイル)販売などをやりました。大変でしたが、今思えばよい経験をさせてもらいました。
平岩さん:札幌の赴任先には、名物の「鬼軍曹」と呼ばれる店長がいました。正直辛かったのですが、とても良い経験を積ませてもらいました。確実に今に活きています。
-一番思い出に残っている経験は何ですか。
平岩さん:当時、大口の営業が取れて喜んでいたのですが、その売掛が飛んでしまいました。当然ながら回収も経験し本当に大変でした。後年に聞いた話ですが、鬼軍曹は最初から怪しいとにらんでいたらしいんです。だけど、任せてくれていた。度量が広かったと今でも思います。
-鬼軍曹さんとのその後の交流はあるのですか。
平岩さん:はい。鬼軍曹の教え子たちが、世代を超えて毎年、年1回、(コロナ前まで)札幌近辺にて同窓会を行っていました。出席者は年によって変わりますが、毎回10人ほど。全国から集まってきます。私はほぼ毎年参加していますが、楽しみの一つですね。
-コロナが落ち着きつつあるので、次回が楽しみでしょうね。
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平岩さん:平成元年に実家に戻り、平岩石油販売株式会社に入社しました。販売店舗を3年で2か所経験し、本社には4年目から勤務しました。
平岩さん:事業承継、社長就任は平成18年、41才の時になります。とはいえ、30才から専務取締役を任せてもらっていました。当時から、社長は他の会社の社長も兼務しており、そちらの業務もあるので、こちらには週1回ほどしか出社できず、ベテラン社員にサポートしてもらいながら実質、好きなようにやらせてもらっていました。
平岩さん:社長に就任した時は、実質仕事は変わらなかったのですが、責任は増えました。お金のこともそうですし、やはり、社員とその家族の生活を背負うという責任に身が引き締まる思いでした。
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-今日の午前中は、店長会議だったんですね。
平岩さん:はい。今日は各店舗の店長やそれぞれの部門責任者など14人に集まってもらいました。毎月開催しています。コロナの状況に応じて、リモートで行ったり、ハイブリッドで行うこともあります。
-リモートと対面のメリット・デメリットはいかがでしょうか。
平岩さん:それぞれの良さがありますよね。対面はともすれば冗長になってしまう場合もありますが、対面だからこその良さは、直接反応を感じられることですね。また、休憩時間中の雑談も見ていて良いな、と思います。リモートでは伝えたいポイントを適切に伝えることはできますが、余計なものを挟むことはできない。余計なところに気づきが合ったりもしますから。
-店長会議を続けている理由を教えてください。
平岩さん:意見交換を通じて、一緒に学んでいきたいと思っています。会社では、学びを通じて、自分の分身をつくっていくという側面もあります。自分一人では全てのことはできません。できてもせいぜい2、3人分ですから。
―一人で全てはできない、と感じたのはいつごろからですか。
平岩さん:30才で専務取締役になり、実質経営を任されていた時、やっぱり一人じゃ辛いなと感じたんですね。そこで、各拠点から若くて良い人を推薦してもらい、月一の勉強会を始めました。理念や、経済のことを学んだり、出光佐三の本の読書会をしたり。勉強会後の食事会でもたくさんのことを議論しました。当時の勉強会仲間が、今の店長だったり、課長だったりと活躍してくれています。
-その頃の経験があるからこそ、店長会議を続けているのですね。
平岩さん:それもありますし、スタッフと近い存在でありたいという思いもあります。そして、次の世代も、たくさんのことを経験して欲しいと思っています。
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-育成についてのお考えを教えてください。
平岩さん:一つには、認識の違いを意識しています。例えば、「白紙を緑色に塗って」と差し出しても、自分が思っている緑とは違うかもしれません。アンマッチ。人によって経験してきたことは違います。違うのは当たり前。自分が思っている緑色と違った色が出てきた時は、自分の伝え方が悪かったんだと反省し、伝え方を工夫するようにしなければいけません。
平岩さん:もう一つは、傾聴です。自分が達成したい思い、こうありたいという思いが誰しもあるはず。従業員のその思いや声をしっかり聴くことが大切だと思っています。正直、我々の前の時代は、「上の言ったこと」をやる人が出世していた時代。自分の考えではなくても。先代もそういうところは多少なりともあったかもしれません。そういう部分は反面教師としています。
-「俺についてこい」という絶対的リーダーがもてはやされる時代だったかもしれませんね。
平岩さん:上司に言われたからやる、というのは楽しくないと思うんです。その人の考えがあってこその行動。だから、傾聴を大事にしています。
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平岩さん:今一番うれしいことは、外部のお客さまから、「あのスタッフは良いね」という言葉を聞けた時です。スタッフの成長を感じることができた時が一番の喜びです。
-そういえば、今日、スタンドにいらした方に、「平岩社長とお約束が・・・」と尋ねたら、とてもさわやかな笑顔で案内してくれました。ああいう接客をされると、お客さまも嬉しいですよね。
平岩さん:それは、嬉しいですね。伝えておきます(笑)
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-平岩さんが思う自律型人材とはどんな人でしょうか。
平岩さん:周囲の人と調和は取りつつも、自分の考えを大事にし、方向を決められる人です。
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-最後に、これから起業を目指す若者にメッセージをお願いします。
平岩さん:幅広く経験してほしいです。仕事はもちろん、趣味なども良いと思います。感じたこと、培ったことは必ず糧になります。経験が自分の武器を増やすことになるので、たくさんの色々な経験をすると良いと思います。
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「対話型OJT」を献本させていただき・・・と思ったら、実は、谷田社長との会食の時、すでに「アマゾンでポチリました」と持参してくれていました。ありがとうございます!
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インタビュアーの林(ラーンフォレスト合同会社 代表社員)は、上記の「対話型OJT」をもとにした、新人の適応を促す「上手な仕事の教え方」を研修にてお伝えしています。
終始にこやかな笑顔でインタビューに答えてくれた平岩さん。店長や従業員の話をしっかりと傾聴する姿勢は、「心理的安全性」を皆に提供してるのだろうなと感じました。
平岩さん、どうもありがとうございました!
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