教養としてのローマ史入門
教養としてのローマ史入門
出口治明/上野真弓
〇各時代の英雄、光も影もあるのが人間です。生粋の善、悪、は共にない。トータルで7割くらい善なら良しとするべきでしょうか。
第1章 古代ローマ 共和制から帝政へ
・カエサルは清栄の1個軍団のみ率いてローマ本土との境界線、ルビコン川を越える。もう後戻りはできないという意味で「賽は投げられた」と伝えられているが、本当は運を天に任せるという「賽が投げられるに任せよう」だったよう。
・カエサルの後継者のオクタヴィアヌス、軍才の欠如や外交・政治・文芸では盟友を頼る。虫の好かない相手にも表面的には敬愛の情を示せる偽善者ぶりこそがのちの帝政の礎に。
第2章 ローマ帝国の変遷
・ネロの本質は子供のような無邪気さ。その心が、母からの抑圧と皇帝氏としての重圧、陰謀に満ちた現実世界と衝突し葛藤、母殺しと妻殺しは最大の汚点だが、常に民衆とともにあったのがネロ。
第3章 中世のローマと教皇
・7世紀初頭にムハンマドが創始したイスラム教は大規模な征服活動を実施。(中略)地中海世界は政治的・文化的統一を失いつつあり、東西教会は聖像崇拝禁止令で対立。
〇宗教の違いは世界に影を落とす。
第4章 イタリア・ルネサンスとローマ
・シチリア王フェデリーコはイタリアに統一国家を築く夢。当時のシチリアはイスラムとキリスト教文明が共存する独自の文化を誇り、フェデリーコも6か国語を操り、あらゆる学問に通じた最高の知識人。学問が聖職者階級に限られていた時代に、世俗の知識人を育成するためにナポリ大学も開設。
・フェデリーコは、聖地エルサレムでキリスト教とイスラムが共存する平和的解決の偉業を成したが、ローマ教皇から破門。戦わずに和平を結ぶのは悪魔(イスラム教)と手を結ぶことととらえられる。
・作品制作にあたって多くの素描を描いたラファエッロは、これを利用して優秀な版画と組んで版画ビジネスを大々的に手掛けて販売。天才画家は優れた実業家でもあった。
第5章 対抗宗教改革とバロック
・バロック芸術は対抗宗教改革の一環としてローマ教会のプロバガンダ的役割。教会建築や天井画で神とローマ教会の栄光を謳い上げて民衆を圧倒し、美しい絵や彫刻で文字の読めない民衆を教化。
〇学がいかに大事か、というのを思わずにいられない描写です。為政者が正しいとは限らないので。
第6章 イタリアの近代、そして現代へ
・フランス革命政府の司令官ナポレオンがイタリアへ侵攻、自由・平等・友愛というフランス革命の理念拡大を大義名分にしたが、周辺諸国にとっては侵略戦争。
・ナポレオン法典は、法の前の平等、私的所有権、経済活動の自由、信教の自由など近代的な価値観を取り入れた民法典で、近代社会の法の基礎に。またフランス革命で生まれた国民国家(ネーションステート)の意識を広め、国民軍を誕生させる。封建的な旧支配体制を脱する第一歩を示す。
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