レヴィ=ストロース入門
レヴィ=ストロース入門
小田亮
第1章 人類学者になるということ
・レヴィ=ストロースが目指していたのは、人間の理性の拡大。自己(西洋)の理性に他者(非西洋)が目覚めることによってではなく、他者の理性に自己を開くことによって実現しようとした。
・「単一文化」というのは無意味。そのような社会はかつて存在したことがない。全ての文化は攪拌と借用と混合から生まれた。テンポは違うが有史以来それは変わりはない。
第2章 構造主義とはどのように誤解されるか
・構造という見方においては、変換されえないものなどなく、体系を構成する要素も要素間関係も、一切のものが変化しうる。要素も要素間の関係も全て変化しているにもかかわらず、そこに現れる「不変の関係」という不思議なものが「構造」ということ。
・構造における不変の関係とは、一つの集合(体系)から別の集合(体系)へ移行する関係のこと。(中略)変換の関係が不変の関係と呼ばれているものであり、変換のないところに不変なものも見いだせない。
・レヴィ=ストロースの構造主義が誕生したのは戦後のパリではなく、様々な出自の人々が亡命というかたちで集まり、異種混淆の場となっていた第二次大戦中のニューヨークにおいて。
第4章 ブリコラージュ vs 近代知
・近代の思考が特定の時代と文化に特殊な思考であり、野生の思考こそ人類に不変的な思考であることを、個々の諸事例に共通する論理的な構造を抽出することによって提示。野生の思考を科学的思考とみなすことで、(中略)西洋近代の知の基盤を掘り崩した。
・(ブリコラージュは)新石器時代から現代まで続いている具体科学を、近代科学とは区別した形で表す。具体の科学をブリコルール(ブリコラージュする人)の仕事にたとえる一方で、近代科学(西洋近代に特殊な思考)をエンジニア(技師)の仕事にたとえている。
・ブリコルールがまず行う仕事は、雑多に集めおいた道具と材料の持ち合わせの全体との一種の対話を交わし、感性的なものと理性的なものを切り離さず、いま与えられている問題に対してこれらの資材が出しうる可能な回答の全てを並べだすこと。
・近代の知が用いるのは「概念」なのに対して、野生の思考が用いるのは「記号」。「概念」が現実に対して全的に透明であろうとするのに対し、「記号」は現実の中に人間性のある厚みをもって入り込んでくることを容認し、ときには要求する。
第5章 神話の大地は丸い
・ブリコラージュは偶然に与えられた素材との対話。神話の構造分析自体も素材としての神話との対話。神話が生んだ諸社会の技術や社会制度などを調べるのは、神話が環境から与えられたありあわせの材料をブリコラージュして作られているから。
〇神話の分析力、すごいです。まさに「ブリコラージュ」。だから、神様は世界にも「八百万」いるのだと思います。
おわりに 歴史に抗する社会
・「未開」社会は、「まだ歴史がない社会」ではなく、歴史ある社会が経てきた歴史以前の姿でもない。歴史を原動力とする社会(熱い社会)とは異なるタイプの社会(冷たい社会)。歴史を嫌悪している社会であり、歴史に抗する社会。
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