【合同会社MMPR】村上光義さん

板橋区の起業家インタビュー、第22回目は、「スムスビ一級建築士事務所」の野口さんにご紹介いただいた、「合同会社MMPR」代表社員、村上光義さんにお話を伺いました。

野口さんの友人と一緒にスムスビの事務所見学に来た村上さんに、「いつもジャージで動いているインタビュアーがいる」とご紹介して下さったそうです。確かに(笑)。

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-起業した理由を教えてください。

村上さん:そもそもでいうと、一緒に働きたい、雇いたい人がいるからです。妻の弟が軽度の知的障害があるのですが、結婚をするならば弟の面倒も見なければいけないという責任感みたいなものがきっかけでした。自分自身が長男でそういう風に言われて育ったからというのもありますが、亡くなった義祖母から、「うちの孫(妻)と結婚するとなったら最後は、弟のことも一緒に面倒を見ると約束してほしい」と言われていました。義祖母は、妻と義弟を母親代わりで見守ってきた人。交際中から、彼女とはそういう話もしていて、ゆくゆくは「義弟の面倒を見る」というのは私の中で当たり前のことだと考えていました。(自分の弟と妹は障害もあるわけじゃないしまぁ大丈夫かと)

村上さん:ただ面倒を見る、ということが、「お金を出してご飯を食べさせる・働かずに好きに暮らさせる」ということだとは考えていませんでした。障害に関わらず、どんな仕事でも、自分の出来ると思うことで社会の役に立ち、人と関わって生きていく場所を作ること、まさに自立を支援することこそが、面倒をみるということだと考えています。今、義弟は、就労支援施設で働いているので、もちろんこのまま自分でやっていってもらえるならそれでも良いですが、何か頼られたとき・困ったときに活躍する場所を作っておきたいなと。彼が誰にも頼る場所が無くても、最後の砦になる。そういう思いが起業の原動力かもしれません。私自身にも妻や子供たちがいますし、今は彼ら優先かもしれませんが、究極、私がいなくなっても家族が困らないように、また義弟が活躍する場があるように準備をしておく必要があるかなと考えて起業しようという考えに至りました。とはいっても、義弟は気ままにやっているようで、無理に今すぐうちで働け!みたいな余計なお世話をするつもりも一切ありません。

村上さん:メーカーで働いて営業や商品企画などモノ作りやマーケティングの基礎的な考えを学ぶことが出来たので、事業経営や労務・税務といったマネジメント業務のプロの方たちの働き方を学びたいと、経営コンサルティング会社に転職して、少しずつ起業に向けた基礎固めを進めていくつもりでした。ところが、コンサルティング会社で働いていた4年ほど前に、自分が癌になってしまいました。起業するのに何か他に準備はあるかな?とのんびり考えていたのですが、自分の死に直面し深く考える機会があり、のんびりしていたら死んじゃうかも?と行動を始めたのがMMPRを早々に起業するにいたった経緯です。癌は今のところ再発も無く問題ないのですが、自分の寿命に?焦りがあったこともあり、少し法人化が早まりました。自分一人で完結する経営コンサルティングに関わる仕事は個人事業主として、その他の家族も含めて他の方たちの力を借りないとできない仕事をMMPRでというような区分けで、法人を設立しました。

-最初のメーカーではどんな仕事をやっていたのですか。

村上さん:営業や商品企画・マーケティング、営業推進などです。10年ほどお世話になりました。10年でほぼ3年おきで部署異動があるというのは、大きい会社では普通のことだと思いますが、自分の希望のイメージや総合的にものづくりや仕事の流れを学ぶ場にしたいという思いがあったので、それに近い形で異動をしていくことが出来たのは、だいぶ我儘だし、あぁ沢山、迷惑を掛けたこともあったなぁと思います。

村上さん:その会社でそのまま人事とか行けるチャンスもあるかな?とも思いましたが、実務運営が多いメーカーの組織異動のペースに合わせていると時間もかかりそうだし、正直やりたくないこともやらなければならない部分も大きいなと考え、6年くらい前に監査法人系で士業の方々が沢山いる経営コンサルティング会社に転職しました。10億~50億くらいの中規模企業の経営者の方々がメインのお客さまです。事業計画策定の支援や業務分析、新商品や新規事業開発、営業体制の構築支援、人財育成研修などを行っていました。

-新しい学びを求めたのですね。

村上さん:はい。自分がメーカーでもともとやってきたこととは違う、無形サービス、また経営者の方々と仕事をするということで、かなりチャレンジングだったなと思います。マーケティングやプロモーション系のコンサルティング会社ではなく、士業などマネジメントに関わる人たちの物事の捉え方を学びたかったので、なんでコイツ、ここにいるのだろう?みたいな扱いを受けた時期もありますが、個人的には、そういう見方をする人がいるということが知れたことも含めて、転職してとても良かったと思います。自分自身の病気のことや、義祖母が亡くなったこともあり、焦っていたのかもしれませんが、個人で少しずつ経営や事業計画の相談をいただける機会も増え、見切り発車で3年ほど勤めて退職しました。

-今でも、経営コンサルティングは続けているのですね。

 

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-MMPRのスローガン、「もっと、みじかに」。耳に残る言葉です。

村上さん:自分自身もそうですが、自分がサポートさせて頂くお客様のお仕事も、本当の意味での「お客さま」、利用者の方と身近なものであってほしいな、と思っています。4月から運営を始めたコワーキングスペース「TAKE A NAP」には現在、月額会員さんとドロップイン利用者の方、延べ40人くらいの方にもご利用いただいています。

-なぜコワーキングを始めたのですか。

村上さん:事務所として自分たちが自由に利用するだけでも良いかなと考えたのですが、せっかく場所を持っているならば、しっかりと管理して、自分や会社の仲間と同じようにフリーランスやテレワークで働く、仲間?になるかもしれない地域の方の集いや仕事の場所として使ってもらえるならと始めました。来られた方に、経営コンサルティングをやっていました!こんな会社を経営しています!と毎度アピールしたりはしていません。が、利用される方も同じような働き方やフリーランスを志している方が多いので、起業したいとか、仕事やキャリアで悩まれている方がいたら、いつでも相談に乗ろうとは思っています。またそういう相談にお互いに乗ってくれる人達が集まる場所になればいいかなと思っています。仕事に限らず、お酒でも飲みながら、リタイアメント後の余生について話せるくらいの交流の場がいつかできたら良いなと考えています。

―確かに。サードプレイスという言葉がありますが、私が所属している「ときがわカンパニー」のiofficeは、まさに幸せな出会いの場かもしれません。

村上さん:MMPRに関しては、代表を今は自分がやっていますが、義弟みたいに障害があるメンバーも受け入れられるような仕組みや、優しいメンバーが集まったら、将来的には人に任すかもしれません。今はその準備。あまり小難しいデスクワークみたいな作業は、弟を見ていて苦手なのは知っているので、そこを一緒に支えながら、出来る仕事を創り出しながら任せてくれる人、義弟みたいな障害があっても輝ける場所を維持してくれる仲間づくり。今は自分ができることをやっていこうと思っています。

村上さん:林さんがやっている「板橋区の起業家インタビュー」ですが、起業家と経営者をつなげるという側面もあると感じました。面白い取り組みですね。

-そう言っていただけると嬉しいです!

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-村上さんが思う「自律型人材」とはどのようなものでしょう。

村上さん:責任感でしょうか。自分との約束を一個一個果たしていける人です。相手が待ってくれるなら時間がかかっても良いと思います。人との約束以前に、決めたことは自分に対しての約束です。もしその約束、目標に無理があったら見直して、いくことも肝心。その時できなかったら、その時は素直にごめんなさい、まだダメだなと理解する冷静な心も重要です。頑張っていれば、いつか出来るようになります。誰かに頼まれていることなら、待ってもらえるようにお願いをする。そこを曖昧にして、時間はかかるけど、取り掛かりもしない人は、そもそも自分でも約束したことを忘れている人か、どうしてもやりたくないことだったのかなと思います。悪意ではなく。

村上さん:いつも待たせてごめんね、と思って仕事しています。仕事で遅くなると、約束もしていないのに子供たちが起きて待っていることがあります。無条件にただ待ってくれている人がいるのは幸せですね。

村上さん:目標に向けてコツコツと行動していく。自律してない人は目標を立てられません。目標を立てることが大事だと思います。

-目標を立てることで、自律型でない人が自律型に変われると思いますか。

村上さん:はい。変わる人を多く見てきました。ただし、人から遅いだ、ノロマだ、なんだといわれても、いじけたり、拗ねたり、相手のせいにしないことです。そもそも待ってくれている人がいることの方が奇跡です。ペースだけは自分のペースでしか歩けないので開き直りも重要です。仕事ではめちゃくちゃ急かしますし、スピードには割とこだわっていますが、基本、無理なものは無理。いい意味で自分自身のこととして、プレッシャーを感じつつ、丁寧にやる。

村上さん:目標の感じ方にも2種類あると思います。「決めている目標」と「与えられている目標」。クライアントと受け手、みたいな気持ちになってしまうというのはそういうことですよね。お客さんの、お客さんのために、仲間として寄り添っていく。人から頼まれたからそこまでだ、ではなくて、その先どうするかに関わるつもりになりきる。もちろん相手にも決められた役割を求めるし、自分も役割を果たす。分担、協業なのに、あいつがやらないとか言い合いしている場合じゃない。他の人がやらないところが回ってきたらラッキーです。誰も出来ない、あなただけしかできないから回ってきたのだから、あなたのペースでやればよいと思います。仕事であればもちろん宣言して。

村上さん:自律型人材は「自分で決めている目標」として、物事や仕事を受け入れてやっているのだと覚悟や約束をし、責任感がある。そんなイメージです。これは楽しくて大好きでタダでもやりたい!と言うこともたまーにありますが、だいたい他の誰かがやらない・つまらないとかそんなことだから仕事はあるので、受けた以上はそこを自分事として丁寧にやり遂げられる人かなと思います。あとは、人から与えられたその目標を達成した後はどうするか、ずっとそればっかりじゃなくて、そもそもの自分がやりたいこととも組み合わせて、どう生きたいか、ということを考える人です。そこに意思がないと。別にいわゆる仕事じゃなくてもいいですが、人生の役割の話です。

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-最後に、これから起業を目指す若者にメッセージをお願いします。

村上さん:相談に乗ってくれる先輩は周囲に必ずいます。そういう人達にポジティブな評価を聴いて、小さくはじめる。ちょっと試す、のろまでいいので始めることです。ネガティブな反対意見は貴重ですが、大きく始めることでもないのであれば、聴かなくていいと思います。また、せっかちで大きいイメージばっかりが先行していて、停滞する時期のイメージが無い人の方が挫け易いし、自分もそうだったなと感じるので注意しています。

村上さん:若い人に限らず何かを始めるにあたって相談を受けるときに心がけていることは、本人がネガティブに感じている理由が「マインド」によるものなのか、具体的な「障害となる事実がある」ことなのかということを理解してからアドバイスをするようにしています。まず占いや祟りのようなやコントロール不可能な不安、みたいなことは考えても仕方ないです。私もお化けめちゃくちゃ苦手なのですが、儲かるからってお化け屋敷に入るのは無謀です。怖いものは怖いので。お金掛けないとできない(と思っている)のにお金を掛けるのが怖いと言うのは良くある相談です。

村上さん:また「障害となる事実」についても根拠が統計的な過去の事実に基づく情報やネガティブな確率論の話であれば、参考にするくらいで良いと思います。うまくいく人はだいたいうまくいかせる方法を探すことだけに時間をかけて集中した人だと思います。失敗してもともと、稚拙でも出来る方法を一緒に考えてくれるポジティブな人に相談したほうがいい。もちろん、親御さんや家族など、あなたの大切な時間(命)を、無駄なことにかけないで欲しいという、心配で言ってくれる人もいるとは思うのですが、大きく賭けずにコツコツやれるなら、止めろという人も少ないと思います。あとは、あまり事実に基づかない、ポジティブなことだけを言う人も注意です。なんでもリスクはつきものなので、リスクを理解した上でのポジティブ。そうじゃないなら騙そうとしている人もいるかもしれないので気を付けてほしいですね。

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対話型OJTを献本させていただきました。

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インタビュアーの林(ラーンフォレスト合同会社 代表社員)は、上記の「対話型OJT」をもとにした、新人の適応を促す「上手な仕事の教え方」を研修にてお伝えしています。

 
 
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「仕事とプライベート、しっかり分けつつ、人生のゴールとしてはつなぎ合わせることで自律型に活かせる」と村上さん。プライベートの充実には、コワーキングスペースでの越境学習も効果的なのかも、とあらためて感じさせていただきました。

村上さん、どうもありがとうございました!

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