子どもの心が癒され成長するドラマセラピー

子どもの心が癒され成長するドラマセラピー

尾上明代

序章 この本の目的と使い方

・なぜ「架空の状況」の即興ドラマを演じることが「治療」に結びつくのか、クライエントが「癒される」のは、設定が架空であってもそこに表出されている感情は本物であり、別の人の役を演じる「架空」の空間だからこそ、「現実」で直接、表出・表現できない(できにくい)ものを安全に外在化させることが可能に。ドラマセラピーの基本的で重要な構造であり魅力。

・ドラマセラピストでなくても何らかの形で「ドラマ」を扱った活動を他人に対して行おうとする人は、「ドラマ」の影響力について知っている必要と責任がある。

第1章 ドラマセラピーでなぜ子供は癒されるのか?

・アメリカのドラマセラピスト、サリー・ベイリーは「遊びは創造的なプロセスの出発地点としての役を果たす。ある意味ですべての芸術は遊びの一形態である」と述べている。

・ドラマセラピーは、ドラマと演劇のプロセスと成果すべてを利用し、クライエントが自分自身をよりよく知ること、過去を癒し、未来を構築し、現在の対人関係技術を発達させることを援助するもの。

・子ども対象の「受容とミラーリングの即興ドラマでは、(著者は)主に以下4つの目的で実施。①感情を表現させ、気カタルシスをもたらす、②想像力・創造力を養い、同時に自尊感情を高める、③現実生活でできないことを実現させる、④仲間との共感や気持ちの良い一体感を味わう。結果として高めることができるのは「子どもの自尊感情」。

・創造力を生み出す根源的なエネルギーは「想像力」。

・カナダの心理学者、アルバート・バンデューラが社会的学習理論の展開の中で提案した概念である「自己効力感」。バンデューラによると、自己効力は、遂行行動の達成(成功経験)、代理的経験(他者の成功を見るなど)、言語的説得(暗示、自己教示など)、情動的喚起(自身の内部的反応など)という4つの情報源によって基礎づけ。これらの情報源が自己効力の変容に有効であり、自己効力の変容が行動遂行の変容を導くこと、ある事態で変容した自己効力が他の類似の事態にも般化することが明らかになっている。

・実態とドラマの違いは紙一重とも言え、とても薄い。(中略)現実には叶わないことでもドラマで「体験する」ことにより、その時の良い感情、影響が現実の力に。現実から架空のドラマへ逃避をするのでなく、ドラマの中の成果や楽しさを現実に持ち帰る。

第2章 教師(セラピスト)側の葛藤解決と子供の「癒える力」

・(セラピスト自身が)相手役をすると、客観的に見るだけでは決してわからないクライエントの気持ちがダイレクトに伝わり、理解できる。

・ドラマという架空の設定で不快な気分になったり癒されたりするのは、「役」という仮面の助けを借りて、本当の感情を扱っているから。それがドラマセラピーの本質。

・ドラマセラピーの生みの親の一人であるアメリカのルネ・エムナーは、子どもの劇遊びとドラマセラピーに共通する根本的な部分は、あたかも本当のことであるように演じること、しかも同時に、実際はそれが作り事であることが分かっていることである、この二重の意識レベルは驚くほど速い年齢で獲得する能力であり、演技者は「創造的領域」と客観的領域の二つに同時に存在していることになる、と述べている。

・「受容とミラーリングの即興ドラマでは、少ない回数・短時間で行うものなので、ハッピーエンドになるかどうかは大変重要。そして「結末」がクライエントの状態を知る道具(アセスメント・ツール)に。

〇研修で受講者にやってもらう時には、ここを重要視することがやはり必須だな、と思います。

第3章 「受容とミラーリングの即興ドラマ」のプロセスと方法

・「受容とミラーリングをしながらドラマを進行する」。ドラマの中でその子が表出したセリフ・行動・感情を一切批判や判断せずに、そのまま受け容れるということがこの手法では最も大切。カール・ロジャーズのクライエント中心療法における、需要と共感的理解を基本とするカウンセリング技法と同じ考え方を、ドラマという形態で具現化して行う手法。

・受容とミラーリングの即興ドラマは、子どもたちが自分の感情をミラーリングされ共有されることにより、安定していく過程を示している。

・ドラマセラピーは基本的には集団療法なので、セラピストと1対1で行うセッションと違い、グループ内のダイナミクスをうまく使い、お互いの相互作用の中で参加者が一緒に成長していけるという利点が。(中略)ドラマを見ている他の子どもたちは、単なる観客ではなく、co-creators(共同創作者たち)であり、この構造が効果的。

〇ドラマを見ているとミラーニューロンが活性化する。

終章 教師にとっても意義と気づき

・実践を重ねてドラマでの対応に慣れていくと、現実生活で即興的に対応を迫られる場面や、子どもをケアする場面、しかる場面、褒める場面、隔週指導する場面などで、教師が子どもの心に沿った創造的な指導や対応をすることがよりスムーズにより容易に。

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