来るべき民主主義
来るべき民主主義
國分功一郎
第1章 小平市都道328号線問題と住民投票
・行政の決定プロセスにはほとんど関わることはできない。関わる権利は保証されていない。それでも民主主義と言い張ることができるのはなぜなのか。
・東京都は「府中街道の渋滞をどうにかしたい」から「328号線を作る」と考えているのではなく、計画があるから渋滞を口実に持ち出し、計画があるから府中街道の渋滞がなくならない。
・今の日本では、行政に対してもの申すとは、絶対に年を取らない「職員」に向かってものを言い続けることに。
第2章 住民参加の可能性と課題
・政治運動が一過性のものであってはならないが、継続はしばしば手段の目的化をもたらす。
・ツールとしての政治家。政治家は訪ねていくと意外と話を聞いてくれるもの。
・328号線問題を訴えながら感じたのは、多くの人が行政のあり方に疑問を抱いているということ。何を言っても批判されるネット空間で、「行政が全く耳を傾けないので住民投票を行いたい」という論点についてほとんど批判がなかった。
・不安は苦痛ではなく、苦痛が訪れるかもしれないという気持ち。失望という苦痛が訪れるかもしれない、という不安は、希望することそのものを恐れることがある。
第3章 主権と立法権の問題
・政治の分野で問題となる様々な論点を突き詰めていくとあらわれる区別は「敵と友」。自分が推進する政策に反対してくる敵は?政治において問題になっている究極的なもの。
・人間は常に複数であり、政治はその間を取り持ち、合意・決定を下すが、もたらす決定は一つでしかありえない。政治は「多と1」を結び付けなければならないが、それはできないという原理的な無理が政治が困難で厄介な理由。
第4章 民主主義と制度
・「法」とは行為の制限。「制度」は行為のモデル。
・専制とは、多くの法とわずかな制度を持つ政体であり、民主主義とは、多くの制度とごくわずかの法を持つ政体。
・主権とは立法権であるという建前のため、主権者たる民衆は行政による決定のプロセスから排除されているのであれば、行政の決定に主権者が関わるような制度を作れば、近代の政治哲学の誤りを少しづつ是正することができる。
・議会における議長は「自由な主体」を前提。ファシリテーターは「自由な主体」を前提にせず、皆が議論において不自由であるという前提に立ち、議論を容易にし、促進するための様式を用意し、場を企画・運営していく。
・うまくファシリテーションしながらワークショップを重ねていくと、参加者は「これは自分が出したアイデアだ」と感じるように。
第5章 来るべき民主主義
・民主主義は「常に来るべきものにとどまる」、常に実現の手前にあり、十分でないものであり続ける。(中略)実現されてしまってなならない。
・民主主義は必ず何らかの失敗を伴う。民主主義の理念と現実の間には必ず「懸隔」がある。
・民主主義と呼ぶに足る民主主義はいまだ存在していないから、民主主義は目指されなければならない。
・完成した民主主義の姿を思い描くことはできないが、社会はもっと民主的になるべきであり、民主的にして行ける。二つの意味を「来るべき民主主義」という一つの表現に。
あとがき
・勇気とは一人でいても湧いてくるものでなく、一人でいると無謀になるが、仲間がいると勇気を得る。無謀とは困難を見ない事、勇気とは困難を見据えること。
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