パーパス経営
パーパス経営
名和高司
第2章 資本主義を超えて
・人本主義は今なお、日本発グローバル企業のバックボーン。(中略)資本主義の先は人本主義(タレンティズム)。破綻しつつある株主主権の資本主義を「グローバルスタンダート」とあがめる時代錯誤から目を覚ますべき。
・大乗仏教の根本は「自利利他」、他者に対する慈悲を重視することにより、悟りに到達しようとする宗教的実践に。
・MTP(Massive Transformative Purpose)は組織の核となるもので、組織の目標を示している。
第3章 志本主義の系譜
・アダム・スミスの「道徳感情論」の中で、共感(sympathy)こそが社会秩序の基盤となると提唱。他人の感情や行為の適切性を評価する能力であり、利害対立を超えた公平な判断を下すには、賢人(wise man)が必要と。
・本来「人本主義」から出発していたはずのスミスは、「資本主義(Capitalism)」の殿堂に祭り上げられてしまった。
・渋沢栄一が説いた「合本主義」。「玄孫の渋澤健は「合」は「共」に通じるものとし、「論語と算盤」の「と」に注目し、その思想の根底に流れるパワーを「と」の力と呼称。アメリカ流の「か(or)」ではなく、「と(and)」こそ経営の神髄。インクルージョンやサステナビリティは「と」の力の重要性が再認識されたから。
・「論語と算盤」「自利利他公私一如」「三方よし」は「志本主義」の教えを受け継ぎ次世代に。
第4章 日本流再考
「生かされて、生きている」仏教の奥義。「生かされている」は、全てがつながっていることを、「生きている」は、個々がユニークであること。仏教の二重構造。自立した人が共同体をつくることを提案。共依存や馴れ合いではない、成熟した共在性の世界を創造。
第5章 志本経営の時代
・企業がESGを経営目標に掲げるのは、投資家に迎合した本末転倒な姿。
・SDGsより素晴らしい日本の言葉や思想。「Okage Sama」「Otagai Sama」「Otsukare Sama」。
・「Purpos & Profit」はまさに「論語と算盤」そのもの。合本主義。
・トリプルボトムラインのど真ん中にあるPurpos。「3P+P」経営もまた、志本主義に深く根差したもの。
・現行のSDGsから、「サステナビリティ×デジタル×グローバルズ」という新SDGsに視座を高めること、2050年からバックキャストして非連続な一歩を大きく踏み出せば、日本企業が現在の混迷から抜け出し、21世紀型の成長に向けて世界をリードできる日が。
第9章 サステナビリティの実践
・「OODAループ」。「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Dcide(意思決定)」「Act(行動)」という現場に根差した行動原理。
第11章 「グローバルズ」のフラクタル構造
・イノベーションは中枢からではなく、変化の波打ち際にある辺境から起こる。同様に、志本主義という経営モデルのイノベーションも、辺境が出発点になることが多い。(中略)企業においても社会においても、内外の辺境人にどれだけ活躍の場を与えられるかが鍵。
第12章 鍵を握る無形資産
・成果としての知識ではなく、知識を生み出し続ける仕組みにこそ本当の価値がある。知識そのものを知財として守るのではなく、むしろ惜しみなく他者と共有し、他の知識と結合させることによって、新しい知識を生み出していくことが知識を増加させることにつながる。
・ブランドとは、自社ならではの「志(purpose)」に基づく顧客への「約束(promise)」。その約束が顧客にとっての価値として実現され、顧客の意識と行動の変容をもたらすものがブランド価値。
・志本主義の時代には、顧客に迎合することなく、自らの高い志に基づき、あるべき社会に向けて顧客をリードし、進化させていくことを標榜。顧客体験価値から顧客進化価値へのパラダイムシフト。
第13章 MX - 経営のイノベーション
・ジョブズは「後出しじゃんけん」の巧者。先行する商品群に、使い勝手の良さ(ease of use)とシンプルを基軸としたデザイン性という独自のアルゴリズムを注入することで、新たなカテゴリーを生み出すのが「ジョブズ・マジック」の本質。リノベーション巧者。
・現場の知恵から生まれた独自のHowをいかにアルゴリズム(型)化できるかが本質的な課題。それを組織の内外に流通させ、新たな知恵を加えて進化させていけば、Howが競争力と共創力の源泉に。
・現代の日本企業の「三大疾病」、オーバープランニング(過剰計画)、オーバーアナリシス(過剰分析)、オーバーコンプライアンス(過剰法令順守)。アメリカ流の分析的な経営手法に過剰適応した結果、自社の存在意義(志)を見失ってしまった。
・最近の流行病以前に、日本的経営という美名に隠された深い病、「自前主義病」「完璧主義病」「実践主義病」。
第14章 失われた30年の蹉跌
・トヨタ生産方式とは考える人間をつくるシステム。考える現場こそが、日本企業がオペレーションの中からイノベーションを生み出す仕組み。(中略)リアリティ満載な身体脳こそが、日本企業の成長エンジンを生み出す知恵の源泉に。
・「グローバルスタンダード」という言葉自体、日本人の卑屈さが生んだ和製英語に過ぎない。世界標準なるものはどこにも存在しない。実は「アメリカの流行病」のこと。
第15章 志が拓く未来
・多様性を持ち込みつつ、それらを咀嚼して懸命に独自の価値観に織り上げ、一途にやり続けることこそ日本の独自の方法論であり、日本流。西田幾多郎のいう「絶対矛盾的自己同一」の世界。
‣日本流の一途とは、同じところにとどまることではなく、変化を常態してとらえ続けるダイナミックな姿勢。「何かにとらわれた心」ではなく、「「何ものにもとらわれない心」。福岡伸一のいう「動的平衡」を貫き通すということ。
・良い伝統を残しつつ、時代に合わなくなったものを刷新するという取捨選択を実践。「無(ゼロ)」の美学ではなく、「負(マイナス)」の美学が真の日本流。
・既存企業が新しい時代に向けて進化するためには、「跳ぶ」のではなく、「ずらす」ことを心掛けること。自社が持つ本質的な強みを「純化」したうえで別の場(市場)や価値(商品)にずらしていくこと。
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