悪人列伝 中世篇

悪人列伝 中世篇

海音寺潮五郎

梶原景時

・盛衰記は義経びいきの書物のため、梶原に好意を持っていない。

○誰のために書かれたものなのか、真贋を見極めることが肝要なのは今昔変わりませんね。

・景時のような性質(インテリにありがちな神経質なところ)は官僚によくある性質。彼の長所も生まれながら官僚であるところに。

・猜疑心が強く、自分の所属している権力者だけしか信ずることができない。この忠誠心は犬のもの、人間なら官僚のもの。

○物言いがすごい。でも、これを気に留めるだけで印象も変わります。

・景時は頼朝に対しては、お役に立つものと見れば囚人すらも推薦するほどの忠誠心がある。悪意を持ってみるものには、打算だと解釈されるが、景時の官僚的忠義心からのことと見たい。

北条政子

・嫉妬は本来は善でも悪でもない。食欲や性欲と同じ。それが限度を越すところに初めて悪徳とされる。過度な嫉妬が社会や家庭の秩序を乱せば悪徳となるのは当然のこと。

・政子は悪人ではなく、常に善意をもって婚家のためによかれと努力し続けた人だが、あまりにも勝気であり、賢かったためにその独占欲によって夫を苦しめ、子どもらの圧迫者となり、婚家を滅ぼすに至る。

・政子の一生は、善意が善となるためには叡智がともなわなければならないことを教えるもの。

高師直

・権勢の人を真似ようとする心理は滑稽でもあり、浅ましくもあるが、いつの時代にも。この時代は(朝廷側、公家衆まで)武士の粗豪な真似が流行。

足利義満

・驕児には善・悪の観念はなく、無道徳。第三者の目に己の行為がどう映ろうとかまわない。義満はこれ。

あとがき

・歴史時代の人物は自ら弁護する自由がないので、評伝するにあたり、検事の論告の様であってはならず、判事であるべき。弁護士の言にも耳を傾けて判ずるのが礼儀。

○優しさが伝わってきます。

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