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非言語コミュニケーション
マジョリー・F・ヴァーガス

【1 ことばならざることば】

<九つの非言語メディア>

・非言語(ノンバーバル)コミュニケーション研究のリーダーの一人、レイ・L・バードウィステルは、対人コミュニケーションを次のように分析している-「二者間の対話では、ことばによって伝えられるメッセージ(コミュニケーションの内容)は、全体の三五パーセントにすぎず、残りの六五パーセントは、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間のとり方など、ことば以外の手段によって伝えられる」と。

・これまでの調査研究の結果、つぎの九種類の「ことばならざることば」が、それがことばといっしょに用いられるかどうかとは無関係に、人間のあらゆるコミュニケーションに寄与するところ大であることが明らかになっている。

(一)人体(コミュニケーション当事者の遺伝因子に関わるもろもろの身体的特徴の中で、なんらかのメッセージを表わすもの。たとえば性別、年齢、体格、皮膚の色など)
(二)動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの)
(三)目(「視線の交差(アイ・コンタクト)」と目つき)
(四)周辺言語(パラランゲージ)(話しことばに付随する音声上の性状と特徴)
(五)沈黙
(六)身体接触(相手の身体に接触すること、またはその代替行為による表現)
(七)対人的空間(コミュニケーションのために人間が利用する空間)
(八)時間(文化形態と生理学の二つの次元での時間)
(九)色彩

・ジェスチャー、動作、合図、記号などを、全世界の人間が同じように使い、同じように解釈することなどあり得ないのだ。ことば以外の表現手段それぞれに差異をもたらす四つの大きな要因は、(一)個人的差異、(二)男女性別による差異、(三)文化形態による差異、(四)状況による差異である。

・ことばであれ、ことば以外のものであれ、あらゆるメッセージは、その意味するところをかなり変えてしまうかもしれない状況の中で、送り出されたり、受け取られたりしているのである。つまり、「パパに勝った、勝った」と自慢している子どもの頭ごしに、父親が妻に対してするウィンク(目くばせ)と、カクテル・ラウンジで男性が女性に送るウィンク(色目)では、まったく違った意味をもつだろうということだ。

・ことばであれ、ことば以外のものであれ、万人共通の伝達手段などは存在しないということだけである。

○集団での共通言語。

<隠すより現わる>

・通常は非言語コミュニケーションとは、話しことばに付随し、それを補足するものである。

・非言語コミュニケーションが、ことばの代役を果たすこともある。試合に敗れて、がっかりした高校生が帰宅した時、彼の姿勢と顔の表情を見れば、気にして待っていた父親には、知りたいことはすべて判るのだ。

・非言語メッセージが、ことばでのメッセージと矛盾することもある。(中略)話していることと実際との不一致は、見破りにくい場合もあれば、見えすいている場合もある。(中略)メッセージ間に矛盾がある場合には、私たちはことばによるメッセージよりも、非言語メッセージの方をどうしても信じたくなるものなのである。

・言語コミュニケーションの解読は意識して学習したものなのに、非言語メッセージの解読法は、何も意識的に習得したものではないからだ。だから私たちは、ことば以外の信号が解読できるのは直観によるものだと信じこみ、理屈抜きだからこそ余計に、それが正確なはずだと思うのである。

<ボディ・ランゲージ>

・非言語コミュニケーションは「他人がある人間を何者だと思っているか」を暴露してしまうだろう。この典型的な実例が、ペンシルベニア州ピッツバーグ大学の実施した調査に示されている。この大学の卒業生で、身長六フィート二インチ(一八八センチ)から六フィート四インチ(一九三センチ)の者の就職先での初任給は、六フィート(一八三センチ)以下の者にくらべて、一二・四パーセントも高かった。(中略)人事部や求人担当者は、背の高い男性がより有能だと明らかに「思っている」のである。

<教師としての社会環境>

・ごくわずかの例外はあるが、非言語コミュニケーションは学習によって身につくものである。子どもが成長するにつれて、周囲の大人を観察し、模倣することによって習得してゆくのだが、それはたいてい無意識のうちにそうなるのであって、意識して学習することはまれである。

<女性優位の領域>

・非言語メッセージを認知し、正確に解読することができる者の数は、男性被験者より女性被験者の方が多いという事実は、数多くの実験で明らかにされているのである。

○男性の浮気はすぐバレるのはこれだと思います。

【2 ボディ・メッセージ】

<五官すべてを動員して>

・話しことばによるコミュニケーションを受信するには、もちろん聴覚がもっとも重要だが、非言語コミュニケーションでは、人間の五官すべてが、メッセージを受け取ることになる。

【3 動作と表情】

<病院の待合室で>

・シナリオライターやプロデューサーは、観客に対して、非言語メッセージを手がかりにして登場人物の意思や感情を推察するようにと強制するのである。

・ポール・エックマンとウォレス・V・フリーセンという二人の現役の研究者は、人体の動作を、起源、機能、メッセージ化された行動などにもとづいて五つに分類している。すなわち(一)表象動作(エンブレム)、(二)例示動作(イラストレーター)、(三)感情表出動作(アフェクト・ディスプレイ)、(四)言語調整動作(レギュレーター)、(五)適応動作(アダプター)の五つである。

<勝利と平和のVサイン>

「表象動作」とは特定の語句の代理をする動作で、これはことばによるコミュニケーションが困難だったり不可能な場合によく用いられる。たとえば野球では、捕手が投手にサインを送るための動作がこれである。

・表象動作とは、意識的にせよ、潜在意識的にせよ、とにかく学習しなければ身につかないものであることは明白だ。表象動作が伝達するメッセージは、それと意識して送り出されるものなのだ。

・実際に使われている言語の中の語句と同じように、表象動作も常に追加されたり、修正されたり、廃棄されたりしている。

○Vサインは第二次大戦中は「勝利」、ベトナム戦争では「平和」、でも、内側に向ける「裏ピースは」・・・なるほど。

<ウェイトレスは犬か>

・ことばと同様に表象動作も、国が異なれば翻訳が必要になることが多い。一つの社会ではあるはっきりした意味をもっているジェスチャーが、別の社会では別の意味になることがあるからだ。

<かぶりを振って「イエス」>

・エックマンとフリーセンが、人体動作による表現行動の二番目に分類した「例示動作」とは、言葉によるメッセージに付随し、そのメッセージを説明・例証するものである。講演のさい、テーブルを叩いたり、聴衆の方へ身を乗り出したりするのは、話していることばを強調するための例示動作を用いているのだ。

・例示動作はごく自然かつ容易に話しことばに付随するため、あらゆる人体動作の中で、これだけは万国共通の意味をもっていると推測されかねない。しかし動作学研究のリーダーの一人、前出のバードウィステルは、そうではないと強調している-「あらゆる社会に共通する対人的意味をもつジェスチャーその他の人体動作はまだ発見されていない」のだと。(中略)言語が異なると、それを話すさいに用いるジェスチャーの数もタイプも異なることは、言語学者がすでに久しく指摘していることである。

・ニューヨーク市のはなやかな市長だったフィオレロ・ラガーディアは、父がイタリア人、母がユダヤ人で、その生涯の大半をニューヨークで過ごした人だ。だから彼は、イタリア語、イディッシュ語、それにニューヨーク訛りの英語を、いずれも流暢に話すことができたので、(中略)。ただニュース映画の中の彼のジェスチャーを見守るだけで、今どの言語で話しているか判った。ラガーディアはボディ・ランゲージでも三か国語を話せたのである。

○ボディ・ランゲージにも国籍が。なるほど。

<感情表現の落とし穴>

・動作学上の行動形態分類の三番目は「感情表出動作」である。これは本来はメッセージをこめた顔の表情のことだが、顔以外のジェスチャーも重要な補助的メッセージを伝えるのである。

・感情の表出は、表象動作や例示動作よりもっと自然発生的で、人間の意識による規制はさらにおよばなくなる。

・感情表出動作は、ことばによるメッセージを補強したり、増幅したり、また裏切ったりすることもある。優秀な俳優なら、舞台の上であれ、外であれ、「仮面をかぶって」自分の演技に意識的、連続的に専心することで、他人を「だます」ことができるのである。

・伝達されたメッセージはすべて「状況」の中で考慮され、解読されねばならないのである。

・エルンスト・バイエルが実施した調査の結果が、的確なものだとしたら、感情表出動作によって伝達されたメッセージを信用しすぎることは、きわめて危険なことかもしれない。バイエルと彼の研究仲間は、被験者数人にテレビ・カメラの前で六種類の感情-怒り、恐怖、誘惑、無関心、幸福、悲しみ-を演技させた。(中略)被験者の判断では、自分が演技した六種類の感情の正確な表出になっていたはずだ。

・この演技を解読してもらうため、そのビディオを大ぜいの観察者に映写して見せたのだが、(中略)。演技者たちが伝えそこなった感情内容の量と、彼らの意図および自己イメージと他人によって解読された彼らの演技内容との食い違いは、驚くべきものだった。(中略)ある女性は他の被験者と同じように六種類の感情表出に努めたのに、そのすべてが「誘惑」の演技だと判定され、もう一人の女性被験者の演技は、すべて「怒り」の感情だと解読されてしまったのだ。

○個性・外見に引っ張られてしまうというのはあります。そこをいかに細かく見られるかが肝ですね。

<「右へならえ」現象>

・人体動作の行動形態分類の四番目「言語調整動作」は、ことばによるコミュニケーションを監視し規制するものである。話したことが聞き手に理解され受け入れられているかどうかを知らせるために必要な反応を提供してくれる動作なのだ。

・言語調整動作は無意識のうちに送・受信されるのだが、それにもかかわらず、これは習って身につける行動形態であり、話しことばを習得するさいに潜在意識的に同時に身についてくるものだ。このことは、文化形態と言語が異なれば、言語調整動作もわずかながら違っているという事実によって証明される。

・動作学上の調査をして判る一つの興味ある現象は、グループ内の人たちは、自分が同意する相手の姿勢を模倣することが多いということである。この姿勢の同調現象は、ちょうど鏡に映ったように左右逆になることもあるし、相手の姿勢とジェスチャーまでそのまま複写したようになることもある。

○ミラーリング、ミミクリ。

・誰かが話し、他の人たちがそれを聴いている場合、聞き手は話し手のことばを解読し、斟酌し、価値判断しているのだが、そのさいの聞き手の動作から、話し手のことばが順調に進行しているかどうかを知るための豊富な手がかりが得られる。

○研修参加者の様子を見る時は、まさにここが重要です。受講者は、講師にたえずメッセージを送ってくれています。

<人目を避けて>

・人体動作の五分類の最後は「適応動作」と呼ばれる断片的な動作で、これはメッセージ伝達の意図なしに行われるものである。その名称が示すとおり、この動作は必要を充たすため、行動をするため、感情や対人接触を処理するため、その他日常生活に必要なさまざまな課題を果たすために、自分を適応させる目的で行われる。適応動作は自分だけの世界で、人目に触れることなく行われるもので、人前では修正されたり、部分的に抑圧されたりする。たとえば私たちは、人目がなければ自分の体のどこでも痒いところがあれば、その痒みが止まるまで掻くことができる。(中略)だが人前となると、こういうことはできないのである。

・適応動作の大半は幼時に発達する。模倣によって習得するものもあれば、生得的なものもある。(中略)人前でも受け入れられるような形に修正するように教え込まれるものもある。

【4 目の使い方】

<目は口ほどに>

・目の働きについては、非言語コミュニケーションの研究者たちは、恋愛小説じみた修辞には惑わされることなく、独自の専門用語を用いている。お互いに視線を交わすことを俗にアイ・コンタクトと言うが、専門家たちが選んだ用語は「相互注視(ミューチュアル・ゲイズ)」であり、これは反応し合う二人の人間が、お互いに相手の「目の部分を含む顔」を見ることを意味する。(中略)「注視(ゲイズ)」ということばは、ある人間の「見るという行為」そのものを表わし、その視線の先が人間であるなしには関わらないのである。

<二人が向かい合う時>

・各種の研究調査の結果、対話時の目の五つの機能が明らかにされている。それは(一)話す・聞くの交代時期を調整する、(二)相手の反応をモニターする、(三)意思を表示する、(四)感情を表現する、(五)当該対人関係の性質を伝達する、の五種類である。

<就職面接の決め手>

・画面から話しかける映像フィルムで、話し手の注視率が一五パーセントのものと、八〇パーセントのものを被験者に見せて、話し手の人物評価をさせた実験がある。その結果、被験者たちの印象は、注視率一五パーセントの話し手は、冷たい、悲観的、用心深い、弁解的、未熟、回避的、従順、無関心、鈍感などであった。一方、注視率八〇パーセントの方は、親近感あり、自信たっぷり、自然体である、円熟、誠実などの印象を与えたのである。

<聴衆を前にして>

・話し手に内容のある七分間スピーチをさせ、その間の話し手の注視率をいろいろに変えてみるという実験がある。その結果は、聞いている側は、話し手の注視率が高いほど、その人物がより熟達、博識、経験豊富、誠実、親密、親切との判定を下すということだった。もう一つの調査では、話し手の注視率と聴衆がその人に対して感じる誠実度との関係を調べているが、それによると、「誠実」な話し手がスピーチ時間中の六三・四パーセントは聴衆を見ているのに対し、「不誠実」な話し手は二〇・八パーセントしか見ないということであった。

○聴衆を見ない人は、自分の頭のなかを覗き込むのに精一杯なのかもしれません。自分本位。

【5 周辺言語(パラランゲージ)の伝えるもの】

<声に万感をこめて>

・時には「声調(ヴォーカリックス)」とも呼ばれる「周辺言語」には、ことば自体は除いて、別の人間に聞きとることのできる人間の音声が生むすべての刺激要因が含まれる。この中には、力のこもった叫び声、悲鳴、太く低い共鳴音から、泣き声、単調音、声に出してひと息つく時の呼吸音にいたるきわめて多種多様な音声的刺激要因が含まれるのである。

・アメリカで多年にわたり非言語コミュニケーションを研究しているアルバート・メラビアンは、人間の態度や性向を推定する場合、その人間のことばによって判断されるのはわずか七パーセントであり、残りの九三パーセントのうち、三八パーセントは周辺言語、五五パーセントは顔の表情によるものだと述べている。

【6 沈黙の世界】

<無言の訴え>

・疑いもなく、「無言でいること」は一つの強力なコミュニケーション手段なのである。

・沈黙について考える前に、話しことばでのコミュニケーションに付随する沈黙もあれば、言葉による相互反応とは無関係な沈黙もあることを、認識しておくことが重要である。(中略)厳密な意味では、このような沈黙は、「周辺言語」の延長である。文法上、「連接(ジャンクチャー)」と呼ばれるもっとも短い無言時間は「アイス・クリーム」と「アイ・スクリーム(私は叫ぶ)」、(中略)とを区別させるあの一瞬の沈黙だ。

・もうひとつの周辺言語的な沈黙は、「間(ポーズ)」である。(中略)コメディアンのジャック・ベニーも「いちばん大笑いしてもらったのは、何もしゃべらずに黙っていた時だよ」と言っている。

○この「間」をうまく使える人が会話の達人。

・人間が対面して話している時には、この「間」に気づかないことが多いのだが、これはその無言の時間が顔の表情、ジェスチャー、目の動きなど他の非言語メッセージで穴埋めされているからである。

【7 ふれあいの諸相】

<ハウ・アー・ユー?の意味>

・「ハウ・アー・ユー?」とことばの挨拶を交わす時には、なにも相手の健康や感情の状態が本当に知りたいわけではなくて、それが実際の身体接触はしない「触れ合い」の儀礼の一部であることは、お互いに了解済みなのだ。

○挨拶をしっかりする。その中にも相手からの「非言語メッセージ」が含まれているから。

【11 ことばよりも強く】

<フェロモンの魅力>

・近年、科学者たちは「フェロモン」と呼ばれる一群の匂いに、格別の注目を向けている。

<シンクロナイズド人間行動>

・現在多くの研究者たちが注目しているもう一つの人間現象は「同時行動(シンクロニー)」、つまり複数の人間が相互反応している時に、無意識のうちに、お互いのリズムや動作がシンクロナイズする現象である。

・動作学の専門家ウィリアム・コンドンは、会話をしている人間の映像シーンを一こまづつ細かく分析した結果、人間が話す場合には、その人の動作すべてが、まばたき一つにいたるまで話されていることばとシンクロナイズしていることを発見した。しかも話し手の動作がことばのリズムに同調するばかりか、その人の話を注意深く聞いている人たちの動作までも、同じように同調するというのである。

・コンドンがEEG(脳波測定記録装置)を使って、会話によって相互反応し合っている被験者たちのグループ全員の脳波を調べたところ、驚いたことに各自の脳波チャートの記録針まで、完全とは言えないまでもすべてシンクロナイズして揺れたのである。

<間断なく・果てしなく>

・人間はおよそ目を醒ましている時々刻々すべて、なんらかの形でコミュニケーションをしているのではないかと、もし思い始めたとしたら、それが正解なのである。

・人間は非言語メッセージを創り出すことを避けられないし、他からのメッセージを解読する技術は、経験を重ねることで向上してゆくのである。

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