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ノンバーバルコミュニケーションと脳ー自己と他者をつなぐもの

岩田誠、河村満・編集

<発刊に寄せて>

岩田:脳というのは嘘つきで、自分の本当の思いとか、本当の感情を隠すために言語というのは非常に便利なものだと、僕はよく言うんです。というのは、体のいろいろな状態、表情というのは本物が出てしまうんです。その本物を隠すには、バーバルにいくしかない。だから、乱暴な言い方をすれば、バーバルというのは嘘をつくために存在する。ノンバーバルは本当のことしか出ないですからね。

○確かに。口は災いのもと。ですが、ノンバーバルは操ることもできると思います。そこがまたもどかしくもあり、頼もしくもあり。

 

Ⅰ 顔の脳科学

 

【1 モナ・リザの微笑み-顔ニューロンが問いかけるもの】小野武年

 

<D 扁桃体と顔ニューロン>

・筆者らはサル扁桃体ニューロンの顔の向きや表情に対する応答性を解析した。(中略)頭部が向かって左を向き、視線が猿に向いている顔写真に対して強い促進応答を示している。

<E 顔ニューロンが問いかけるもの>

・モナ・リザの顔は確かに役45度左斜め向きであり、視線は見る人を常に向き、アイコンタクトを生じている。この配置こそがまさに驚くべきことであり、扁桃体や前部上側頭溝を最大に活性化する顔と眼の配置であることがわかる。

○サルの実験で得られた、顔の角度と視線が、モナ・リザの顔と同じ構図!鳥肌が立ちました。

 

<おわりに>

・顔認知はヒトをはじめとする霊長類の社会的なノンバーバルコミュニケーションの礎であり、(中略)霊長類の脳には顔に特化した神経回路網が存在する。

 

【2 顔の脳科学】柿木隆介

・「顔」はその個体に関するさまざまな情報を読み取ることができる窓口でもある。(中略)動物は相手の視線や口の動きを見て、「敵か味方か」、「攻撃してくるか防御しているか」といった情報を読み取る。

・生まれたばかりの赤ちゃんにも、既に「顔」的な構造をもつものに興味を示す能力が備わっていると思われる(Watanabe,Kakigi & Koyama,et al,1999)。

 

【4 自分の顔を見る】杉浦元亮

 

<C 自分の顔の3つの「顔」>

 

『3 社会とのインターフェースとしての自分の顔』

 

・われわれは皆、客観的自己像、すなわち他者の目に映る自分(必ずしも視覚的なものだけでなく、性格や能力なども含む)を意識する。(中略)客観的自己像の中でも、顔は非常に重要な位置を占める。魅力的な顔は、異性パートナーの獲得をはじめ、さまざまな社会的関係において有利である(Thornhill & Gangestad,1999)。

○自信に満ちた顔は魅力的ですね。

 

<おわりに>

・自分の顔は身体の一部でも、非他者でも、社会とのインターフェースでもあり、それぞれ異なる脳ネットワークの脳活動変化を引き起こすと考えられる。

 

【5 顔を通じた対面コミュニケーション】市川寛子、山口真美

 

<A コミュニケーションにおける顔>

 

『ヒトは顔を見る』

・顔がおもなコミュニケーション器官となりえたのは、そこに感覚器官が密集しているからというだけでなく、発達した顔面筋によて多様な表現をすることができるからである。

 

『顔を見たときの乳児の脳活動』

・ヒトは生後間もない頃から、顔を特別な視覚刺激と捉えている。

 

<B 表情を介した感情伝達>

 

『1 表情は感情を表わす』

・二者間の会話の中で、非言語メッセージが伝える情報量は65%(Birdwhistell,1970)とも93%(Mehrabian,1967)であるともいわれているが、中でも顔の表情が伝える情報量は全体の55%を占めるという(Mehrabian,1967)。

・表情が伝える情報はやはり感情情報が主であることがわかる。

 

『2 表情を通じた感情理解』

・表情から他者の感情を理解するメカニズムとして現在注目を集めているのは、シュミレーション説(Carruthers & Smith,1996;Davies & Stone,1995)である。ヒトが他者の感情を理解する際には、まるで「他人の靴に自分の足を入れてみるように(Gallese & Goldman,1998)」他者のこころを自分のこころを媒介として追体験し、共感的に理解するという説である。

・シュミレーション説は、近年の脳科学の知見からも支持される。ミラー・ニューロンの発見はシュミレーション説の裏づけとして有力である(Gallese & Goldman,1998;Preston & de Waal,2002)。

 

『3 表情模倣による感情理解』

・シュミレーション説は、行動科学的見地からも支持されている。表情模倣という現象は、その根拠の一つである。ヒトは他者の非表情を見ると、ついそれと同じ表情をしてしまう。非意識的で自動的なこの反応は、表情模倣(Dimberg,1982;Dimberg,1988;Dimberg,Thunberg & Elmehed,2000;Blairy,Herrera & Hess,1999;Lundquist & Dimberg,1995)と呼ばれる。

 

Ⅱ コミュニケーション・スキルと脳

 

【1 身体性コミュニケーションとその障害】小早川睦貴

 

<B 身体性コミュニケーションの神経メカニズム>

 

『3 「動作」の理解』

 

[1 動作の表出と認識には共通したシステムが機能する]

・知覚された身体の動きがコミュニケーションに利用されるには、その動作の目的や意味、意図が理解される必要がある。例えば、ネコに対してどこかを指差しても、指差した方向には注意を向けず、指の匂いを嗅いだり指をなめたりする。

・身体性コミュニケーションにおいて、身体動作の目的や意図の理解に重要な役割を果たしているのが頭頂葉から前頭葉のシステムである。(中略)例えばこのシステムでは、自分が何らかの行為を行う場合と、他人がその行為を行なうのを観察する場合とで同じ領域が活動する。(中略)こうした活動は、他者の動作を自己の動作と同一の枠組みで捉えていると解釈される。すなわち、(中略)ミラー・ニューロンシステムと称される。

 

『4 「情動」の認知』

・Meerenらの研究では、顔と身体とで異なる情動を提示したときの情動認知を検討している(Meeren,van Heijnsbergen & de Gelder,2005)。

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○顔と身体が一致していないと、顔の正確な表情が捉えづらいという結果。面白いですね。

 

【2 ストレス、遺伝子、そして扁桃体】飯高哲也

 

<扁桃体研究のこれから>

・感情の特殊な点として他者の感情を推察したり、自分の感情を他者や他の対象に移し入れたりするという現象がある。このような心的処理は「共感性(empathy)」と呼ばれ、ノンバーバルコミュニケーションの最たるものである。

・従来から情動というものは動物にも存在することから、認知や言語と比較して低次元の心理現象であるとされてきた。

○感情があるからこそ、認知や言葉がある。認知と情動の相互作用。

 

【3 他者と関わる前頭葉-思考を読み取る脳内機構】坂井克之

 

<B 他者の動作のコピーから予測、そして意図の解読へ>

・ミラー・ニューロンは動作そのものについての感覚情報が存在しなくても、他者の特定の動作が予測される場合には活動することが明らかになった(Umiltà,Kohler & Gallese,et al,2001)。

・ミラー・ニューロンの役割は他者の動作の理解にあると主張されている。

○他者を理解することで、その人を好きになることもできるということでしょうか。

 

<C ヒトのミラー・システム>

・サルでその存在が明らかになったミラー・ニューロンは、ヒトにも存在するのだろうか。(中略)ヒトの場合はミラー・ニューロンとはいわず、ミラー・システムと呼ばれている。

・サルで見出されたミラー・ニューロンと、ヒトで同定されたと主張されているミラー・システムにはいくつかの性質の差があることも指摘しておかなくてはならない。(中略)ヒトの実験では被験者が画面上に提示された他者の動作を模倣するときに、ミラー・システムが活動することが示されている(Iacoboni,Woods & Brass,et al,1999)。

○ミラー・ニューロンはヒトにあるのか、ではなく、ミラー・ニューロンと同じように働くシステムがあるのか、ということでしょううか。システムは確かにあるのでしょう。

 

<D 社会性と自閉症>

・「相手の気持ちになって考える」という表現が日常的に用いられるが、ミラー・システムの働きからするならば相手の動作、さらには意図を自分の脳内に表現する、すなわち相手を自分の脳に取り込むことによってその気持ちを理解している、ということができる。

 

<E ミラー・ニューロンの展望と問題>

・ミラー・ニューロンは社会性というつかみどころのない行動・心理現象を、神経細胞の活動という物理的メカニズムで説明できる可能性を示したという点で大きな意義をもつ。

・現在、ミラー・ニューロンあるいはミラー・システムについてはさまざまな問題が提議されている(Hickok、2009)。

・ミラー・ニューロンを切り口にした研究はさまざまな問題点を内包しつつも新たな進展を見せている。

○非言語コミュニケーションには欠かせない研究だと思います。

 

<こぼれ話-植物の”群れ”と動物の群れ>

・植林においては、間伐という作業が必要になる。大きな樹木を育てるために、不要な樹木を取り除くという、ヒトのみが行なうこの作業は、生物界全体から見れば、実に恐ろしい意味を有しているように思えてくるのである。

○本筋とはズレますが、間伐の大切さを先生にお伝えしたいです。地球全体に必要なものが、間伐です。~ときがわカンパニー「ときがわ方式」拡販事業部長より~

 

【あとがきにかえて】

<顔が語るもの>

・岩田:先生とこうやって話していても、瞳孔の大きさはわからない。日本人は皆そうなんです。(中略)瞳孔の大きさで相手の心の変化を読むことに慣れている外国人が「日本人は何を考えているかわからない」と言う。

○なるほど。考えたことなかったです。青い目は、はっきり分かる。

・岩田:私がビックリしたのは、菱川師宣の描いた見返り美人は、目が首とは反対側を向いているんです。あるとき、拡大して見て気がついたんですが、あのまなざしが表わしているのは、「あんたなんか、イヤよ」という拒絶反応なんですね。

○これ、すごいですね。見返り美人の概念が変わります。

・岩田:人間というのは、相手を騙すような技術に優れてしまった。それも、ある意味からいうとノンバーバルコミュニケーションなんだけどね。本心を隠してね。面白いなと思います。

 

 

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